星空とトライフル「『好き』なんて、俺たちに一番似合わない言葉だろ?」
「当たり前だ」
「そう。だからこそ、恥ずかしげもなく言えるんだ」
「……本当に、屁理屈が得意な奴だよ」
男は屈託のない顔で笑った。
「じゃあ、お前はどうなんだ? オレン」
もう一人の男は皮肉な笑みを浮かべる。
「愛してる、とでも言やいいのか?」
「そいつはさすがに言い過ぎだな」
ラテラーノの夜はヴィクトリアの街より明るいが、カジミエーシュの大都市ほどではない。ある建物の屋上に立つ二人の男は、互いに明るい街を見下ろしていた。その目に映るのは夜の闇か、人々の生み出す光か、はたまた空に浮かぶ双月の光か。何にしたって、ここがラテラーノであり、男たちがサンクタであることは変わらない。
1885