【蔵不二】俺は運命を縛りつける不二周助には誰にも言っていない秘密があった。彼には物心ついた時から自分の左手の小指に結ばれる紅い糸が見えていた。といっても特段秘密にしているつもりはなかったが、きっとこんな事誰も信じてくれないだろう。よく運命の紅い糸だなんて言葉を聞くけれど、この糸が本当にそうなのかわからないまま常に結ばれるそれと日常を過ごしていた。
糸はただ小指に結ばれているだけで生活に支障はなかったが、彼にとって一つだけ嫌なことがあった……なんとなく恋ができないのだ。どんなに気になる人ができても、その人の小指とこの糸が繋がっていないことに悲しくなってしまう。いっそこんなもの見えなければ素直に気持ちを伝えられるのだろうか……そう、同じ部活の同級生である手塚国光に。
不二は中学に入学してからずっと、常に強く誠実な手塚に魅了されていた。手塚は真面目で厳格だが、たまに揶揄うと予想外の反応をしてくれる面白い奴だ。そして常に前だけを見据え、不二には絶対に到達できないであろう領域まで迷わず進んでいってしまう。そんな彼への憧れと自分を比較したひけめを感じ、気づけば彼のことばかり考えるようになった。やがて不二はこの感情の名前を自覚した……これが恋なのだ。だからこそ辛かった──だって彼の小指にはこの糸は繋がっていないのだから。
たかが糸だ。何に繋がっているのか、そもそものこの糸を辿った先に何があるのかなんて未知数だ。気にすることなんてないと思おうとするのに視界にちらつくそれに腹が立つ。鋏を持ち出して糸を切ろうとしたが、何度試してもそれを断ち切ることはできなかった。
もやもやと恋や小指の糸のことで悩みながらも、青学のテニス部は勝ち進み全国大会まで駒を進めた。
そして迎えた全国大会の準決勝、久しぶりのシングルスの試合でコートに吹く心地よい風を感じていたところにそいつは現れた。
ネットの向こうに立つ対戦相手──端正な顔立ちをした彼のラケットを握る指を見て不二は目を見開いた。そう、不二の小指に結ばれる紅い糸は、彼の包帯を巻かれた左手の小指に繋がっていたのだ。
その日の試合、不二は初めて公式戦のシングルスで負けた。こんなに悔しいのは生まれて初めてだった。ずっと見えていた紅い糸の先は、自分を負かした男──四天宝寺中の部長、白石蔵之介の包帯の下に繋がっている……この事実だけで不二は動揺したが、試合にそれは持ち込まず向き合ったはずだった。なのに序盤では醜態をさらし、白石に翻弄されることしかできなかった。後半で追いつきタイブレークまで持ち込んだものの勝利を収めたのは相手の方であった。実力不足を感じさせられる中、「強いな、お前」と言って彼が差し出した手を握り返す。不二が顔を上げると、彼と目が合った……お互いの瞳にお互いが映った瞬間、不二は自分の心に火が灯るのを感じた。胸の鼓動が速まり、ほおが熱くなる感覚……彼の方も自分を見据える瞳が揺れ、顔を赤く染め、握る手の力を強めた。2人で見つめ合い、立っている。それだけのことがひどく特別なことのように思えて不二は戸惑った。広いコートで2人きりの時間が終わる……そこに後ろ髪引かれる感覚を覚えながらも不二はベンチに戻る。その小指には変わらず紅い糸が結ばれていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
青学は全国大会で優勝を勝ち取り、3年生である不二達は部活も自由参加となった。それでも不二はできるだけ部活に顔を出すようにしていた。テニスの感覚を失いたくないのも勿論だが、手塚と過ごせる大切な時間だったからだ。
白石との試合以降、不二は思い悩んでいた。3年という長い時間を共に過ごしてきた手塚への想い。大切に大切に心の部屋にしまっていたこの感情は今も変わらないのに、脳裏にこびりつくのはあの試合で見つめ合った白石の視線であった。たった1日、たったひと試合を共にしただけの男がノイズとなって、不二の手塚への恋心を脅かす。その彼の左手の小指には何度試しても断ち切れない紅い糸の端が繋がっているのだ。試合に負けたことだって今でも悔しいのに、こんな運命があってたまるかと不二の中に反発心が生まれる。
白石のことはもう忘れよう、きっともう会うことはないだろうから。不二がそう決心したのは暑い夏が終わりを迎えようとしていた頃であった。
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全国大会から中学生が招集され、テニスで競い合うU-17合宿──季節が移り、木々が紅く染まる頃それは開かれた。またテニスで強い選手達と戦えるこの環境に喜ぶ反面、不二は嫌な予感がしていた。忘れよう忘れようと頭を悩ませていた白石蔵之介と再会せざるを得ないからだ。あれだけの実力者が合宿に来ないはずがない。顔を合わせるのが一方的に気まずくて、不二は合宿中はできるだけ手塚のそばに居よう、白石とは関わらず過ごそうと決めていた。それなのに……
