🥞のツボがよく分からない🎩3️⃣「なぁ、お前のツボって、あんの?」
唐突にメフィストが話しかける。
「……………………」
チラリ、と一郎は本から目を上げるが、すぐさま元のように本に目線を戻してしまった。
「おい、あからさまに無視すんな。一回こっち見ただろ。」
「…………くだらない。」
「だってお前全然笑わないし。」
「だからなんだ。」
「いっつも無愛想だし。生意気だし。口悪いし。上から目線だし。」
「おい。」
「もっと笑顔見たいな〜って、それだけ。」
「……別にいいだろ。」
「んだよ、かわいいかわいい恋人の頼みだろ?聞けって。なァ!」
「君、暇すぎないか。」
「お前はずっと本読んでるだけだろうが!俺朝からずっと掃除洗濯諸々してたんですけど!?」
「うるさいな。」
「もっと感謝の気持ちを見せろ。ありがとうは?おら、言ってみろ。」
「……別にやれとは一言も言ってない。」
「ハァ!?お前マジで屁理屈ばっかり!」
「フン、」
「まーたそういう態度とる!……はあ……
…………なぁ、マジでお前、ツボないの?」
「知らない。」
「知らない、って…自分の事だろ……しょうがないな、じゃあ俺が見つけてやる。」
「面白くない。」
「おい、やる前から決めつけんな。」
「面白くない。」
「だああああ!!!、もーうるせぇ!!!誰も言葉で、だなんて言ってねぇだろ!おら、強制的にでも笑わせてやる!」
隣に座っていたメフィストは一郎が読んでいる本をひょい、と取り上げると、がばり、と押し倒す。
「おい!、メフィスト、」
「んー、どこがいいかな、」
「っひゃう!!っは、なにを、!」
するり、とメフィストが一郎の脇に手を挿し入れる。
唐突に触れられ、一郎は思わず声を上げてしまった。
「んはは、ここかァ!じゃ、ここは?」
メフィストはにやりと心底楽しそうに笑い、臍の辺りも撫でていく。
「ッん、ひ、や、やめ!ん、!ふ、」
「お腹もよわい?」
「ん、っは!ふ、…ぐ、ん、ふふ、ひゃめ、!」
すりすりと撫でる度、一郎が面白い様に反応するので、メフィストは楽しくなってきてしまい、夢中で撫で回し続ける。
その間ずっと一郎は、笑っているのを見せるのが恥ずかしいのか、腕で顔を隠し続け、しまいにはソファにうつ伏せになってしまった。
────数分後。
「っん、は、ぁ、ふ、も、やめ、ろッ!!!」
とうとう痺れを切らしたのか、一郎は腰の上に乗っているメフィストを蹴り倒し、距離をとる。
「ッッッで!!!!!!なにすん!!!、
だ!!、ぁ………………」
メフィストは思わず一郎を睨み付ける。が、
「、はー、は、ぁ、…ふ、……もう、いいだろ。」
一郎が、顔を真っ赤に染め上げて、はあはあと息を切らして、時折ぴくりと身体を揺らして、薄らと涙を浮かべた目で、こちらを睨み付けている。
その姿が、夜の情事のそれと錯覚して、
「あ、悪魔くん、」
「………………………………おもしろくない!」