⑥幼児化 (運命後のザフトシンキラ) 「本当にあの人は!」
バタバタとザフトの軍施設の廊下をシンは走っていた。
周りの軍関係者がなんだ? とばかりにシンを見ていたが、そんな事は気にしていられない。
アスランからキラの事を聞いてはいた。
当初は全然違うじゃんと思っていたが、共に過ごす時間が増えて来て、アスランの言う事が少し分かった。
やりたい事しかやらないと言っていたが、そんなことは無い。むしろやり過ぎてる。面倒臭がりなのは少し分かる。書類とかけっこう溜まってたりする。でも期間内には終わらせてるし、それ以上に仕事をあっちこっちから貰い過ぎなのだ。
ジュール少佐からも何度も注意を受けているのに、キラは何処吹く風の如く、さらりと受けてしまう。そのせいで休みも満足に取らず、食事物疎かにする。
何度もシンやルナマリアからも進言しても、キラはやめようとしない。最近ではこちらが折れて、無理をしすぎる隊長のキラを支えていた。
だが、今日に限ってキラが会議室に来ないのだ。いつもギリギリな時が多いが、時間内にはきっちり準備を済ませるのに今日だけ姿がない。今回の会議はとても重要で、三国同盟の新たな組織に関する話をする予定になっていた。そこには必ずキラも参加と言われていたのに。
もしかしたら、連日の徹夜が影響して、スケジュールを忘れているんじゃとシンはキラの執務室への駆け込んだ。
「キラさ、隊長!」
コールもせずに部屋に入る。ロックをしろと言ってもキラが掛けない為、コールの必要が無いのだ。
「あれ⋯⋯居ない?」
てっきり執務室のデスクで仕事をしていると思ったのだが、そこにキラの姿は無い。
「⋯⋯まさか、寝てる?」
いやいや、キラに限ってそんなことは無いだろうと思いながら、シンは奥の仮眠室へ向かう。
「キラさん?」
部屋を覗くとベッドの上でシーツが小さな山を作っていた。それになんか泣き声が聞こえる。
やっぱりおかしい。泣き声もだが、シーツの山が成人に近い年齢の男性にしては小さすぎる。
そろりと近付き声を掛けると、ビクリッと跳ねた。もう一度名前を呼ぶとシーツから出てきたキラを見て絶句するしなかった。
「⋯⋯ぐすっ、お、おにいちゃん、だれ?なんで、ぼくのなまえしってるの?」
シンの目の前に居たのは小さな子供だった。しかもどう見てもキラ本人にしか見えない。
「⋯⋯」
いやいやいや。待って! これは現実か!? 昨日はキラさん普通だったぞ!?
パニックになりながらシンは状況を整理しようと考える。目の前のキラは年齢は恐らく3歳ぐらいか、さっきの話し方もどこか舌足らずな感じで可愛い。
「えーと、お名前と年言える?」
「きら。さんしゃ⋯⋯あっ、よんしゃい!」
小さいキラは初め指を3本出していたが、思い出したように4本出した。
なんだ、この可愛さの暴力は!
「俺はシンって言うんだよ。4歳か。おにいちゃんだな」
シンは妹が居た為小さい子の扱いは何となく覚えていた。
キラの頭を撫でてやると嬉しそうに笑ってくれた。
やばい。可愛すぎて種割れしそうだ。
「⋯⋯ここ、ぼくしらない⋯⋯おとうさんとおかあさんどこにいるの?」
「キラくんのお父さんとお母さんは今ちょっとお仕事でいないけど、ここで俺と待つようにって言われたんだ。だから、俺と一緒にいい子で待っててくれるか?」
「⋯⋯うん。きら、いいこでまてるよ!」
「じゃあ俺と⋯⋯」
遊んで待とうかと言おうとした矢先、ピリリリッと端末が鳴った。
すっかり忘れていたが、確か重要会議の為にキラを呼びに来たのだった。
さぁっと一気に血の気が引き、慌てて端末に出る。
『シン・アスカっ! 貴様いつになったらキラを連れて来るんだ!!』
出た瞬間怒りMAXのイザークの声がスピーカー越しでも聞こえ、思わず耳を離してしまった。
「ええーと、その、キラさんいた事はいたんですけど⋯⋯」
『だーかーらー! 貴様はこの会議が重要な物だと知ってる筈だ! なら早く連れてこんか! 馬鹿者!』
「いや、あの、連れて行きたいけど無理と言いますか⋯⋯」
イザークの怒りの声はキラにも届いていたようで、シンが確認した時にはぴえっと泣く寸前だつた。
「あぁ! 泣かないで! もうちょっと本当に!」
『さっきからなんなんだ! 貴様はっ!!』
トドメの怒号に、とうとうキラは耐えられず大声で泣き出してしまった。
「うぁーーん!!」
「ちょ、ほら! ジュール少佐が怒鳴るから泣いちゃったじゃないですか! 大丈夫だよー!」
