わんにゃん🩸13ペットカメラなるものを設置してみた。
出張中でもあいつらの様子が分かるのはいい。スマホで見れるし。すごく便利。
今回は一泊だけの予定だったが、早速スマホのアプリを立ち上げる。時刻は丁度夜9時だ。ちゃんと飯食ったかな。
リビングのテレビ横に設置したカメラはぐりんと部屋を見渡す。アニキが定位置のソファで寝そべっている。ブランケットを被っているが生脚をベロンとだして、暑いのか寒いのか分からない。肉付きのいい美味そうな脚だ。オニイチャンはキッチンの方に耳が見えるから洗い物中かもしれない。言ったことはアニキよりもやってくれる。甘えん坊なところはむしろ可愛いくらいだ。
オニイチャンが洗い物を終えてリビングに入って来た。テレビのリモコンを持ってアニキの体にピッタリとくっついた。
本当に甘えん坊だ。ブランケットに頭からすっぽりくるまったアニキにスリスリと頭を擦り付け狭いソファの座面に自分も乗り上げようとしている。アニキの尻尾が不快そうに揺れる。ぺしりとアニキに手を叩かれてオニイチャンの尻尾は垂れ、泣きそうだった。ティッシュに手を伸ばしかけたのをアニキが制し、テレビを着け、自分はソファに寝たままオニイチャンの頭をヨシヨシと撫でて抱き締めた。
オニイチャンはそれで落ち着き、且つテレビに釘付けだ。
俺はしばらくそんな2人を眺めていた。なんだろう。癒される。俺はあいつらをペットとは思ってない。最初こそ、ペットかな?とは思ったけど、今はちょっと手のかかる恋人兼家族だと位置づけている。でもあの耳と尻尾は触ったたり眺めていたりすると本当に犬や猫のような癒し効果がある。
ばち
アニキと目が合った。
バレた、と思った。
「悠仁、悠仁だな?カメラを動かしているんだろ?」
俺はアプリのマイクをONにする。
『バレちゃった』
オニイチャンが尻尾振って近づいてきた。近付きすぎだ。真っ黒だ。
『ちょ、見えないちょっと離れて』
「ゆうじっゆうじは?」
『ここだよ』
「見えない……」
『声だけな』
オニイチャンはションボリと文字が浮かびそうなくらい落ち込んでいる。早く撫で撫でしてやりいな。
『明日には帰るから、もうちょい我慢してな?』
「明日の、朝?」
『夜だよ』
「ゆうじは出かけてばかりだ」
『お仕事なんだもん』
「怪我、してないないだろうな?」
アニキはソファに座ったままたしたしと尻尾を振る。
『してねえよ、今回は全然無問題!』
「ならいい。土産は笹かまぼこだな」
『まあその通り仙台なんだけどさ……かまぼこね』
アニキはなんであんなに偉そうなのか。本当に、足して2で割ったら丁度いいのに。ん?足して1にすると元通り?あれ?
『晩飯何食べた?』
「猫が焼き魚と言ったからほっけと〜味噌汁と〜おひたしと〜かぼちゃの煮付け!ゆうじに教えて貰ったやつ」
『オニイチャンレパートリーすげえな、でもオニイチャンは肉が食いたいだろ?よっしゃ牛タン買っててやるよ』
「牛タン!」
オニイチャンがカメラに抱きついたせいで再び真っ黒になる。これくらい話せば大人しく眠ってくれるだろう。俺は仲良くな、と言って通話とカメラを切った。
暗転。
俺は約束通り笹かまぼこと冷凍牛タンを帰り際に買って新幹線に乗り帰路についた。
今は亡き恩師が請け負っていた案件が丸ごと俺に来て(それでも優しい大人達が一級術師達に仕事を割り振ってくれてるけど)金が稼ぎ放題だった。そりゃあんなワイシャツの幾つでも買えちゃうわってくらい。ただ、あんまり使い道も無いから、東京の復興とか呪術界で足りないところに回したりしている。それでも一人で生きていくには多くて。
だから一軒家であの二人を住まわせてても俺の懐には全くダメージはない。不便なのは高専からちょっと遠いこと。免許を取れる年齢になったら絶対車を買おう。
ドライブか、ドライブもいいな。あいつらと。
帰宅するとオニイチャンが飯を作って待っていてくれた。相変わらず玄関での出迎えはお祭りで。アニキは俺の腹にひっついて満足するまで離してくれない。あんなに偉そうなのに本当は寂しいのだ。オニイチャンの寝た耳を両手でグリグリと撫でてやる。満足そうな笑顔に俺も嬉しくなる。
そんで飯を食って、お土産を広げて、いつもみたいに3人仲良く眠りについたんだ。