潤溽暑 ―うるおうてむしあつし―「にしても暑い!」
「七緒、はしたないからそれはやめなさい」
日課の怨霊退治を終えて帰城した七緒はうだるような暑さに耐えられず、侍女を下がらせたことをいいことに板間の冷たさをその頬で享受していた。そして寝そべる七緒だけを兄が嗜める。隣には同じように溶けた大和だっているはずなのに。
「タイツなんか履いて暑くねーの?」
「暑い……から脱ぐ」
「待って、待って、七緒待って」
仕方なしに一度部屋の奥へ引っ込み、熱を集めため込む黒い女子の鎧を剥ぎに行く。動きやすいしスカートの中身を気にしなくていいタイツはとても便利なのだが破れてしまったらどうしよう。一応、龍穴を通って家に戻った際にありったけの買い置きは持ってきたけれど有限だ。
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