『貴様は余程俺を怒らせたいらしいなっ!!』
「あーもう! とにかくこっち来てくださいよ!説明するより見てもらう方が早いんで! ラクス様も連れてきて下さい!」
『はぁ!? 何を言ってるんだ! 貴様はっ!』
イザークの言葉を遮りブツっと端末を切った。この後が怖いが、仕方がないとシンは開き直る事にした。それよりも泣き止まないキラを宥める方が先だった。
どうにかキラを泣き止ませた頃、部屋のコール音が鳴り、怒りマークを浮かべたイザークを先頭に、ラクスとルナマリアも部屋に入る。そこに居たシンと小さなキラを見て皆驚きに目を見開く。
「あらあら~キラ可愛いですわ♡」
「や~ん!本当に可愛い♡」
ラクスとルナマリアは小さなキラにメロメロだった。
キラは見知らぬ大人が複数人来た事で怯えてしまい、ずっとシンに引っ付いている。
「⋯⋯何がどうなってる?」
「俺にも分かりませんよ。俺がここに来た時にはこうなってました」
「⋯⋯はぁー。確かにこれじゃあ説明は出来んな。今日の会議は延期するしかない。俺は他の奴らに説明してくるから、お前はキラの面倒をしっかり見ろ」
イザークがキラを見ると、ぴえっとした表情を浮かべたキラがシンにぎゅっとしがみつく。どうやら先程の会話ですっかりイザークを怖い人認定してしまったようだ。気持ち気落ちしたイザークが部屋を出て行くと、ラクスとルナマリアがニコニコ笑ってキラの目線に合うように膝を付く。
「本当に可愛らしいですわ♡お名前と今お幾つですか?私に教えて下さいな」
優しく話し掛けたラクスには警戒を解いたようで、シンの服を掴んだまま元気よく答える。
「きら!さんしゃ⋯⋯よんしゃい!」
先程と同じように指を3本から4本に変えて答えるキラに、ラクスもルナマリアも黄色い声を上げた。
「可愛すぎますわ♡♡」
「本当に♡天使じゃないですか?可愛い♡」
お姉さん2人に可愛いと連呼されて、キラはなんとも言えない表情を浮かべる。
「ぼく、かわいいの?」
こてんと首を傾げるその仕草は普段のキラもよくやる。小さい頃からの癖なのかとシンは納得した。
「可愛いですわ♡」
「そっか⋯⋯でも、ぼく、かっこいいほうがいいなぁ」
そう呟いたキラは少し拗ねたように口を尖らせて、その姿を見たラクスとルナマリアは一瞬固まったかと思えば無言でカメラを取り出し連写しだした。
「あ! 俺も撮りたい!」
シンも欲望に勝てずキラの写真を撮りまくった。
キラはと言うときょとんとして大人しく座っていたが、暫くすると眠くなって来たのか目を擦り欠伸をする。ふえっと愚図り出したので、本格的に眠くなって来たようだった。
「あら、お眠になってしまいましたのね」
「本当だ。シン、一緒に寝てあげなさいよ」
「え? でも」
「おにいちゃん、いっしょ、ねんねするっ!」
キラは小さな手でシンの服を握り締める。
「キラからの指名ですもの。仕方がありませんわ。キラをよろしくお願いします」
「仕事の事は気にしなくていいわよ? 私がやっておくから。その代わり寝顔もよろしくね!」
「分かったよ。ありがとうございます」
キラのベッドに2人で転がる。ポンポンと一定の速度で胸元辺りを優しく叩いていくと、ウトウトとキラの瞼が落ちていく。
シンの服を握り締めて居たが、本格的に眠りに入ると力が抜けていた。
「おやすみ、キラさん」
キラが寝入ったのを確認したらシンも眠気に襲われる。
まだ時間は業務中だったが、イザーク達に任されたのだから一緒に寝てもいいかとシンも目を閉じる。小さいキラは体温が高くてお日様の匂いがした。そしてシンの意識は飲まれた、
「⋯⋯ん⋯⋯あ、れ?」
ぼんやりと目を開けると、目の前にシンの顔が見えた。
なんでシンが一緒に寝てるのだろうか?思い返してもシンと寝る事態になった記憶は無い。
「えーと。今何時?」
時計を見てキラの顔色がざぁっと悪くなった。
「ちょっ! 会議の時間! どうしよう!」
予定時刻から既に5時間も経過していた。
キラが慌てふためいていると、シンも目が覚めたようで、キラに会議の延長を報告すると、キラは安心した。
束の間ではのキラの幼児化は終わり、ラクス、シン、ルナマリアの写真フォルダが幼いキラで埋め尽くされていた事は言うまでもないだろう。
性癖パネル⑥幼児化(運命後のザフトシンキラ)でした。なんで幼児化したのかは分かりません(笑)
この後幼児キラの写真はカガリにも共有され、アスランには高値で売る事が出来たと思われます。
リクエストありがとうございました!