(幸帝)寮の門限が近付く頃、立夏が大浴場から戻ろうとすると談話室で七緒に手を振って別れる帝の姿があった。
「やあやあ立夏くん」
「どうしたんだこんな時間に」
「バイト帰りに寄ったんだ。貰った菓子があるんだが食べるか?開けてないのもあるからこっちは祭利にでも渡してくれ」
「サンキュ。…で、本題はなんだ?」
一瞬誤魔化そうと笑顔を作りかけた帝は結局あー、と言いながら視線をうろつかせ、静かに隣の椅子を引いた。しかし立夏が腰かけて暫くしても指先でくるくると遊ぶばかりでなかなか話し出そうとしない。
「部屋に帰りたくない理由でもあるのか?」
びくりと震えた帝は言葉を選ぶように目を伏せた。
「そう言うと、語弊があるんだが…」
「…コスモと二人きりで居るのが嫌なのか?」
2682