キスしないと出られない部屋「こんなことは初めてだ、聞いたこともない」
長椅子に座る私の目の前で、扉に貼られた張り紙を読み終わったハンジ団長は額に手をあて、大きくため息をついていた。
――キスしないと出られない部屋――
「あぁ、起きた?」
長椅子から起き上がり、じいっとそこにいた人物―――ハンジ団長の姿を見つめていれば、動く気配に気づいたのか私に声をかけてくれた。
「えっと、ここは…」
頭が酷く混乱している。先ほどまで私は、訓練で疲れ果てて宿舎のベッドで寝ていたはずだった。
目を開ければ、憧れのハンジ団長が団服姿で目の前にいて、その上私に声をかけてくれている。私も寝巻きに着替えていたはずが、ハンジ団長と同じく団服を身につけていた。
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