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    Usikiyama

    @Usikiyama

    ここには進捗を気軽に投げていこうと思います^ ω ^

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    Usikiyama

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    今書いてる暮三の進捗。
    一人で書くのがとにかくキツイので、ここには書けた分を少しずつ足していくよ。
    みんな、読んでね~~~

    言い訳タイム→あんまりちゃんと読み直してないけど、とにかくあげていくというスタンスです。全体的に雑ですが、後でなんとかします。

    (エロいシーンはページを分けようと思います。ここには健全シーンだけ)

    ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
    ✨7月4日

    #暮三

     右手のひらでボールを支え、左手を添えて輪郭を確かめる。膝をわずかに折り、体の深くに沈んでいた重心を引き上げる。芯が一本通るような感覚。
     重力と釣り合う、わずかな瞬間。世界がほんの少し、静止する。
     滑らかな放物線を描き、迷いなくリングへと向かう。その軌道だけは、いつも通りだった。何も変わらない。
     ネットが揺れる。音が、胸の奥底で鳴って、すぐに消えた。
     そうだ。オレは多分、この音を聞くために来ている。
     冷え切った空気が、体育館の高い天井にひっそりと淀んでいた。
     三井から少し離れた場所では、練習着姿の部員たちがゆるやかに動き出している。ゴール下でフォームを確かめる者がいたり、ストレッチしながらふざけ合う声が聞こえてきたりする。部活が始まるまでの、束の間のゆるみ。
     三井はその流れから切り取られたように、学ランのまま立ち尽くしていた。
     スリーポイントラインの上に、上履きのつま先が重なっている。わずかにきしむ床の感触。自分が今、どこにいるのかを確かめるように。
    「ミッチー、また来てんのかよ」
     不意にかけられた声に振り向く。桜木だった。スポーツドリンクのボトルを片手に、まっすぐこちらへ歩いてくる。
    「大学決まって、そんなにヒマなんか?」
     先輩を捕まえてヒマ人呼ばわりとは、あいかわらずの無礼ぶりだ。けれど、今さら目くじらを立てようとも思わない。というかそもそも、こいつに敬語を使われたことが、ない。もはや気が抜ける。
    「まーなぁ……。だからって、家でごろごろしててもな」
     三井はボール籠からもう一球を手に取り、再びシュート体勢を取った。リングを見上げ、呼吸を整える。
    「ほーん。じゃあよ、普段なにしてんだ」
     飛躍の瞬間、桜木の声が空気に割り込んだ。
     ――冬休み。あの日のことが、ふいに胸の奥で鳴る。
     思い出すつもりなんてなかったのに、些細なきっかけひとつで記憶は立ち上がってくる。
     行き場のない欲が、生活の片隅に静かに這い上がってきて、心と体の境目を曖昧にしていく。あのとき感じたものが、全部、消えずに残っているから。
     ぬるく湿った指先が、皮膚の裏側にじっとり入り込み、掻き乱してくる。
     それはもう、想像ではない。再現だった。
     気づけば、手が動いている。
     自分自身のそこに触れている事実に反応し、奥のほうが疼く。満ちていく感覚を、誰にも見られない場所でやり過ごす。
     そうするしかない。そうでもしなければ、日常のなかに、立っていられなくなるから。
     放たれたボールは、リングに当たって跳ねた。乾いた音が響く。
    「お。心の乱れってやつじゃねぇーの」
     桜木がちょっと得意げそうに言った。
    「うるせぇーよ」
     三井はすぐに言い返した。意識していなかったのに、内側では揺らいでしまっていた。
    「あのー、すみません」
     すぐそばから声がし、ふと見下ろす。そこにはいつの間にか近づいていた晴子がいた。
    「ハルコさん!」
     桜木は目を丸くし、すぐにぱっと顔を輝かせた。
    「こんにちは、桜木くん」
     晴子は髪を耳にかけながらほほ笑んだ。
    「こんにちは……!」
     桜木は少し声を落ち着かせて挨拶を返した。晴子は桜木にうなずいてから、視線を三井の方へ転じた。そして、一呼吸置き、軽く会釈をした。
    「お疲れ様です。先輩」
    「おう。お疲れ」
     三井は短く返した。
    「桜木くん、ちょっといいかな?」
     晴子が声をかけた瞬間、桜木の背筋がびしっと伸びた。名前を呼ばれた犬のような反応だ。
    「はいっ! なんですか、ハルコさん!」
     語尾に力が入りすぎて、声がわずかに裏返っている。晴子はくすりと笑ってから切り出した。
    「ええとね、聞きたいことがあって……」
     晴子は手元の小さなメモ帳をそっとめくり、視線を落としたまま続けた。
    「桜木くん、苦手な食べ物とか……、アレルギーって、ある?」