「不二クンっ!」
「……白石、久しぶり」
「せやな。なぁ、もう部屋割りみた?俺ら部屋同じみたいやで。立海の幸村くんも……」
「えっ、そうなんだ……」
「なんや、あんまり嬉しくなかった?俺、不二クンとずっと話したかったから嬉しくて」
なんの悪戯か、避けよう避けようと思っていた相手と同じ部屋で共同生活を送らなければならないことに不二は心を揺さぶられていた。優しく微笑む白石の包帯を巻いた左手を見ると、やはり変わらずその小指には自分の左手の小指につながる紅い糸があって。そんな彼と目が合うだけで不二は変に意識してしまい、思わず目を逸らしてしまった。
「そんなことは……」
「……そか、なら良かったわ。ほな、部屋行こか」
そういうと、白石はさりげなく不二の腰に手をまわして一緒に部屋までいくことになった。出鼻をくじかれただけでなく、白石の距離感の近さに不二は動揺してしまう。四天宝寺のメンバーに対してもこういった態度なんだろうか。頭の中でモヤモヤと考えているうちに、自分達に割り当てられた部屋にたどり着く。中は空室で、まだ幸村は来ていないようだ。
部屋につき荷物を下ろす。白石と2人きりのこの状況に居心地の悪さを感じ、すぐにでも他の青学メンバーのところに逃げ出してしまおうと部屋のドアを振り返ると、不二の真後ろに白石が立っていた。驚きつつも何か用かと声をかけようとすると、白石は優しく微笑みながら不二を強く抱きしめた。
「不二クン、めっちゃ俺のこと意識してくれるのな。はぁ、かわええ」
この男は何を言っているんだろう……白石の意図のわからない言動に不二は言葉が出ず、混乱してされるがままになっていた。
「あんな、俺、あの日からずーっと不二クンで頭いっぱいだったんや。俺たちの試合の日……あんなお互いを晒しあって、壊しあって……そんな時間は初めてやった。なぁ、不二クンもそうやろ?」
「……離して」
「嫌や。不二クンも同じ気持ちだって俺にはわかる。だってあの日俺たち通じ合っとったやん。君の瞳はそう言うてた!」
「そんなことない、キミの思い込みだよ」
どんなに否定しても白石は不二を離そうとしなかった。それどころかひどく優しく笑うと、不二の瞳から視線を逸らさないまま包帯の巻かれた左手で不二の頬を優しく撫でる。そして不二の耳元に囁きかけた。
「なぁ、俺達があの日出会ったのって──運命だと思わん?」
運命……その言葉を聞いた瞬間、不二の心は酷く波打ち、反射的に白石の胸元を思い切り押して突き飛ばしていた。
「運命?そんなの知らない、ボクはそんなもの信じない!勝手なこと言わないで!」
怒りに任せて白石を睨みつけるが、白石は相変わらず優しく、まるで愛おしいものを見るような目で不二を見据えていた。
「そんなに意地はらんと。だって不二くん、俺のこと好きやん」
「勘違いもいいところだ、ボクはキミのことなんて何とも思っていない」
「嘘やな。じゃあちゃあんと俺の目見て言うてみ?ん?」
白石の言葉を否定したくて、挑発されるままに不二は白石と目を合わせ睨みつけた。しかしいざ目が合うと吸い込まれそうな深い色の瞳と彼の優しい視線に居た堪れなくなり、思わず目を逸らしてしまった。
「ほら、不二クンは俺のこと好きで好きで、意識してまって目もあわせられないんよな?本当かわええな、自分」
「話にならないね。勝手にそう思ってくれて構わないけれど、ボクはキミに対して何の感情も持っていない」
吐き捨てるようにそう言い放つと、不二はそのまま部屋を出て行った。当てもなく、ただ白石と同じ空間にいることへの嫌悪なのか、恐怖なのか、よく分からない苛立ちを抱えて合宿所を彷徨っていた。左手を見ると、あいかわらず赤い糸が結ばれている。こんなもの引きちぎってしまいたい……この糸の先にあの男がいることに不二の心は酷くかき乱されていた。
「待っててな、俺の運命。必ずわからしたるからな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
合宿は過酷なものであったが、不二にとってそれよりも酷であったのは自分を見つめる刺さるような白石の視線であった。
同じ部屋で朝から晩まで白石とともに過ごし、彼の根は優しく親切な男であることは伝わっていたが、ふとした時に垣間見える自分に対する特別な感情を受け止められずにいた。まるで愛おしいものを見つめるような慈しみのこもった視線に胸やけしてしまいそうで、なるべく白石と2人きりにならないように努めた。
