僕には小さい頃から大切な人がそばにいた。僕と容姿が似ていて背が高くて垂れ目なあの人。
僕が赤ん坊の頃からおぼつかない意識の中でそばにいたあの人。どこの誰かなんて分からない。でも小さい頃から一緒にいたあの人は僕が小学生になっても姿形が変わらない。
あの人は僕をちょっと離れたところで見ていてずっとどこにいても僕を見ている。
物心ついてから親に兄弟がいるのかと尋ねてもいないと返される。
じゃああの人は誰?と聞くと空気が凍りつく。そうか、あの人は僕以外見えないんだと幼いながら思った。あの人は僕をずっと見ている、僕が見えることもとっくの昔に気づいているだろう。
だからみんなに馴染むように親の前や外にいる時は見えない振りを続けた。それであの人も別に何もしてこないから大丈夫だろう。
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