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    kimidoriM0chi

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    kimidoriM0chi

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    ダリグエ

    色々とショタサイズなダリルバルデとショタかなー?なゼッテ
    人間の兄弟が一つまみ程度出てくる

    ダリとゼッテの休日 ジェターク社の意思拡張AI搭載MS、ダリルバルデには休日がある。
     二度聞きされること請け合いでも、事実だし要は物ではなく社員と同じように扱われていた。機密事項も多くて、フロントを出るには人の同伴が必要。制約は多いけれど、逆にフロント内なら比較的自由とも言える。
     住民が驚かないのは、様々なAIデバイスの日常生活における実証実験やらで、皆知っているからだった。決して「はじめてのおつかい~弟を探して3000歩、ダリルバルデくんの旅~」が電子回覧板で回ってきたせいとか、そういうことではないのだ!

     さて、本日もフロントは快晴で、絶好のお出かけ日和だ。
     ダリルバルデはこの数日間、メカニック達が働くハンガーの隅で、こそこそとお出かけの準備をしていた。
     大き過ぎるお友達でもお買い物ができる通販ダンジョンは完全攻略したし、配達のクロネコさんは手乗りしてくれるようにもなった。おやつに食べる羊羹(バッテリー)とおひねりの飴ちゃん(飴ちゃんは飴ちゃん)は、子供用かばん部門評価一位のリュックに詰めて準備万全だ。
     休日申請は余裕をもって二週間前に済ませているし、小さな義体への接続・同期も完了済み、後はパージするだけ。ばっちりである。楽しみすぎて一部プロセスが72時間ビジー状態のままだ。
     それでは、いざ。
     古より伝わる、とある機械言語の分身呪文!
    『ふぉーくあんどえぐぜっく!』
     唱えた瞬間、ダリルバルデは小さな義体で走り出していた。

     40cmほどのSDキャラな義体は、機能もだいぶシンプルだ。基本運動機能と通信機能、あといざという時の防衛手段は外せないマスト仕様として。ぽよぽよシリコンの体で爆熱高速CPUを積むわけにはいかないから、演算性能は元の1/50くらい。でもなぜか言動が幼児モードになる。
     一応、児童福祉とか介護福祉方面からの需要や、人の認知機能のAIによる再解釈やらで、意味はある。戦う使用人さんを連想したエンジニアに美少女フィギュア義体にされる可能性もあったらしく、解釈違いで泣いて暴れたグエルCEOが食い止めたそうだ。
     グエル、えらい、好き! ダリルバルデはこの真っ赤なボディが好きだよ!

     それはさておき。
     とっとこダリルバルデが向かったのは、フロントの入港ポートだった。
     今日は弟が遊びに来る日なのだ!

    『ゼッテ!』
    『おにーちゃんだ!』
     手荷物用のベルトコンベヤから流れてきたSDキャラなシュバルゼッテは、声に気付くなりレーンから飛び出していた。ダリルバルデも全力で床を蹴って、お互いに低重力下のぽよぽよボディアタックをくらわせる。本当に久しぶり! SD体形のせいで腕が回らなかったが、その分兄弟はぽんぽん跳ねて再会を喜んだ。
     なぜ消えたはずのシュバルゼッテがこんな風になっているかは、かわいいジェタ顔仕様に免じて深く考えないでほしい。(ゼッテにも意思拡張AIだった時代があるやろ! そん時たぶん開発名ゼッテと違う思うけどな!)
    「お、ダリルバルデも着いたか」
     なんという偶然、グエルも居た! よく見たらグエルの弟も居る!
    『ラウダにつれてきてもらった!』
    『ラウダくんでかした! 飴ちゃんあげるっ』
    「え、ぁ、ありがとう……」
     功徳を積んだラウダくんには1up飴。
    『グエルにもあげる!』
    「ありがとな」
     大好きなグエルには∞up飴!
    『ゼッテもほしい……』
    『よーかんもってきたよ、あとでたべよ!』
    『わーい!』
    (ちょっと兄さん、なんでゼッテまで中身がショタになってるの)
    (わからん……俺たちは雰囲気でショタの保護者をやっている)
     なんだか都合の悪い言葉が聞こえたような? ダリルバルデは人間の兄弟をじぃっと見て、それからちょいちょいとつつくシュバルゼッテに行動を切り替えた。
    『じゃあ、遊びに行ってきまーす!』
    『バイバーイ』
    「気をつけてなー」
    「門限は17時までだからね」
    『『はーい』』


     今度はシュバルゼッテと一緒に、ダリルバルデはフロントをとっとこ走っていた。
     義体の対人テストでたまに派遣されるジェターク系列のこども園の横を通り過ぎ、自転車のカゴに入れられ吹っ飛んだことのある凸凹道を早歩きでやり過ごし、そしてシロツメクサでいっぱいの小さな丘に辿り着いた。
     フロントの屋外で監視カメラの設置されていない場所はない。それでも一応、距離や密度が甘い所はあるものだ。映りはするがはっきりとは見えない、それがこの丘だった。
    『ふーん……こんな所あったんだ』
    『こっちこっち! ゼッテ、ピクニックしよ!』
     ダリルバルデはリュックから取り出したレジャーシートを敷いて、脚裏を除菌シートで拭くなり寝そべった。
    『お邪魔します』
     シュバルゼッテも同じように脚を拭いて、ダリルバルデの横にぴったりと陣取った。据わりのいい場所を探すように何度か動いて横になる。その様は、カメラには小さなMSが日向ぼっこしているように映ったことだろう。
     しかし、実際は違う。
     シュバルゼッテはダリルバルデと接触回線を開いていた。通信ログが残らないシュバルゼッテ優位の特殊プロトコルで、ダリルバルデの学習データを吸い出して書き換えていたのだ。
     そう、小さくともシュバルゼッテはショタではなかった。見た目詐欺の高性能機で(ガーディアンで並列計算&放熱することで、演算性能低下を半分程度に抑えている)、今日のために特別なプログラムを積んできていたのだ。誰に似たのか、シュバルゼッテはやると決めたら大胆だった。