     それだけの質問に、桜木は前のめりで大きく胸を叩いた。
    「ありません、なんでも食えます!」
     その大仰な返しに、晴子は笑ってペンを走らせた。
    「ふふ、なんでも食べます。と……」
    「あ、三井先輩じゃないですか」
     二人のやり取りを眺めていた三井のもとに、彩子がふらりと近づいてきた。
    「……先輩の分も買っときますよー」
     彩子はからかうように、にやにやと頬をゆるめている。
    「なにをだよ」
     三井は少しぶっきらぼうに聞き返した。
    「決まってるじゃないですか。来週バレンタインですよ」
    「あー……」
     三井はようやくそのイベントの存在を思い出した。
    「『あー』って……。全然意識してない感じですか?」
    「まあ……」
     中学の頃は、それなりに気にしていた。下駄箱や机の中を、密かに緊張しながら覗くくらいには。まあ、ここ二年は、そんな浮ついた気分とも無縁だったわけで、つい忘れてた。今年はちょっと事情が違うっていうのに。これってもしかして、けっこうマズいんじゃねぇーの?
    「みんなの分、一緒に買いに行こうって話してたんですよ。ね?」
     彩子はそう言いながら、晴子の方を振り返った。が、そこには晴子どころか桜木の姿もなかった。
    「あら? あの子たち、どこ行っちゃったのかしら」
     彩子が首をかしげながら辺りを見回す。三井も視線を巡らせた。
    「おい、キツネ! 態度が悪いぞ! ハルコさんの優しさがどうして分からん!」
     桜木の怒鳴り声がして、反射的に目を向けた。案の定、流川とにらみ合っている。
    「声がデケー……」
     流川が両耳をふさぎながら、ぼそりと呟く。わざとらしい仕草が、火に油を注ぐ。
    「テメェ!」
    「い、いいの……! いいのよ、全然!」
     二人を止めようとする晴子の声が聞こえた。けれど、やはり姿は見当たらない。おそらくデカい二人の影に隠れてしまっているのだろう。
    「……もう。なにやってんのかしら、あいつらは」
     彩子は呆れたようにため息をついた。
     喧嘩というより、もはや儀式のように定着してしまった桜木と流川の応酬に、三井はすでに興味が薄れていた。視線を彩子に戻しながら、ふと思い出す。
    「あ……。冗談とは思うけど、オレのは買うなよ。もうとっくに引退して……」
    「ちょっとちょっと! アヤちゃんの善意を無下にする気っすか?」
     三井が言いきらない内に、声が重なる。どこからともなく、宮城が会話に割り込んできた。
    「お前、どうせ受け取ったら受け取ったで文句言うだろ」
    「そりゃ、そうっすよ」
     宮城かあっけらかんと開き直る。
    「あのなぁ、そんなのどうしろってんだよ」
     三井がため息混じりに言うと、彩子がくすりと笑った。
    「あら。こっちにもいたのね。うるさいの」
    「え……う、うるさい? オレが?」
     宮城は素で驚いた顔をして、指先で自分を指しながら聞き返した。三井は堪えきれずに吹き出した。
    「おい、笑うなよ!」
    「いやいや、笑うだろ……」
     三井は肩を揺らしてくつくつと笑い続け、つられて彩子も声を立てて笑い出した。
    「ごめんなさいね。本気で思ったわけじゃないのよ」
     目尻に笑いじわを寄せ、彩子は楽しそうだ。宮城は器用に片眉を上げながら、照れくさそうに首筋を掻いた。
     その時、体育館の扉が開いた。白く丸いシルエットが現れる。
    「みなさん、こんにちは」
     先生はいつものように、部員たちに穏やかな眼差しを向けた。
     その瞬間、あちこちから「チュース!」の声が一斉に上がる。
     三井も一歩前に出て、真っ直ぐに先生のもとへ歩み寄った。
    「チュース!」
     挨拶をし、深く頭を下げる。
    「おお、三井くん。こんにちは」
     先生は、相変わらずのゆったりした動きでにこやかに応えた。声の調子も、以前と何も変わらない。
     先生が来たということは、これから練習が始まる合図でもある。三井はちらりと時計を見たあと、静かに一歩後ろへ下がった。
    「じゃあ、オレはこれで。お疲れ様です」
     この高校の体育館に、自分の立つべき場所はもうない。
    「おや。行ってしまうのですか」
     先生が、ふと眼鏡のつるを指で押し上げた。
     三井は一瞬言葉に詰まり、けれどすぐに、いつもの調子で答えた。
    「練習の邪魔になっても悪いんで」
    「ずいぶんと遠慮深くなりしたね。まあ、またいつでもシュート見せてください」
    「はい……!」
     先生の優しさに、三井はひとつうなずいた。
    「……ありがとうございます」
     先生に会釈をしてから、部員たちの方へ視線を転じる。
    「おつかれーっす」
     と、宮城が気だるげな声で言った。続けて他の部員たちも、それぞれの口調で軽く挨拶を送ってくれた。
    「おう。んじゃ」
     三井は片手を上げて応じた。
     自分のいた場所が、ちゃんと動き続けている。そんな当たり前の光景に少しの名残惜しさを抱きながら、体育館をあとにした。

