恥ずかしいの初心者幼い頃から舞台に立ってきて、無縁だったものがある。
緊張やプレッシャー、それと羞恥心。
本番で新しいことをやろうとしたときも、そして失敗したときも、楽しさや達成感はあれどそれらの感情はなかった。
だから、この感情に名前をつけることができない。
〈恥ずかしいの初心者〉
──やらかした。
自室のソファに倒れ込むようにしてうつ伏せになったフミは、クッションに顔を沈めながら自責の念に駆られる。
あんな失敗をするのは、今日日初めてだ。
目を閉じて思い返されるのは、玉坂座での今日の稽古の様子。稽古は立ち稽古の段階に入り、フミともう一人、カイとのペアダンスの合わせがあった。
***
左手を差し出され、自分の右手がそれに応える。腰に手を回され、曲が始まると同時に導かれるように引き寄せられた。軽いステップを繰り返し、最後に顔を上げ見つめ合う──。
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