宴のあとで「ったくどうすんだ、これ」
結局大量に持ち帰ることになったクラッカーの山を前に、大曲はため息をついた。
「せやから毎日何かお祝いしたらええやん」
沢山の人に祝われて上機嫌の種ヶ島は、大曲の肩に凭れかかって上目遣いに笑う。ふわりと香るいつもの香水の匂いも、何だかより甘く感じるのは気のせいか。
「例えば?」
「えー?『修二くん今日もかっこよくいてくれてありがとう』、とか?」
「自分で言うなし」
額を小突くとけらけら笑う声も、綿菓子のように甘ったるい。嬉しい、楽しい、幸せ。そんな感情を素直に表現されて、悪い気がする奴はいないだろう。
「ま、誕生日はまだ終わってへんし。まだまだお祝いしてくれるんやろ?」
「それはいいけどよ……そんなに何個もクラッカー鳴らす必要ねーだろ」
「こういうんは鳴らしたモン勝ちや☆」
「何だそりゃ」
ほい、とクラッカーを手渡され、大曲はカラフルなパッケージを眺める。肩にあった重みはいつの間にか顔の目の前にあり、丸い瞳がきらきらと覗き込んできた。
「そんな至近距離じゃ、鳴らせねーぞ」
「はは、確かに」
向かい合い、期待に目を輝かせる種ヶ島を見ていると、彼を驚かせてやりたい気持ちが芽生える。いつもやられている分、ちょっとしたお返しだ。
「修二」
「ん、」
ぱちり、と一つ瞬きをした睫毛が揺れ動くのを、ぼやけた視界で確認した。相変わらず、触れた唇は柔らかい。
「誕生日おめでとう」
「竜次……不意打ちは、反則やで」
胸の中に飛び込んできた柔らかい銀髪の感触に、大曲はそっと頬を緩めた。
End.