白石の熱い視線に耐えかねた不二は、積極的に手塚と行動を共にするようになった。自分が恋をしているのは手塚なんだ……だって3年間ずっと一緒にテニスに励み、彼のそばにいたのだ。大切に大切に心にしまっているこの気持ちが、たった一度試合をしただけの白石に揺らがされているのが怖かった。こんなよく分からない小指の糸に翻弄されてしまうのがやるせ無かった。その気持ちを再確認したい、今まで通り彼と一緒にいたい……練習の合間や食事の時間、入浴時間など、できる限り手塚に合わせて一緒に過ごしていた。手塚の方も嫌な顔ひとつせず、いつも通りに不二と一緒にいてくれる。変わらず誠実で優しい手塚の横にいることに安心感を覚えるが、日に日に強くなっていくのは彼への愛情以上に身体に刺さる白石からの視線であった。
「不二クンは小悪魔やなぁ」
入浴を済ませて部屋に戻ると、そこには幸村はおらず白石がひとりベッドに腰かけて自分を待っていた。
「何の話?」
「俺に妬いて欲しいん?何なん最近、手塚クンと見せつけてくれるやん」
「別に、キミには関係ない」
ベッドに戻り、カーテンを閉めて寝てしまおうとする不二。白石はその手を握ってそれを止めると、不二の横に腰掛けてきた。
「どういうつもり?」
「なぁ、不二クン。お願いやから自分に正直になってや。お前が好きなんは俺、そうやろ?」
「何度も言ってると思うけど、キミに対して特別な感情は持っていないよ」
「俺も何度も言うとると思うけど、何でそんなバレバレの嘘が通用すると思うん?」
不二が何も言えずにいると、白石は不二の左手をとり、その小指を自分の左手の小指と絡めてきた。
「ほら、今も不二クンは俺のこと意識してる、俺にドキドキしてる……本当かわええな、自分。
なぁ、俺たちはきっと赤い糸で結ばれてる。絶対に運命の2人なんや」
白石の口から運命だという言葉が出る度に、不二の感情はひどく掻き乱された。自分をずっとずっと悩ませる言葉を簡単に口に出し愛を囁く白石に必要以上に苛立っている……そんな自覚があるのに、口から出るのは彼の神経を逆撫でするような言葉だった。
「運命、運命って、下手なナンパみたいな事ばかりいうね。逆ナンされるのが嫌いなんじゃなかったの?」
それを聞いた瞬間、白石の表情が固まるのがわかった。酷く傷ついたような、静かに怒りをはらむようなそんな表情。それを見た不二は相手を傷つけた罪悪感と一矢報いることができた安心感が入り混じり、ばつが悪くて白石から目を逸らすことしかできない。白石はふぅとひとつため息をつくと、そんな不二の頬を掴み無理やり自分の方を向かせた。
「不二クン、そんな口きくんやね。お前がその気ならもう俺は遠慮せん。俺とお前の運命がそんな軽いもんと違う事、お前にわからしたるわ」
おやすみ、不二クン……耳元でひとつ囁くと、白石は自分のベッドに戻っていく。残された不二は、自分が今耳まで顔を赤く染めていることに気づくことはなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おはよう、不二クン。もう起きなあかんで?」
「不二クン、一緒に飯行こ?不二クンの顔見ながら朝ごはんなんて、俺幸せや」
「不二クン、柔軟俺としよ!」
「ほら、不二クンのドリンクも持ってきたで」
不二クン
不二クン
不二クン!
翌日から、白石は不二にべったりと付き纏い構うようになった。クラスメイトの菊丸すら間に入れない、佐伯かよと思うような徹底マーク。他の合宿参加者が見ていても、不二が断ってもお構いなしのそれに不二は戸惑いながらも気にしていない体で受け流すよう努めた。
その日の夕食の時間も相変わらず自分の向かいを陣取る白石に、いい加減受け流すのが厳しくなってきた不二は苦言を漏らした。
「ねえ、みんな見てるんだけど?」
「知っとるよ?」
「わかってて何でこんな事するの?」
「言うたやん、もう遠慮せんて。俺な、不二クンには自分に正直になって欲しいねん」
「キミが正直すぎるんじゃない?」
「不二クン、俺のことわかってくれるんやな」
「そういうポジティブなところは見習いたいね」
100パーセント皮肉で言っているのに、白石は照れ臭そうに笑う。その純粋な笑顔に不二の心は燻りどうしたらいいのか分からないまま箸を進めるしかなかった。
そんな2人の間に、救世主のように現れ空気を読まずに声をかけてくる少年がいた。
「しらいし〜!なんや最近不二の兄ちゃんとずっと一緒におるなぁ。ワイにも構ってーや!」
そう言って2人のテーブルに来た遠山は、口を尖らせて拗ねた様子だ。ずっと不二にべったりの白石に、四天宝寺のメンバーが心配だったり寂しく思うのは当然のことだろう。
そんな遠山の頭を撫でると、白石は申し訳なさそうな顔で告げる。
「ごめんな、金ちゃん。でも不二クンは俺のお嫁さんになる子やねん。だから俺が一緒におらんと、堪忍な!」
ガシャンと音を立てて、コーヒーカップが落ちる……もちろん不二が持っていたものだ。コーヒーが手にかかるのが気にならないくらい、白石の言葉が頭を占めて脳が働かない。彼は今何を言った……?
