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    Usikiyama

    @Usikiyama

    ここには進捗を気軽に投げていこうと思います^ ω ^

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    Usikiyama

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    高1、3学期末の暮三(まだ三井しか出てない)今書いてるものの冒頭。
    長編書いた反動でなかなか進まない〜〜ダラけてしまう

     曇り硝子越しに春の光が淡く揺らめき、キッチンに静かな温もりを運んでいた。
     三井は土埃にまみれた学ランを着たまま、長方形のフライパンに向かって立っている。額から流れる血が鼻筋をつたい、熱せられた鉄板に赤い雫が滴り落ちた。鋭い音を立てて、油の波紋の中で黒く焦げつく。
     三井は何事もなかったかのように卵液を一気に流し込んだ。黄金色の液体が熱に反応し、じゅうっと弾けながらすぐに固まりはじめた。甘く懐かしい香りが漂う。
     菜箸を握る手がわずかに震えている。拳の裂傷が引き起こす痛みのせいだ。それでも三井は眉ひとつ動かさず、フライパンを傾けて焼けた卵を一巻きごとに重ねていく。かすかな焦げ目をつけながら箸先で形を整えた。
     再び血の雫が落ちる。泡立つ卵の表面に滲んだ血が、最後の一巻きに絡み合う。そのままフライパンの端へと寄せ、形を整えて平皿へ移した。その時、耳馴染んだオルゴールの音が不意に響いてくる。仕掛け時計が正午を告げはじめた。物心ついた頃から聞き続けたその音も、今は不快な雑音でしかなかった。
     三井は舌打ちをして、菜箸をシンクの底へ適当に投げ捨てた。皿の上の卵焼きに目をやれば、やけにつやつやとして見える。思わず深く短いため息を吐いていた。
    「……何やってんだか」
     長い髪をかき上げながら、頭を抱える。顎先を滑っていく血の感触が気持ち悪い。卵焼きの甘い香りも、オルゴールの澄んだ音も遠のいていく。鉄の錆のような重い気配が息苦しいほど充満しているようで、心の隙間を、虚しさが埋めつくした。
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    🙏🙏👍✨
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    Usikiyama

    PROGRESS今書いてる暮三の進捗。
    一人で書くのがとにかくキツイので、ここには書けた分を少しずつ足していくよ。
    みんな、読んでね~~~

    言い訳タイム→あんまりちゃんと読み直してないけど、とにかくあげていくというスタンスです。全体的に雑ですが、後でなんとかします。

    (エロいシーンはページを分けようと思います。ここには健全シーンだけ)

    ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
    ✨7月4日
     右手のひらでボールを支え、左手を添えて輪郭を確かめる。膝をわずかに折り、体の深くに沈んでいた重心を引き上げる。芯が一本通るような感覚。
     重力と釣り合う、わずかな瞬間。世界がほんの少し、静止する。
     滑らかな放物線を描き、迷いなくリングへと向かう。その軌道だけは、いつも通りだった。何も変わらない。
     ネットが揺れる。音が、胸の奥底で鳴って、すぐに消えた。
     そうだ。オレは多分、この音を聞くために来ている。
     冷え切った空気が、体育館の高い天井にひっそりと淀んでいた。
     三井から少し離れた場所では、練習着姿の部員たちがゆるやかに動き出している。ゴール下でフォームを確かめる者がいたり、ストレッチしながらふざけ合う声が聞こえてきたりする。部活が始まるまでの、束の間のゆるみ。
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