フロマティがお茶会する話 子どもの頃から食べることには無頓着であった。好きな食べ物は?と聞かれても上手く答えることができなかったし、アフタヌーンティーのおやつも、パーティーのご馳走も、あまり喜ばなかった記憶がある。必要最低限生きるために空腹を満たせればなんでもよかったし、食べる時間よりも眠る時間の方が安らぎを覚えることが多かった。悪夢を見ないで寝られた日の幸福感ほど私を満たすものはない。
そう言う私に反して、フロリアンはこれでもかと言うほどいろんなものを食べた。朝食に出る焼きたてのロールパンや目玉焼き、昼食のベーコンレタスサンドイッチにカルボナーラ、おやつの時間に出るバタースコッチやジャムサンドクッキー、夕食で振る舞われる分厚いソースステーキ……。苦手なものは特にないらしく、彼は食事の席で何が出ても嬉しそうに顔を綻ばせて口に運んだ。甘いものからしょっぱいもの、辛いものもスパイシーなものもなんでも食べる。彼は私とは違い、食べることが好きなようだった。
4730