チヒロくん誕生日おめでとう2025　なんで俺がおもちゃ売り場に立ってたら店員がケツの穴まで舐めるくらい見てくるのであろうか。ガキは人だと思わんのかやたらぶつかってくるし、ガキの親は無言でガキを抱えて逃げるのは何故なのですか。デンシャ。クルマ。ヘリコプター。チヒロくんがこれらに興味を持っていると聞いた事はない。それはそうや、見る機会がそうそうあれへんねんから。店員にお探しのものがおありでしたらお聞きしますと言われて俺は、子供を探しているんですと言ってしまって店員まで離れていった。この店はもう出ようかな。

　だいたい六平の誕生日もハッキリわからんのに千鉱くんの誕生日マジでいつなんて感じなんだが六平は六平の六月、チヒロくんは盆くらい、細かい日付は適宜言うてくれの姿勢を崩さないまま、今年も六平にチヒロの、チヒロの、とコソコソ丸投げされて俺は街を彷徨っています。チヒロくんおそらく七歳くらいであろうか。チヒロくんに何が欲しいか聞いても木と妖精しかおらんような山におるのに何もわからんやろうし可哀想や。俺が粋なもんあげてしもたらあんな山ん中ぶっちぎって街に飛び出して帰ってこんようになってまうんやないやろか。俺はそう思いながら怪しい土産物屋で仏頂面のコケシを掴んで、コケシを身代わりに山を降りるチヒロくんを想像した。コケシを可愛がる六平は簡単に想像できた。チヒロー今日も刀晴れだなあ！　ん？　刀晴れは刀晴れだろ！　チヒロ！　それアチいから気を付けろよ、お前今木製なんだから……狂ってんのかなアイツ。代わりに電動コケシでも買って行って乳首ブンブンいわしたろかなと電気屋で見本のマッサージ器を触ってみると、削岩機みたいな音がしたからそっと置いた。チヒロくんが飛び起きてまう。乳首も削れてまうし、どうせ最終的に突っ込まれるであろう俺のケツも木っ端微塵にされてしまう。
　どうしようかな、食べもんじゃあかんのかな、エロ本は早いんかな、あ、このエロ本六平に買っていったろ、せんべいうまそうこれ買お、この服チヒロくん着れるかな、あ、サイズなんぼやっけ、干物や俺のツマミに買ってこ、さあチヒロくんおじさんは困ったよ。こないだ一緒にお出かけした時に靴は買ったもんね。あれから大きくなったのかな？　おじさんは君くらいの頃は毎日３cmくらい大きくなっていたよ。うどん買っていったろ、生協みたいになってきたな。プレゼントや。プレゼントなぁ。一応でかいケーキ買っていこ。六平と俺で食うし……あ、柴で。え？　ネームプレート？　あ、上に乗せるやつ。チヒロくんで。はいカタカナ。デパートの上から下まで舐めて、商店街もウロウロして、決定打のない取り留めのない荷物がどんどん増えていく。完全に俺が買い物めちゃめちゃ楽しんだ姿になって、もう両手に持ちきれなくなったので一旦六平家に行ってみましょうかね〜

「しばさん！！」
「あーあーチヒロくん、こんにちわぁ」
　もう夕方に差し掛かり六平家からはなんかいい匂いが漂っていた。チヒロくんは俺の顔を見るなり嬉しそうに走ってきて、ああ息子よと一瞬全てを忘れて温かい気持ちになってしまった。一応今日が誕生日なのかわからんからこんにちはで止めるも、後ろから来た六平のありがとう！　という祈りのポーズであ、当日ですかと理解した。お前何も用意してへんのか？
「チヒロくん今日はなぁお土産たくさんあるよぉ」
「しばさん……」
　両手千切れるくらい抱えた荷物を下ろしてしゃがんだ俺にチヒロくんは飛び付いてきて、俺の胸に顔を埋めて動かなくなり、寝たんかなと様子を伺ったら俺の胸ぐらを感慨深げに吸っていた。
「柴吸いだな！」
「柴さんくさいでチヒロくん」
「しばさんのにおいします」
「臭みについてはノーコメントなんやね」
「良かったなチヒロ！　俺からの誕生日プレゼントだ！」
「えっあっ？　アタシが誕生日プレゼントよぉ〜？？？」
「しばさんきてくれてありがとう」
「なんのなんの」
　六平何様のつもりなのかしら。チヒロくんは俺の首筋に移動してまたすうすうと吸っている。ちょっとくすぐったいですよ。お土産いっぱいあるからこれも晩に一緒にたべよか、と言うと六平が飛び付いてきて、ありがとう柴！　と数ある袋の中からエロ本だけを抜き去ってどっかに仕舞いに行った。なんかよくわからんけど二人とも満足したようなので、よかったです。