そんなところも含めて、お前と。「なあ」
「んー? なになにローたんどしたの〜?」
キッチンでコーヒーを作るウェイドをソファから真っ直ぐ見つめながら、ローガンは告げる。
「俺たち、そろそろ結婚するか」
こぽ、と湯を注ぐ音が途切れ、沈黙が訪れる。
それは本当にただ一瞬の沈黙だったが、ローガンには随分長く感じるものだった。沈黙を崩そうとウェイドの名前を呼ぼうとしたところで、先に向こうが沈黙を崩す。
「……っ、ぐ、ンフッ、アハハ! ちょ、待って本気? フ、あはははっ! はぁーっは、やば笑いすぎて涙出てきっ、ンフフッ」
笑って手元が狂うためか、やや大きめの音を立ててケトルが置かれる。ひいひいと苦しげに息をして肩を震わせているウェイドに、真剣に伝えたつもりのローガンは流石に苛立ちを覚え立ち上がった。
「ッ、ウェイド! お前、俺がどれだけ考え、て…………」
眉間のシワを深くしながら声を上げたローガンだったが、ウェイドの様子を見て言葉を止める。
「はは、は……ん、ふ、グスッ、はぁ、ズズ……ッ、ん、ひっ、ぐ、…っ」
片手で顔を覆ってはいるが、隙間から見えるそれは間違いなく大粒の涙と泣き声を抑えようと震える唇だった。
涙が出るほど肩を震わせて大笑い? まったく、とんだ嘘つき野郎だ。泣くほど嬉しいなら、最初からそう言ってくれればいい。
だがそれが簡単に出来ず、受け止めるのに時間がかかってしまうせいで変に誤魔化したり茶化したりするのがコイツだったなと、呆れと愛しさを混ぜた息が漏れた。
勢いよく立ち上がった足をそのままキッチンに向かわせ、泣いているのがバレバレのウェイドを正面から力強く抱きしめる。
「……笑い過ぎだ、馬鹿野郎が」
湿っていく肩口の温度と耳元で聞こえる小さな呻き声に、ローガンはただ幸せだけを感じて密かに口元を緩めていた。