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    1852m海里

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    1852m海里

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    夏のせい浦「主さんのせいだよ。」

    暑い。暑すぎる。ここ数日続いている異常気象のせいで全身が溶けてしまいそうだ。本丸の皆はこの暑さの中でも内番に励んでくれている。ありがたい限りです、本当に。中でもより元気なのが…。浦「あ、主さーん!」審「浦島!元気だね〜…こんな暑いのに。」浦「確かに暑くてしんどくなることはあるけれど…でもさ!夏って楽しいこともいっぱいあるんだよ!例えば…。」彼はいつどんな時でも笑顔を絶やさない。このような猛暑でも彼は全く気にする様子が無く、私に笑顔と明るい気持ちを届けてくれる。浦「主さん〜?聞いてる〜?」審「あ、ごめんごめん。」浦「もしかして暑い?大丈夫?」そう言って彼は私に近付き、彼の額を私の額に引っ付けた。彼の顔がすぐ目の前にある。長いまつ毛、新芽のように鮮やかで深い目の色、あと数センチで唇まで当たってしまいそうだ。鼓動が早くなるのが分かる。こんな距離で彼の顔を見ることなどない。浦「少し熱い気がするなあ…軽い熱中症かもしれないね…部屋に戻ろう?俺、水持ってくるからさ、一緒に行こう。」そう言って彼は私の手を引いて、歩くペースを合わせてくれた。浦島、意外と手大きいんだな…、童顔なのに男らしくて逞しい手。浦「夏のせいなら俺やっつけらんないやー!って、えへへ…。」こんな風にまじまじと見ることは普段あまりないので、変に意識してしまってドキドキしてしまい、思わず顔が熱くなる。審「浦島のせいだよ…。」浦「ん?どうかした?」審「…!なんでもないよ!」浦「ふーん?そっか!」あー、恥ずかしい…。

    涼しくて心地いい。でも、温かい。良い匂い。…ん?私何してたっけ…。確か浦島に連れられて部屋に戻って、水をもらって…それから…。浦「あ、起きた?おはよう、主さん。」審「…浦島?」浦「へへ、まだ寝ぼけてるみたいだね。主さん、ずっと日差しが強い部屋にいたから熱中症になりかけてたんだよ、俺の部屋は今の時間涼しいからここでお昼寝させてあげてたんだ。俺がうちわで仰いで。」審「そうだったんだ…ありがとう浦島。少しスッキリしたよ。ところで…近くない?」浦「あはは、それは俺が言いたいよー!寝ぼけた主さんが俺に抱きついてきたんだよ?」審「え、あ、ご、ごめん!!!」浦「えー!!!」衝撃の事実と羞恥心に負けた私は急いで彼から離れようとすると、驚いた彼が私を素早く抱き寄せた。浦「離れちゃうの…?」やっと冷めた熱が、この一瞬、また上がった気がした。

    審「何か、夏っぽいことしたいな〜…。」浦「じゃあさっ!みんなで花火しない!?!?」審「花火?」浦「そう!さっき万屋に行ったらさ、花火でらっくす…?っていうのを見つけてさ!みんなでやったらきっと楽しいと思うんだ!主さんも一緒にやろ?」そういえば今年まだ花火してないなあ…。浦「夜だから熱中症にもならないよ!」確かに。審「じゃあみんなに伝えておくよ。今日の夜ね。」浦「ぃやったーっ!!!」今夜花火をすると伝えて回ると、遊ぶのが大好きな皆は喜んで参加してくれた。ある者ははっぴを着て、ある者は屋台の準備をして、ある者は音頭の練習をするなどして夜を待った。

    夜になり、各々用意したものを催した。浦「あ、線香花火あるよ!主さん、一緒にやろう!」審「先に落ちた方が負けね。」浦「えー?じゃあ負けた方が勝った方の言うこと一つ聞くって事にしよ!」審「負けないよー?」浦「俺だって!」そうして二人で線香花火対決が始まった。彼は頑張って落とすまいと、必死に耐えている。その様子が彼の表情にまで出ており、私は思わず笑ってしまった。その衝動が線香花火に伝わってしまったのか、思っていたよりも早くに私のが先に落ちてしまった。審「あ。」浦「やったー!俺の勝ちだね!」審「負けちゃったなあ…。」浦「じゃあ、俺の言うことなんでも一つ聞いてくれるんだよね?」審「無理難題はやめてね…?」浦「無茶は言わないよー!俺が主さんに聞いてほしいことはね…。」そういうと彼は少し黙った後、連れて行きたいところがあるからそこについてから話すとのことだったので、彼に着いて行く事にした。

    浦「ここだよ。」案内されたのは、本丸の裏側にある海岸だった。そこには、普段見られない夜の海岸の風景が広がっていた。数えきれないほどに瞬いている星々、月の光に反射してキラキラと輝く水面、今夜は満月だったため強い月明かりが私たちのことも照らしてくれていた。静かな夜の海岸に、波の音だけが響いていた。審「綺麗…。」夏の夜の海はこんなにも美しい光景が見られたのか。浦「この景色を、主さんと一緒に見たかったんだ。」審「私、こんな綺麗な景色見たことない、連れてきてくれてありがとう、浦島!」浦「…!」彼は驚いたような顔をして、顔を一瞬背けた。浦「あ、あのさっ…!勝負のやつなんだけど…。」審「あ、そうだったね!聞いてほしいことって何…?」すると彼は波のすぐそばまで歩いて行き、海のずっと向こうに向かって叫んだ。浦「来年の夏も、主さんと一緒にここに来たーーーいっ!!!」そう叫んだ彼は、振り返って私に満足げに笑った。彼のその表情は、月の光に負けないほど輝いていた。浦「海に向かって叫ぶのって気持ちいいね!さて、そろそろ本丸に戻ろっか!兄ちゃんたちも心配するかもしれないし!」審「あ、待って!」私は、そう言って戻ろうとする彼を引き留めた。浦「主さん…?」審「私、まだ返事してないよ。」驚いて立ち尽くす彼を放って、私は、先ほどの彼と同じように海に向かって叫んだ。審「私も、来年も浦島と一緒にここに来たーーーいっ!!!」私は振り返り、満足げに笑って彼の顔を見る。月明かりに照らされてよく見えた彼の顔は、ほんのり赤く染まって見えた。審「もしかして暑い?」わざとからかうと彼は照れくさそうに答えた。浦「主さんのせいだよ。」
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