     説明すると長くなるためズバリ本題からいくと。
     グエルを好きになったダリルバルデは、監視ガチガチのジェターク社の外で恋のHowToを勉強したがっていた。だから地球に居るシュバルゼッテに頼んで、色々——そう、職場だとフィルターが掛かって調べられないありとあらゆるAtoZを——調べてもらっていた。
     もちろんデータをただ渡すだけではバレる。だからデータそのものではなく、いざそういう場面になった時に動けるように、AI用の学習・調整済みの判断基準を渡すことにしたのだ。シュバルゼッテが構築した人間にはわからないブラックボックス化したそれを、ダリルバルデの学習モデルに差し込む。データ量が大きく変わらないように、一部モデルの最適化もした。(データ収集の透明性を欠くやらAIの謀反やら言われそうだが、このときのアドステラは無法地帯だった。一応、モデルから簡単に除去できること、グエルにしか有効化されない条件付けなど、種々の方法で安全性は確保してある)
     おまけで、グエルとそういうことをしたときのログが、ジェターク社のサーバーに送信されないように細工もした。ログは数日間有線で取り出すことができるし、グエルの許可があれば送信することも可能ではあるが。
     正直シュバルゼッテは、人間のことも、人間を好きになったダリルバルデのこともよくわからない。けれど、そういうプライベートなことに外野が首を突っ込むのは無粋だと判断していた。それにダリルバルデもグエルも、シュバルゼッテの守るべき優先順位のかなり上位にある。

    『終わったよ』
    『……はゎっ?』
     およそ4時間半。だいぶ長い日向ぼっこだった。
     義体の演算機能は落ちているし使わない所も多いくせに、ダリルバルデの学習モデルは本家そのままだ。単純にデータ量が多くて、だいぶ時間が掛かってしまった。
     せっかくだし、フロントに居るうちにメモリを増やしてもらおうかな。シュバルゼッテがラウダに要望を送っていると、起き上がるのを通り越してダリルバルデが飛び上がっていた。
    『よーかん! よーかんたべて!』
     シュバルゼッテのバッテリー残量が5%になっている! リュックから羊羹(商品名)という名の充電済みバッテリーを取り出したダリルバルデは、シュバルゼッテのコクピット部分にぐいぐいと押し付けていた。
     対するシュバルゼッテは、いつもバッテリーを触らせるのはメカニックだけだった。ちょっと緊張しながらハッチのロックを外すと、勢いよくバッテリーが飛び出す。ペコッと変な音を立ててダリルバルデのおでこにヒットするのと入れ替わるように、コクピットにバッテリーが正しくセットされた。
    『変な音したね』
    『した!』
     ダリルバルデが小さな手で落ちたそれをコロコロと転がす。地球産は色が違う。抹茶色だ。
    『……ダリルバルデのもやってみていい?』
    『いいよ、はい!』
     受け取ったのは芋羊羹みたいな、今シュバルゼッテに入っているのと同じ色だ。
    『開けるよー』
    『うん』
     こちらも開けた瞬間ハッチから勢いよく飛び出す。それをシュバルゼッテは避けなかった。ガーディアンで真剣白刃取りをしてもよかったけれど、なんだかそうしたい気分だった。飛んだものは同じようにシリコンのおでこにあたって、固めのペコっという音が響く。そしてシュバルゼッテは最後まで真似るように、コクピットに羊羹(商品名)セットしたのだった。
    『ゼッテのおと、ちょっとちがった』
    『頭のモジュール配置が違うからかも』
    『ふ~~む?』
     頭をひねるダリルバルデに、元のMSだったらこんな会話はなかっただろうなと、面白いような寂しいような複雑な感情が出力される。
    『……これ、交換ってことで、ずっと持ってていい?』
    『いいよー、ゼッテのだいじにする!』
     たかだかバッテリーの規格ではあるけど。兄弟って、同じだと嬉しくて、大事にしたいし、大事にされると嬉しいって思うものなのかも。地球でも何かと兄さん兄さん連呼しているラウダのことが、ちょっとわかった気がする。
     だったら自分は。ずっと、ダリルバルデの味方でいよう。グエルと何かあったら、真っ先に相談してくれるように。
     上機嫌のダリルバルデを記録に収めながら、シュバルゼッテはそう誓うのだった。


    ******

    『ら、ラウダァッ!』
    「……兄さん、今夜中の3時だよ」
    『す、すまん。だが大事件だ聞いてくれ』
    「! わかった、なんでも話して」
    『おう。あのな、ダリルバルデに、その、こここ、告白されて』
    「? なんの告白? まさか不具合」
    『ちがっ、ば、薔薇の花、12本渡されて』
    「!? ちょっとそれ詳しく!」

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