色欲うさぎと暴君 「さて、と」
冷蔵庫に入っている料理たちをぐるりと見回す。保管状況に問題が無い事をチェックしてから扉を閉めた。
ひんやりとした空気を頬に受けながら一人呟いた言葉に特に意味は無い。
しいて言うならば、自分への発破? ──どちらにしても今日の俺はもてなす側なので、気合は十分だ。
それなりに広いシステムキッチンでくるりと体を反転させ、リビングを抜けて寝室へと向かう。
今日は一年の中でもかなり特別な日。そんでもって主役はどうせ起きているのに、律儀にも寝たフリをしているのだろうから、起こしにいかねばならない。
自然と早足になっているのか、パタパタとスリッパの音を軽快に響かせてしまう辺り、俺も結構この日を楽しみにしてはいたのだけれど。
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