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    cafetu_au_lait

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    cafetu_au_lait

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    オンリーの予定してるソンエリの文章こんな感じです
    全然わからないです…ハァハァ…助けて…

    オンリーの文章途中まで どうして僕を連れてきたの父さん、街になど。
     どうして僕を引き離したりしたの、海から。
    (ガルシア・ロルカ『陸の船乗り』内『海』より抜粋)
     
     
     冷たく、薄暗く、仄暗い水の奥底から歌が聴こえている。囁くような旋律は大海の慈悲を感じると同時に耳を劈くような悲鳴のようにも感じる。
     此処は海だ。シエスタの様な見せ掛けの海ではない。正真正銘イベリアの…俺の還るべき…。
     
    「ブラザー、起きてる?」
     ふとソーンズが我に返ったのは長閑な丘陵地帯をガタガタと走るジープ上だった。太陽の光が降り注ぐ草原は先程まで幻視していた水面とは似ても似つかぬ平穏そのものだ。
    「眠ってはいない」
    「ちょっと、嘘はよくないよ! じゃあさっきまでの僕の話覚えてる?」
    「…ドクターが特技のリベンジをしようとしたら、ハイビスカスに見つかって野菜ヌードルで急遽挑戦する事になった話だろう」
     言葉にするとなんとも気の抜ける話題だった。そのおかげという程でもないが、ソーンズの胸に残った焦燥感の様なものはいつの間にやら溶けていた。
    「あれ? 本当に起きてたんだ。話を聞いてないのはいつもの事だけどさ、何だか様子がおかしかったから…」
     実際エリジウムの言う事は的を得た発言ではあったが、ソーンズは素直に話したいとは到底思えなかった。自分の出自に関わる後ろ暗い話だからという事もあるが、どちらかと言うとこのゆったりとしたエリジウムとの空気を壊したくないと、柄にもなく思っていたことの方が大きかったように思う。
    「まぁ…ブラザーが大丈夫ならいいよ。そろそろ目的地にも着くし降りる準備だけしておいてね。此処で暫く停泊していくんだから」
     なだらかな土地の遠くのほうの山地の間に、小さな村の形が見えていた。そこは、ソーンズとエリジウムが地質調査を頼まれたカジミエーシュの郊外にある素朴な村だ。
     今では珍しい移動都市となっていない村だ。人口と経済が足りていないらしく、若人は別の移動都市に移り住みつつある。…時間が経てば廃村からは逃げられないだろう。
    「本当、なんだってこの村なんだろうね。特に特産とか地質がおかしいとかそんな話は一切説明されなかったしなぁ…」
    「待て、お前にも詳しい依頼内容は聞かされずに調査に派遣されたのか?」
     随分とロドスにしては曖昧な理由での調査であった。そもそもエリジウムという特殊な部隊にいる人間が指名されること自体が地質調査としては違和感があった。
    「う〜ん、其処については正直に言うと怪しい…と僕も思ったけどさ。隊長にも行けって言われちゃったしね、僕には拒否権が無いよ」
     村の姿はどんどん近づいてきている中、なんとも奇妙な心地になり、エリジウムの頭の中はこの依頼を受けた時のことをもう一度反芻し始めていた。
     
