疾風と成りて2(冒頭部)ヒビ割れた道路、植物が巻き付き窓ガラスの無い建物。
人の気配のない街を、私は花束を持って1人で歩いていた。
誰かに愛を捧げるためでも、感謝の気持ちを伝えるためでもない花束は、花本来の華やかさを控え目にした構成で作られていた。
「全部燃えてしまいましたか」
目の前には、大きな建物が燃えた跡地が広がっていた。
私はその跡地の中心まで、歩みを進める。
パキパキと歩みを進めるごとに、燃えきれなかった残骸やガラスが、踏まれて音を鳴らしていた。
風に混ざって匂う焦げた匂いが、ここであった惨劇からまだ時間が経っていないことを伝える。
中心まで辿り着くと、私は花束をその場に置き、目を閉じ手を合わせた。
仲間や大切な人が、死んだわけではない。
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