黒猫のライダー 遠くから雷の音が聞こえる。
先ほどまであんなに晴れ渡っていた空は、あっという間に分厚い雲に覆われて、辺りは不気味な薄暗さに包まれている。
雨が来る…それも、とてつもなく激しい雨が。
大きな黒猫は橋の下に逃げ込んでいた。他のネコ達とのナワバリ争いで傷ついた身体を庇うように丸める。
今回も負ける気はなかった。ただ、相手が悪かった。黒猫は体格とパワーに相当の自信があったが、相手のボス猫はさらに身体が大きかった。一匹でも負けねぇ、相手が何匹だろうがぜってぇ負けねぇ、と慢心した結果がこれである。
黒猫にとってはかすり傷程度だが、傷ついた身体で雨に当たるのは少々辛い。これは、雨が止むまで動けねぇな……
少しでも身体を休めるため、ウトウトと眠りに落ちかけたその時、不意に身体をギュッと掴まれた。
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