爺やアーサー・ベルガモット。
その男はかつては少年だった。
アーサーはかつては農夫の息子。
ハンガリーの田舎で農作をやっていた。
たまに格闘技をやっては村一番になったり。
話を戻そう。アーサーが住んでいた地は、黒崎家が領主を務める地だ。
もちろん、リンの祖父母とも面識がある。
ある日、黒崎家が主に信仰していた宗教と対立する宗教団体がアーサーたちが住んでいる地を襲う。
次々と母、父、妹、隣人たちが血まみれになり倒れた。
アーサーはクローゼットに隠れ、その様子を見るしかなかった。
火災の狼煙があがる中、途方に暮れていたアーサーは神の声を聞く。
「黒崎家を救え。そこに汝の主はいる。」
一方その頃、地は蹂躙し民はクーデターを起こす。対抗していた宗教団体に地を襲われ、黒崎家の当主は困り果てていた。
そこに神の声を伝う少年が現れる。
「オルレアン様、貴方様がこの地を救う。必ず勝ちます。」
黒崎家当主、黒崎オルレアンはアーサー・灰崎・ベルガモットに地の運命を託した。
アーサーは電光石火の如く、敵陣へと突撃し次々となぎ倒す。
対抗していた領主が持つ民たちはアーサーに呼応し、聖地ラプュセルを目指す。
あふれる光、天使の祝福。教会の鐘はアーサーを祝福した。
後に、黒崎家に仕える灰崎家の娘と結婚した。
しかし、息子が生まれる直前に黒崎家の領主をかばい死んだ。
そしてアーサー・灰崎・ベルガモットが誕生。
幼少期から執事として教育を受け、学業も武道も両立し完璧な人生を歩んでいた。
しかし、何か物足りない。
30代後半だろうか。黒崎家の娘、黒崎エリザが娘のリンを産む。
アーサーはリンの専属として命じられ、教育係も兼任することになった。
もちろん、子育ては初めての経験だ。
かつてエリザの教育係から聞いていた話をもとに、奮闘する。
しかし、リンは全く違った。
活動的なリンの父親に似てしまったのだろうか。
とても活発で天真爛漫。
そんなリンを懸命に育てた結果、純粋で可憐な少女へと育った。
現在、様々な事情で両親とは別居し、アーサーと共に暮らしているが
「くーくー」
「お嬢様、ソファで寝てはいけませんよ。風邪を引いてしまいます。」
「ん~」
猫のように駄々をこねるリン。
やはり子供から変わらないと、爺やは笑みを浮かべた。