     
     事は数日前。
    「え、調査依頼? しかも地質調査の?」
     ドクターから執務室に呼び出されたエリジウムは思わず聞き返してしまった。
     エリジウムは特殊行動隊の隊長補佐だ、戦場通信などを担当している身からすると自分では役不足ではないかと思ってしまった。
    「別に隊長からお許しが出てるって言うなら行くけどね。そういう内容ならメテオリーテさんとかアーススピリットさんとかの方が適任じゃない? もしくはその村のことを聞く限りだと天災トランスポーターとかの人達とかさ」
     エリジウム自身はトランスポーターになるために旅をしていたことはあるため、そういった土地に行くこと自体にはなんら問題はなかった。問題があるとすればそんな小さな村に鉱石病患者が紛れ込んでいいかどうかということだ。バレてしまったら調査も何もないだろう。
    「うん…私もちょっと悩んだんだけどね、他の人の手の空き具合とか相談した上で頼んでるから…あんまり深く考えないで気軽な小旅行とでも思ってくれよ」
     ドクターは自身の発言に迷うようなそぶりを見せつつ机の上を指でトントンと叩いていたが、拒否権は無いような態度ではあった。
    「もし誰か連れて行きたいんだったら一人くらいはいいよ。あんまり大人数だったり騒がしい人とかだったら怪しまれちゃうかもだから控えめな人でね」
    「なら俺が行ってもいいのか」
     急に隣から声をかけられたためドクターはビクリと肩を揺らした。声をかけたのは今日秘書業務を担当していたソーンズだった。
    「え?い、いや…ソーンズは別の作戦とかも…」
    「だが俺はここ最近多数の作戦に駆り出されていたぞ。緊急を要するものであれば構わないがさして重要なものでもなかった筈だ。」
     ソーンズはロドス内でも(実験が大詰め担っていたり、エリジウムとの賭けなどを除けば)召集があれば来る人間ではあった。同時に便利な存在であるからこそ頼り切っていた面があることをドクター自身が分かってた。頭の中のアーミヤが皆さんもう少し休んでください…と困った顔をしていたことを思い出し、苦い気持ちになった。
    「う…う…わかったよ…君にばっかり大多数のオリジムシを処理させてすいませんでした…君もちょっとした休憩も兼ねて行ってきたらいいよ…。エリジウムはそれでいいの?」
     勝手に進んでいた話がポン、とこちらに戻ってきたためエリジウムは咄嗟の反応に遅れてしまった。
    「……お前が別の人間の候補があったならいい」
     ソーンズは眉を少し顰めていたが、あくまでエリジウムの意向を優先させようとはしていた。どちらかというとドクターの方が少し断ってくれないかな〜と言う雰囲気を醸し出していた。(そんなに困るような作戦は控えてはいない筈だが)
    「まってまって! ほんと? ブラザーが来てくれるなら心強いよ!」
     エリジウムにとっては願ってもない助けだった。ドクターにとってはあまり歓迎されないかもしれないが、一緒に行けるチームとして気心の知れた相手のソーンズがいるのはとても楽しい旅になるだろうと思ったからだ。
    「嬉しいな、でも珍しいねこんなことに付き合ってくれるなんて。えっと…出発は三日後だよ!実験にかまけて忘れないでね」
    「大丈夫だ。最悪その時はお前が声をかけろ」
     そんなことをしれっとした顔でソーンズは行ったがエリジウムは腕を組んで軽く叱った。
    「こら! 自分で言い出したんだからちゃんとしてよね。ドクター最初の通り村までの往復の移動手段は確保してくれるんだよね?」
    「あ…ああ…うん。そう、うん。行き帰りに運転手付きの車を用意するよ。帰りはついてから二日後に迎えを寄越すから…」
     今度は白黒のコンビに置いていかれていたドクターはポカンとしつつエリジウムに合わせてソーンズの予定も調整する仕事に取り掛かった。
    (ちょっと予定とズレたが…大丈夫だよな?ケルシー…せっかくだから前衛のチームを鍛えよう)

     
     
     村は静かでごく平凡な村だった。しかし、活気というものは存在しておらずこのテラの中で静かに消え去っていくのだろうという雰囲気を確かに感じさせる村だった。
    「うん…まぁのどかでいい雰囲気じゃない?確かにずっと居ろって言われるのは発展した町に行きたい若い子達には厳しいかもしれないけどね」
     この村に天災が来ようとも離れたくない、という人がいるのも理解はできるものではあった。だが情勢がそうは許さないのも確かなのだ。
    「だが、天災が来ることが免れているということは原石の利用すらほぼほぼしていないということだろう。そんな村はいくつか点在していると思っていたが何故この村を指定されたんだ。」
     ドクターからこの村に関して言われていた情報は三点あった。
     ・天災を免れている
     ・移動都市として移り住むには資金が足りていない
     ・昔は羊などの畜産業を行なっていた
     
    「う〜ん、正直地質を調べてもこれと言って何か出てきそうな村じゃないよねぇ。シエスタみたいに火山があるわけでもなし…。正直言って僕の有休消化をしたかっただけなんじゃ?と思ってしまうけど…どうしよう!帰ったら僕の溜めに溜め込んだ休みが減ってたら!」
    「……いいんじゃないか?お前どうせ使うタイミングなんてなかっただろ」
    (まぁ、それは俺もそうだが)
     
