約束の場所恐らくこの景色をヒトは美しいと呼ぶのだろう。
なのにボクの心は1ミリも動かない。
空があって、花が咲いている。
その情報が視覚から入ってくる、ただそれだけ。
花も手入れされたものでは無く、街中でも見かける雑草と呼ばれるものだ。
「おにーさん!」
「……何?」
「はいっ!」
「……。」
差し出された花を受け取る。
この辺りに腐るほどある花だ。
手渡された花を手にキミに手を引かれ歩く。
「わぁ〜!キレイ!」
「……。」
ちょうど花が群生してる真ん中辺りだ。
キミは服が汚れるのも気にせずその場で仰向けに寝転がる。
キミの顔が花に埋もれる。
キミの横に腰を降ろし、手にある花をクルクルと回して眺める。
沢山のこの花がキミの下敷きになっているというのにキミは嬉しそうに笑っている。
キミの考えは理解し難い。
「おにーさん、ありがとー!」
「……何が?」
「こんなに綺麗な場所連れて来てくれて!」
「……連れてきてくれたのはキミだよ。」
「え?おにーさんのバイクで来たよ?」
「……キミがが居なかったら降りてなかったし、ここまで歩いてない。」
「それもそっかw」
キミはそう声を出して笑う。
そう、ボクにはこの景色は特別には感じなかったし、キミが降りたいと言わなければ通り過ぎていただけだ。
花に埋もれるキミの頬にそっと触れる。
「……楽しい?」
「うん!」
「……そう。」
「おにーさんも楽しい?」
「……うん。」
手に頬を擦り寄せるキミに少し口角が上がる。
「あっ!そうだ!」
「……どうしたの?」
キミが急に起き上がる。
「四つ葉のクローバーあるかな?」
「……あるかもね。」
「探そ〜♪」
「……見つけてどうするの?」
「どうしようwおにーさんも探して!」
「……わかった。」
2人でしゃがんで足元の草を眺める。
「あった?」
「……無い。」
こんなことをする意味が分からない。
なのにこの時間がずっと続けばいいと思ってしまう。
キミと一緒なら、もう少しこのつまらない世界に居たいと思う。
だからどうかもう少し、キミにこの世界に居て欲しい。
だからどうかこれ以上、キミから奪わないで欲しい。
その為なら何だってしよう。
ボクが出来ることなら何だってしよう。
「……また来年もここに来ようか?」
「うんっ!」