20の誓い
『キラ、大好きだよ』
『僕もアスラン大好き!』
幼少期の記憶。いつも何処に行くのもキラと一緒だったあの頃。
『じゃあキラ。約束して? キラが20歳になったら、結婚してくれ』
『? うん! 僕20歳になったらアスランと結婚する!!』
にっこりと笑って、告白を受け入れてくれたキラ。ずっとキラが好きだった。キラと初めて出会ったあの時から。
「⋯⋯朝、か⋯⋯」
気が付けば寝てしまっていたらしい。最近はターミナルでの仕事が忙しくて、寝る間も惜しんで情報収集をしていた。
時計の日付を見ると5月17日の0600を示していた。
「⋯⋯あ」
改めて時計を見て、先程の夢を思い出す。
明日はキラの20歳の誕生日。キラは確かコンパスの仕事でファウンデーションに入国していたなと頭で考える。
アスランもまたファウンデーションに潜入捜査をしており、どうにかキラと合流出来ないか考える。
確かメイリンの情報だと、今宵はファウンデーションの好意で歓談の席が設けられると聞いた。
ここ最近のキラは塞ぎ込んでいるようだとシンやルナマリアから話を聞いており、ファウンデーションでの作戦が終われば、息抜きをさせようかとラクスとも調整をする予定だった。
まさか作戦中に誕生日が来てしまうとは、予定が狂ったが仕方が無い事だろう。
コンパスは今や世界情勢の均衡のために必要不可欠な組織となっていた。
総指揮官を務めるキラも多忙を極めており、アスランとも中々会えずじまいだ。
「⋯⋯どうにかパーティの合間にキラと会えないか?」
ブツブツとどうにかキラに会えないか思案する。プレゼントは後日用意するとして、当日にお祝いの言葉を言いたかった。
だって、今年は約束の年だから。
キラが覚えているか分からないが、アスランの中ではあの時の約束は永遠だと思っている。
メイリンにどうにか協力を仰ぎ、ファウンデーションの王宮内に潜入は出来た。
(後はキラを見つけてどうにか2人になれないか)
パーティが終わり、キラはミレニアムに戻ったようだとメイリンからの情報だ。
それならばとミレニアムにこっそりと潜入し、キラがいるであろう部屋に向かう。
一応ここに居ることがバレないように気を付ける。
「⋯⋯キラ」
キラの自室に入ると、既にキラは寝ているようだった。
珍しいなとアスランはベッドに近付く。
人の気配に敏感になっているキラが、いくらアスランも気配を消しているからと言っても、こんなにも気が付かないのはおかしいと感じた。
顔を見ると疲れ切っているように見え、また痩せたのだろうか窶れて見えた。
「⋯⋯キラ」
思わず声を掛けてしまう。
「⋯⋯ん⋯⋯あ、れ? アスラン⋯⋯?」
ぼんやりと目を開いたキラが、なんでここにアスランが居るの?と不思議そうに言った。
「⋯⋯キラ、大好きだよ」
「⋯⋯うん⋯⋯僕も、大好き⋯⋯」
疲れた笑顔を返すキラに胸が張り裂けそうだった。
恐らくキラは睡眠不足で今目の前にいるアスランは夢だと錯覚しているのだろう。明日の作戦に響くのは避けたい。
「キラ、無事に終わったら約束を果たそう。だから、今は眠れ」
そう言って、キラの目元を手で覆ってやる。
「⋯⋯う、ん。僕、頑張るから⋯⋯あすら⋯⋯ん」
キラはそのまま深く眠りに入ったようだ。
(しばらくはキラの誕生日祝いは延期だな)
「⋯⋯誕生日おめでとう、キラ」
気が付けば日付が変わり、キラの誕生日になっていた。
キラに直接言いたかったが、今は1番に言う目的を果たすだけだ。
ちゅっと軽く唇にキスを送り、その後おでこにもキスを落とす。
無事に作戦が終えられるように。そう祈りを込める。
その後ファウンデーションの策略で色々とあったが、無事にキラは戻ってきた。
「キラ」
「あ、アスラン」
「もう大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
ファウンデーション事件の後片付けも終わり、コンパスの凍結も解けた頃、ようやくキラと2人きりになれた。
「キラ、遅くなったが誕生日おめでとう」
「あれ? あ、そっか。気が付いたらもう過ぎちゃってたんだね」
「気が付いてなかったのか」
「うん。だってあの時はそれどころじゃなかったしね。けど、アスランにお祝いの言葉を貰えて嬉しいよ」
笑ってそう言ったキラは、以前の様な思い詰めた表情が消え、柔らかいものに変わっていた。
あぁ、やっぱりキラはこの笑顔が似合っていると思う。
「⋯⋯キラ、昔約束した事を覚えているか?」
もしかしたら覚えていないかもしれない。そんな不安も僅かにあったが、忘れていたとしてもまた言えばいいと自分に言い聞かせた。
「⋯⋯それって、僕が20歳になったら君と結婚するって言うやつ?」
キラが覚えていた事に驚く。忘れてしまっていると思っていた。
「⋯⋯覚えてたのか」
「忘れらないよ。凄く嬉しかったんだから」
薄ら頬を染めてキラはアスランを見つめる。
アスランもそんなキラを見て笑みを深める。
「⋯⋯キラ、改めて俺とずっと一緒に居てくれるか? 結婚しよう」
そう言って用意していた指輪をキラに差し出す。
「はい。末長くよろしくね」
薄らと目に涙を浮かべてキラは指輪を受け取ってくれた。
「なんだか、俺がお祝いを受けたようになったな」
「ふふ。ちゃんとプロポーズ以外にもプレゼントあるんでしょ?」
「あぁ、勿論あるぞ? それよりも、キラ」
言葉を切り、キラに近付くとそのままキ顎に手を添えキスをする。
「⋯⋯ふっ、あっ」
深く何度も口付けると、キラの身体から力が抜ける。
「ずっと我慢してたんだ。いいか?」
「ーーっ、いいよ。アスランにあげるよ」
そう言ってキラからキスをしてくれ、そのまま身体を何度も重ねた。
幼少期の約束通り、2人は後日婚姻届を提出し夫婦になったのだった。
続かない!
勿論キラが奥様で、アスランが旦那様だよ!