    「あと特筆すべきなのは…あれかな?」
     村の一番目立つ場所にはこの素朴な村には少し異質なほど立派な風車が建てられていた。ああも目立つ場所にありながら、羽根は一切の動きを見せておらず、数十年前から時が止まったような雰囲気だった。
    「畜産業をしていたって話だけど、風車って基本的には小麦とかの農耕に使うよね?でもそんな風に使われていたって感じはあんまり…どっちかっていうと…」
    「…どちらかというと象徴のような感じはあるな」
     厳かな風車はソーンズとエリジウムを歓迎もしなければ特段追い払うようなこともなかった。当たり前だ、風車なのだから。
     二人の故郷イベリアやラテラーノの彫刻のようなものとはそもそもが違う。
    (違う筈…だが…)
     ソーンズはこの村に来てからなんとも喉に小骨が刺さったようなつっかえた気持ちが晴れていなかった。エーギルの故郷はエーギルだが、今や何処にだって住んで行けている。なのにこの村ではどこか居心地の悪さを感じずにはいられなかった。
    (コイツは特段そんな様子もない…そして俺自身「海」の存在を感じているわけでもない)
    「とりあえず、泊まる所があるって聞いてたけど其処に行ってみようか。えっと誰かいるかな? あ! もしもしちょっといいですか?」
     村の入り口から少し右に入った場所の家の庭に水やりをしている一人の老婦が居た。この村にとっては旅人すら珍しいのだろう、少し驚いた顔をしていたが、すぐに顔を緩ませた。
    「まぁこんにちは旅人さん、こんな村に人が来るのは久々だわ。何かあったのかしら?」
     閉鎖的な村で住民に何か問題でもあるのだろうか?という疑問はすぐに消されることとなった。
    「えっと僕たちは学者でして、この近辺の調査に来ているんです。泊まるところがあるって聞いて来たんですが…」
     そのエリジウムの言葉を聞いて老婦は申し訳なさそうに顔を歪ませた。
    「あら…ごめんなさいね、実際前には宿泊用の小さな宿があったんだけど…廃業しちゃったのよ。ほら、こんな村だしここでやるよりはもっと都市部に近い方がいいって」
     エリジウムは少し驚きはしたが、多少の『そんなこと』は予想していた。何せこんな世界だいつも通り何もかもあるなんてことはないだろう。
    「あ!そうなんですね!えっとじゃあちょっと申し訳ないんですが二日ほど村の近くで野宿をさせていただいてもよろしいですか?決してご迷惑はおかけしません」
     こういうことも予想して荷造りはしていた。前日までソーンズが全く用意をしていなかったので後ろでガミガミ言ったのも懐かしい。たった今日から丸二日だ、自分が鉱石病ということもバレずに調査自体もしやすいだろう。
     だが、この老婦は予想以上に余所者に親切であった。
    「ダメよ! 夜になったら冷え込むし…学者さんでしょ? 体を大事にしなきゃ。えっと…そうだわ! ちょっと待ってなさいね!」
     エリジウムが止めるまでもなく、老婦は見かけによらない素早い動きでジョウロをもったままどこかへ行ってしまった。
    「…あ、ありゃ?」
    「お前の当てが外れたな。これはいい意味でというべきか?」 
     しばらく二人で待っていると、老婦は一人の青年を連れて戻ってきた。
    「お待たせしたわね、貴方達この子の家にね、空き部屋があるからどうかしら」
     連れてこられた青年は少し困惑した様子ではあったが、ソーンズとエリジウムを見ると一瞬目を見開いた、ように見えた。
    「えっと、あまり広い家ではありませんが、それでも宜しければ是非どうぞ」
     先ほどの一瞬の態度が気にはかかったが、またしても優しく対応されたエリジウムはすぐに笑顔になった。
    「その、ではご迷惑でなければ二日程ですがお世話になってもよろしいでしょうか?何か手伝える事がありましたら是非言ってください。えっと…僕はエリジウムと言います。こっちのさっきから黙り込んでいるのがソーンズ」
     ソーンズはそう言われてジトリとエリジウムを見たが、同時にこういった場面ではこいつに任せた方が話は早いなという事も納得していた為、軽い会釈をするに留めた。
    「私はイポリトと言います。あの…見たかぎり歳はまぁまぁ近いですよね?あまり堅苦しくしないでください。アガタおばあさん、呼んでくれてありがとう」
    「いいのよ、私の方こそ久々の外の人にびっくりしてはしゃいじゃったから。ラロにも怒られちゃうかしら?」
     その後も話し続けそうな老婦を宥め、二人はイポリトという青年の後に続き村の中を進む事となった。
     
     
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