唯一仲の良い「また遠野くんったら、週末予定があるんですって。この私がやっとオフをもぎ取ったというのに……ねえ種ヶ島くん、何かご存知ですか?」
「さあ……君島が知らんのやったら、俺も知らんけど」
「ええ……だって種ヶ島くんって、遠野くんと唯一仲の良い友達でしょう?」
君島はときどき、種ヶ島のことを『遠野くんと唯一仲の良い』と評する。だが、種ヶ島からしたら自分は遠野の唯一の友達ではない、と思う。仲が良いことには間違いないのだが、彼はかつてのチームメイトの大曲や越知などとも交流があるし、地元青森の同級生とだって今でも定期的に集まっているようだ。あくまで友人の一人であり、それ以上でもそれ以下でもない。けれど君島からはそう見えていないようで、しばしばこうして彼の交友関係について探りを入れられる。
「俺より君島のほうが、よっぽど篤京と仲良しちゃうん?」
「なかよし……?」
まるで知らない単語を耳にしたかのように、君島は種ヶ島の言葉を鸚鵡返しに呟いて目を丸くした。かと思いきや、今度は思い切り眉を顰める。
「私と彼は、そんなんじゃ」
「そ?俺なんかより、今じゃあずっとお互いのことわかってるように見えるけどなあ」
「……遠野くんのことなんて、ちっともわかりませんよ」
むくれたように頬を膨らませる様子は、いつもより稚い。こういう表情を見せてくれる程度には自分も心を許してもらっているのだと、種ヶ島は小さく笑った。
「なあなあ」
「なんですか?」
「君島にとって、俺って『仲の良い友達』?」
君島は二度瞬きをすると、ふと頬を緩める。
「はい、勿論。私はそう思っていますが。……種ヶ島くんは、違うんですか?」
小首を傾げる姿は、甚く素直だ。その素直さを遠野にも見せてあげれば良いのにと思わなくもないが、彼がそんな君島を気に入っていることも、種ヶ島は知っている。
(はよくっつけや)
そう言ってやりたいのはやまやまだが、まだ言わないでおいてやろう。微笑む君島に、種ヶ島は満面の笑みを返した。
「とーぜん☆俺たち、マブダチやろ?」
End.