過去ログ8肌寒い風が吹く、ある日の午後のこと。
エディ・ブロックは二つの花束を腕に抱えて白い墓石の前に立っていた。墓石に刻まれた名前は、ドーラ・スカース。彼女の墓石の前には、おそらく彼女の子供が残していったのだろう手紙と花が置かれている。
手紙の上に乗った無遠慮な落ち葉を払うと、エディも抱えていた花束を添えた。彼女が何の花が好きだったかなど知らないし、子供の名前すらも知らなかった。しかし、彼女は家族に愛されていたのだろう。磨かれた墓石と手紙と花。それだけで十分だった。
彼女を守ることができなかったこと。今になってそれが悔やまれる。もっと彼女のことを知っていれば彼女を守ることもできたかもしれないのにという後悔だけは、エディの胸にへばりつき削ぎ落ちることもない。
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