「不二クンっ、大丈夫?火傷してない?」
白石は咄嗟に不二の手を取り、近くにあったコップの中の氷を当てる。いつもの優しくて面倒見の良い白石蔵之介の顔が、不二の背をゾワゾワと震わせた。
周りを見渡すと、食堂にいるほとんどがギョッとしたような表情でこちらを見ていた。そばにいる遠山もポカンと口を開けて、状況をよくわかっていないようだ。
「大丈夫そうやな。よかった、不二クンの綺麗な手に火傷ができたらたまらんもんな」
端正な顔立ちで、きっと女性がみたらひと目で恋に落ちてしまいそうな笑顔を向けられる。目まぐるしく起こる出来事で不二の心は揺れ動いて収まらず、鼓動は速まるばかりだった。
「ねえ、白石。このあと時間くれない?」
「えっ……も、もちろんええよ!」
不二の申し出に、白石は顔を真っ赤にして照れたように笑う。先の優しい笑顔とはまた違った年相応の少年の顔……頬をかくその左手の小指には、相変わらず紅い糸がぶら下がっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんや、不二クンから誘ってくれるなんて嬉しいわ。俺も2人きりになりたかってん」
2人は食堂をあとにすると、合宿所の裏にある花壇までやってきた。色とりどりの花の咲き乱れるそこだが、夜になるとその色は見てとれない。
人気がないのをいいことに白石は不二の腰を抱き寄せ、勝手に横髪を耳にかけるとそこに囁く。
「なぁ、俺達が運命の2人だってわかってくれた?」
耳元をくすぐる吐息にゾワリと背が震える──そうだ、この感覚だ。この心地悪さがたまらない、ゾクゾクと背中を這い上がるこれは……スリル。
曇りひとつない瞳で彼の語る愛はこんなに気味が悪いのに、その深淵を覗きたくて仕方がない。その手から逃げたいのに捕まりたい。この糸を手繰り寄せて、引き寄せて、雁字搦めにされてしまったら、ボクは……
こんなの知らない、知らない。
不二が魅了され、求めてやまないもの。テニスでは得られないような戦慄が彼の中にあったのだ。
「ねぇ。運命ってキミはいうけれど、そんなものじゃなくてキミの気持ちを言葉にしてよ」
「えっ」
「運命なんていう見えない何かじゃなくて、キミの心が知りたいんだ」
そう言って不二は白石の胸に左手を当てると、ドクンドクンと音が聞こえるくらいに激しい鼓動につられるように小指の糸が揺れる。そのまま顔を上げて、白石の瞳の中に自分が映るのをぼんやりと見つめる。もう目は逸さなかった。
「そうやな、ちゃんと伝えてなかったな……不二クン、俺は君が好きや。あの試合からずっと君のことが忘れられんかった。あんなお互い丸裸になるみたいな時間は初めてやった。
試合の後君と握手して、目が合って……君が俺の運命の人だってすぐわかった。あの日俺達は恋に落ちたんや、そうやろ?
なぁ、不二クンも同じやろ?俺にはわかるよ。あの日からずっと、俺達はお互いに思い合ってる。
不二クンは俺のモンや、誰にも渡したくない!手塚クンだろうが誰だろうが、俺と不二クンの邪魔をする奴はみんな倒す。なぁ不二クン、俺は伝えたで。キミも正直になって?俺にたくさん愛してるって言って?俺のお嫁さんになって、死ぬまでずーっと一緒にいて?」
深く深く愛を囁く白石に、不二はあの試合以上に高揚していた。こんなスリルを、不二の心をぐちゃぐちゃに掻き乱し、揺さぶり、舐り、犯し尽くすようなスリルを知ってしまったら、後戻りなんてできるはずがない。
「いいよ。ボクを、キミのものにして?死ぬまでずーっと、ボクにとびきりの愛をちょうだいね」
約束だよ?そう言って不二は左手の小指を差し出す。白石がそれに自分の小指を絡めると、2人で約束の呪文を唱える。
ゆびきりげんまん、うそついたら、はりせんぼんのーます
絡まる指と指は、紅い糸で縛られていた。