過去ログ7「エディ」
低く、唸るような声は凶悪に響くだろう。その声が頭の中に初めて響いたときは怯えたものだった。だが、今はその声は優しく親しげなものに聞こえる。
粗末なアパートの一室に置かれたソファーに腰をかけながらエディはその声に応えた。
「なんだよ。腹でも減ったか?」
シンビオートは直接内側から話しかけてくるのだから、自身も内心で語りかけるだけで会話ができればいいのだが。そう思った場面も多々あったが、最早人目を避けて会話をするのは慣れっこだった。適応力が高いのはいいことだ、と褒めてくれたのがエディの内部に巣食うシンビオートだったのが少々シャクではあったが。そんな他愛もない考えも全てシンビオートには筒抜けなのだろう。ソファーに腰掛けるエディの背後から生えるようにコールタールに似たシンビオートが顔を覗かせた。エディの顔を覗き込んだその表情は一目瞭然。不満を感じていることが分かった。だがきっと、この表情を機敏に読み取ることができるのはエディしかいないだろう。ずらりと並んだ如何にも肉食といった牙が立ち並ぶ裂けた口に、表情のない模様のような瞳。
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