    ✨️✨️✨️✨️✨️

     ドアの前に立ち、三井は深く息を吸い込んだ。冷たい空気が肺の奥に沈んでいく。
    「あの。入らないんですか?」
     背後から声がかかる。見知らぬ女子生徒が、いぶかしげにこちらを見ていた。
    「あ? あぁ……。どうぞ」
     三井がスペースを空けると、彼女は軽く会釈し、ドア横の机に置かれたバインダーに、名前を記入した。デジタル時計をちらと見ながら、ペン先を滑らせていく。そして三井の横を通り過ぎ、自習室の中へと入っていった。
     そういう決まりなのだ。入室の際には名簿に名前、学年クラス、時刻を記入すること。
     だが三井はそれをせず、ようやくドアを開いた。
     エアコンの吐く温風が、天井から吹き降ろしてくる。クラス教室とは違う、石造りの白い床。
     ページをめくる音やシャーペンの芯が紙を擦る音がやたら耳に障るのは、自分がここでは部外者だからだ。
     音を立てぬよう注意を払いながら一歩、また一歩と進む。周囲に視線を巡らせ、その人を探す。
     ――いた。
     窓際。冬の日差しが、机の上の紙を白く照らす。問題集に視線を落とし、ペンを走らせている。真剣な横顔。
     三井の呼吸が、ふと詰まった。息苦しい。こめかみの裏で、どくん、と不自然な脈が打つ。
     伏せられたまつ毛の先が、夕日の色に淡く透けている。
     眼鏡のレンズに反射する光が、まばたきのたびにきらきらと細かくはじけて、また静まる。
     あれ? オレいつも、どうやって話しかけてたっけ…………。
     声をかけることすらできないでいると、何かを感じ取ったように、木暮が顔を上げた。視線が交わった瞬間、きゅっと目を細められる。その笑顔は、たしかに三井に向けられていた。それだけで、心の奥を見透かされたような気がして、三井はぎこちなく手を振った。

