わんにゃん🩸10「ゆうじ、両手に花だな!」
俺が知っている言葉を使うと、猫もゆうじも笑い出した。俺、おかしい事言ったのか。
「オニイチャンはお花みたいなもんだもんな」
「俺が花なら、ゆうじは太陽みたいだ」
ゆうじは優しくてあったかい。
ゆうじは笑って俺の手をぎゅっと握ってくれた。猫はもの凄く微妙な表情をして、恥ずかしい奴らだな、と零していた。
カフェに入ると中は人間の女ばかりだった。俺達が店に入ると視線が集まって来るのを感じる。好意の匂いは優しいから好きだ。自然と揺れる尻尾と耳を寝かせているとゆうじが手を引いた。
「おま、誰に尻尾振ってんの」
「みんな優しいぞ」
「ふうん、女の子の方がいいんだ?優しいしかわいいもんな」
「うん、でも俺はゆうじが一番好きだ!」
俺が声を張り上げると、猫がゆうじを小突いた。
「犬にこんな所で変なことを言わせるな」
「ごめん、今のは俺が悪いわ……」
席に通されるとゆうじがメニューを見せてくれて、何でも好きなものを食べろと言った。けれど俺はよく分からない。
猫は分かるのか、しばらくメニューとにらめっこした後、写真にある一番大きなパフォーマンスにした。フルーツがたくさん乗っているやつだ。でも俺はふわふわの、今朝ゆうじが作ってくれたみたいなパンケーキも気になる。クリームが乗ってる。フルーツが乗っているのもある。俺はこれにしよう。
「オニイチャンがパンケーキで、アニキがパフェね。俺普通に腹減ったからトマトパスタにしよ〜すみませーん!あ、コーヒーとか飲む?」
「「ミルクで」」
「俺ジンジャーエールにしよ〜」
しばらくすると注文したものがテーブルに並んで賑やかになる。猫と揃ってスイーツ(と言うらしい!)を口に運ぶと途端に口の中が幸せな気分になる。ん〜!と唸ると、ゆうじは「やっぱり甘いの好きか〜五条先生言ってらんねえな」と笑う。
ゆうじが食べてるいるものも気になる。赤いパスタだ。いつかゆうじが作ってくれたものに似ている。
チラチラ見ていると、ゆうじが一口食べる?とフォークに巻いたパスタを食べさせてくれた。とまとの酸味と甘味が美味い。
もぐもぐしていると猫も口を尖らせたあと、ゆうじの方を向いて何も言わずに口を開けた。ゆうじが苦笑しつつ猫にも一口与える。
「お前らのも一口くれよ」
俺はゆうじの真似をしてパンケーキを一口分フォークに刺してゆうじにあげた。あーんと大きい口を開けた顔がかわいい。ゆうじがパクリと食べる。先程からそれぞれが食べる度にヒソヒソ声と歓声が聴こえるのだが、やっぱり俺は何か変なことをしているのだろうか。
「ふわっふわだな!うま!パフェは?どんな感じ?」
「フルーツパフェだからな色々乗ってるぞ」
「ん〜パイナップルがいいな、パイナップルちょーだいよ」
今度は猫に向かってゆうじが口を開けた。猫はヤレヤレと言いたげな顔でパイナップルとクリームをスプーンに乗せてゆうじに食べさせてやる。ゆうじは猫にはたまにわがままを言ったりする。猫は下の兄弟にするみたいに嬉しそうに世話を焼くのだ。
俺は二人が仲良しだと二人とも優しい匂いがするから嬉しい。
甘〜と笑うゆうじの口の端にクリームがついている。猫とゆうじは隣りに座っていたので、猫がすかさず口の端のクリームを舐めとった。また歓声が上がる。変なことをしているのは俺じゃなかったみたいだ。
「ちょ!それは…っ外では、そういうのやめろって」
「そういうのとは?」
ゆうじが真っ赤になっているのに猫がニヤニヤと意地悪く笑う。顔はそんな感じだが、二人とも好意の匂いがするからまあいいのか。
「過度なスキンシップ禁止!」
「なぜ、これはデートと言うんじゃないのか?恋人がするやつ」
「うっ…まあそ〜だけどお〜一応男同士だし…お前ら目立つし」
「犬とはずっと手を繋いでいたのに」
猫がちょっとヤキモチみたいなことを言っているが、寂しいの匂いだから、ずっと一人だけ手を繋げなくて寂しかったみたいだ。
「わかったよ、帰りはアニキとも手繋いで帰るから」
帰り道はゆうじを真ん中に三人で手を繋いで帰った。夕飯の買い出しもしたので俺と猫が手分けして買い物袋を持って。
「ゆうじ、デートとはなんだ?」
「こうやって好きな人とお出かけする事だよ」
「そうか!じゃあまた明日もお出かけをしよう!」
「明日は俺高専行く日だからお前らはお留守番」
「お留守番は嫌いだ寂しい」
「夜帰ってくるからな」
「……わかった…良い子にしているから、またアレしたい」
「なんっえっちだなあ…もう…」
「犬も本番、するのか?」
「」
本番、本番とは?猫がやっていたやつか!アレは…痛いのか…でも猫が凄かったって言ってたから…俺もやりたい……。
「本番って、お前……別に抜き合いっこでも俺は」
「やりたい!俺も、ゆうじに突っこもが!」
また変なことを言いかけたのか、ゆうじの手に口を押さえられた。
「だから、ここ外!外でこういう会話しねえの!」
ゆうじの顔が近くて嬉しい俺は尻尾を振ってベロリとゆうじの掌を舐める。ひゃっとかわいい声を上げて後退るゆうじを猫がどっしりと抱き止めた。
「すぐ暗くなるぞ。俺は大丈夫だがお前達は危ないだろう、早く帰るぞ」
ゆうじがくすぐったそうに笑う。俺たちと手を繋ぎ直して、デート出来て良かったと呟いた。ちょっとだけ寂しいの匂いがした。