だから、おやすみ。❖ ❖ ❖ ❖ ❖
まだ小さな子供だった頃、僕はよく体を壊しては母さんを困らせていた。
体質のせいか少しの不調でもすぐに熱を出して、ブランケットに包まっては無性に襲いくる寂しさに震えながら眠る事が多かった。
そんな時、母さんはきまってミルク粥とホットレモネードを作ってくれていた。
やわらかなミルクの香りに目を覚ます僕を見て、母さんはブランケットごとふわりと抱き上げると、大きな手の平で僕の額を優しく撫でてくれるのだ。
『パスト、私の愛おしい子。寂しい事はなにもないわ。母さんがずっと、傍で見守っているから…』
撫でてくれる手の平の冷たさと、あたたかな母さんの声が心にじんわりと沁み込んで、幼い僕はそのまま深い眠りに就いた。
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