    「昨日の古文、最後の選択肢絶対ミスった……」
     木暮はマフラーを指先でいじりながら呟いた。
     三井は返事もせず、その横顔をそっと見る。少し赤くなった鼻先、眉間のしわ。試験は終わったはずなのに、木暮の頭のなかでは、まだ設問が何かを問いかけているらしい。
    「まあ……お前なら平気だろ。ちゃんとやってたし……」
     それはなぐさめなんかではなく、事実の確認だった。
     陽はすっかり傾き、夕焼けがホームを金色に染めていた。足元には二人の影が、長くひきのばされている。風が吹き込むたび、木暮は小さく肩をすくめた。
    「ありがとう……。国公立もすぐだから、気持ち切り替えなきゃって、分かってはいるんだけどな。頭で分かってても、なかなか……」
     木暮は気まずそうに苦笑いをした。
    「……やっぱり部活、来ときゃよかったんじゃねえの。気分、変わったかもよ」
    「そう、かもな」
     木暮は相変わらず三井の方を見ず、視線は遠くの線路の先だ。
    「行こうとは思ったよ。けど、自習室にいる方が落ち着く気がして……。常に勉強してないと、ちょっと不安でさ。覗きに行くくらいの時間はあるんだけど、気持ちの問題かな」
     言いながら、自分でも少しおかしいと感じているような顔をしていた。
     会話がすっと途切れる。
     目の前の線路を挟んだ向かいに、菓子メーカーの広告看板がある。赤地に白い文字で『バレンタインは森永のチョコレート』と書かれている。
     ちょっと、聞いてみるか。いや、なんて聞くんだ。打ち合わせするようなことでもないだろ。いや、でも実際どうすればいいか分からないでいる。とりあえず、きっかけさえ作れば、向こうから話すかもしれない。
     迷いながらも、気持ちの出口をようやく見つけて、三井は口を開いた。
    「あのさ……。来週……」
     その瞬間、タイミングでも計ったように、列車の接近を知らせるアナウンスが響いた。
    「え、なんて?」
     木暮が首をかしげ、聞き返してくる。
    「来週だって! 来週……!」
     声が雑音にかき消されないよう、三井はむきになって声を張った。
     でも今度は、金属が地面を這うような走行音が、全てを塗り替えていく。列車が陽を遮り、急に辺りが薄暗くなった。
     三井はそれ以上何かを言う気力を失い、呆れながら首筋を掻いた。
    「あー、もう……」
     ホームに快速列車が滑り込む。機械的な音声がドアの開放を知らせ、乗客がまばらに降りてきた。二人の前を、数人が横切る。
     三井が乗るのは次の各駅列車だ。これには木暮だけが乗る。
    「じゃあな、また……」
     そう言って手を振ろうとした時、木暮がいきなり抱きついてきた。
    「お、おい…! なんだよ急に……」
     よろけながらも、三井は木暮の肩に手を添えた。木暮はそのまま、ぎゅっと抱きしめてくる。思いのほか強く、しっかりと。
    「うぐ……」
     体と体の隙間が、なくなる。学ラン越しでも、伝わる体温。
    「三井……あったかいな。……好き、大好き……」
     声が、耳元に優しく寄り添う。
    「な……なに?」
     今さらながら、周囲の目が気になってくる。けれど木暮は気にした様子もなく、首元に顔をうずめてきた。
    「うおっ」
     髪の毛先が肌に触れ、くすぐったい。
    「マジで、なんなんだよ……!」
     三井が思わず声を上げたのと同時に、『ドアが閉まります』というアナウンスが、二度繰り返された。
     木暮はあっさりと体を離し、笑った。そして、走る。
    「じゃあ!」
     閉まりかけたドアに身を滑り込ませ、飛び乗った。
     三井が呆然と見送るなか、列車はゆっくりと動き出した。
     頬を刺す冬の空気が、急に肌寒く感じられる。けれど体の表面には、さっき触れた木暮の体温が残っていた。それは背中にも、腕にも、首筋にも、くっきりと。まるで、木暮の気配だけがまだそばにとどまっているかのように。
     あいつ、オレのことすげぇ好きじゃん……。
     ふいにこみ上げてきたものがあって、三井は無意識に口元を緩めていた。あわてて手で隠す。けれど、顔が熱くなってくるのは、どうしようもなかった。
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     重力と釣り合う、わずかな瞬間。世界がほんの少し、静止する。
     滑らかな放物線を描き、迷いなくリングへと向かう。その軌道だけは、いつも通りだった。何も変わらない。
     ネットが揺れる。音が、胸の奥底で鳴って、すぐに消えた。
     そうだ。オレは多分、この音を聞くために来ている。
     冷え切った空気が、体育館の高い天井にひっそりと淀んでいた。
     三井から少し離れた場所では、練習着姿の部員たちがゆるやかに動き出している。ゴール下でフォームを確かめる者がいたり、ストレッチしながらふざけ合う声が聞こえてきたりする。部活が始まるまでの、束の間のゆるみ。
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