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    fujidanaa

    主にワンドロ提出小話を置いておきます。デュエスメイン

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    fujidanaa

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    ワンドロ提出小話。マブ……いっぱい食べていっぱい笑ってください

     エースとデュースが監督生からお茶に呼ばれたのは、残暑厳しい昼下りの休日だった。正確には貰い物でおやつを作るから一緒に食べよう、という提案だったのだが、監督生が故郷で食べていた味と聞き、美味しいものと楽しく騒ぐことが大好きな二人は一もニもなく飛びついたのだった。

    「もう疲れたんだけど……」
    「口じゃなくて手を動かせ、いつまで経っても終わらないぞ」
     真っ赤な果肉にスプーンを突き刺しながらぼやくエースをデュースがたしなめる。監督生の貰い物とは、クロウリー学園長からのお裾分けだという一抱えもあろう大きなスイカだった。酷暑の中オンボロ寮に到着した二人は、出迎えた監督生にいきなりだけど、とスイカの下準備を任せられたのである。お菓子作りは本当に重労働だ、副寮長のがっしりした腕を思い出す。
     三十分ほど格闘した結果、スイカは外側を残してきれいにくり抜かれていた。果肉はひとくち大に丸く整えられ、まるで赤いビー玉を積み上げたようだ。

    「一つくらい食ってもバレねえって!」
    「い、良いのか、監督生に怒られないか?」

     エースは取り上げた真っ赤な球体にかじりついた。さりさりした塊がつぶれ、さっぱりした甘さの果汁が口内にあふれる。共犯、と口にスイカの玉を突っ込まれたデュースは目を白黒させていたが、部活終わりに食べたくなる味だな! とすぐに顔を綻ばせた。

    「あっ、お前らつまみ食いはダメなんだゾ!」
     二人を目ざとく見つけて駆け寄るグリムに、君もみかん食べたでしょ、と笑いながら監督生がやってきた。持っているトレーの上には蓋の開いたフルーツの缶詰が数個、そして透明な液体の入った瓶が汗をかきながら載っている。
     二人ともお疲れさま、ありがとう。監督生はデュースが持っていたスイカの皮の器を受け取ると、くり抜いた果肉と缶詰の中身を全て中に入れた。赤に黄色、白。色とりどりのフルーツにその場にいた全員の顔が輝く。最後に瓶の液体を注ぎいれると、小さな気泡がいっぱいに立ち上り、部屋は歓声に包まれた。

    「わぁっ、キラキラしてて美味そうなんだゾ!」
    「すごくきれいだ、ダイヤモンド先輩がマジカメに上げそうな見栄えだな……!」
    「監督生、これなんて名前?」

     興味津々なエースに、監督生はフルーツポンチという名前を教えてくれた。小さいころ、こんな暑い日に家族が作ってくれたんだ、と微笑む。人数分の小さなボウルに取り分けると、皆が一斉にスプーンを持った。

    「美味〜い! 甘くて冷たくて最高!」
    「最後に入れていた瓶の中、ラムネだったのか!」
    「口ん中がパチパチする! にゃはは、楽しいんだゾ!」

     大はしゃぎする二人と一匹に、監督生も声をあげて笑う。楽しい時間は日がとっぷりと落ち、寮の同室仲間から安否確認の電話が入るまで続いた。

     エースとデュースは連れ立って自室までの廊下を歩く。監督生からお土産として持たされた、残りのスイカとラムネの瓶を寮の冷蔵庫に片付けてきたのだ。他の寮生と出くわしていたら味見をされてしまっていただろうが、運が良かったのか誰ともすれ違わなかった。

    「フルーツポンチ、美味かった〜!」
    「冷たくて見ためも味も良かった、今の時期にぴったりのスイーツだな」
    「流石に毎回スイカ削るのは大変だけど、缶詰だけならオレたちでも作れんじゃね?」
    「あれなら何でもない日のパーティーにも出せそうだ」
     次のお茶会までに先輩方に掛け合ってみるか、と呟くデュースの肩にエースの手が乗せられる。あ、と気づいた時、もう彼はデュースから体を離していた。頬に体温と柔らかな感触がほのかに残っており、一拍遅れて顔に血がのぼる。

    「せっかく監督生が教えてくれたんだ。……あの味、まだ秘密にしておかね?」

     オレと、お前だけの。

     冷蔵庫に仕舞われた甘いスイカと爽やかなラムネは、すぐに二人だけの胃袋に収まってしまうだろう。監督生の思い出のスイーツがハーツラビュルのパーティーに供される日まで、まだしばらくかかりそうだった。
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    fujidanaa

    DONEワンドロ提出小話。マーキングの話 匂いは注意しないと周りに迷惑だ、とデュースは考える。誰かがうっかり整髪料でも使いすぎたのか、無人の廊下に匂いが残っている日は朝から憂鬱だ。そういえばミドル時代につるんでいた悪い先輩たちの中には、香水の匂いが強くてあまり近づきたくなかった人がいたのを思い出す。
     だから、デュースは香水の類が苦手だった。その意識が変わったのは、エースと付き合い始めてからだ。

            ※

     授業が終わって教室を出たとき、デュースは隣を歩くエースの、ほのかな甘い匂いに気付いた。彼は香水の使い方がとても上手い。側にいても不快にならない、むしろもっと近づきたくなる。そんなことを思うのはこいつだけだと、少し前に知った。

    「今日のエースはレモンの匂いがする」
    「わかる? 新しいの開けたんだ、どう?」
    「良いと思う。……お前はいつも違う香水を使ってるな」
    「ちっちゃいサイズを買うようにして、色々試したいんだよね。もしかしたら、もっとオレに合うやつが見つかるかもしれないし」

     なるほど、自分のシンボルとして香りをつけることがあるのか。デュースが得た新たな知識は、爽やかな柑橘の匂いがした。

     温室に用が 1581

    fujidanaa

    DONEワンドロ提出小話。どどめ色片想い 休日最終日の夕方、エースはデュースが運転するマジカルホイールの後ろに乗せられ、病院への道を走っていた。振り落とされないよう、ハンドルを握るデュースの腹の前で交差されている腕は微かに震えている。大丈夫だから、とかけられた声と腕に置かれた温かい手に、エースは小さく頷いた。

            ※

    「……うん、分かった。許可もらってすぐにそっち行く。じゃあまた後で」

     シャワールームから自室に戻ったデュースが見つけたのは、彼のベッドの縁に腰掛けたまま電話をしているエースの姿だった。いつもの悪戯っ子な笑みをすっかり消し、青を通り越して真っ白な顔で相槌を打っている。通話が終わったのを確認し、恐る恐る声をかけた。

    「エース、どうした。何かあったのか」
    「……兄貴からの電話だったんだけど、ついさっき父さんが事故にあって、病院に担ぎ込まれたんだって。今から寮長に外出許可もらって病院行ってくる」
    「えっ!?……病院って、薔薇の王国のだよな。場所は分かるか?」
    「うん、今聞いたから……って何で聞くの」
    「僕も一緒に行く。今からだと交通機関は乗り換えで時間がかかる。マジホイを出すから乗っていけ」

      1676

    fujidanaa

    DONEワンドロ提出小話。二人きりのダンスはロマン 意識が浮上してエースは目を覚ました。枕元の時計は、彼が就寝してから二時間も経過していないことを示している。普段なら一度寝入ってしまうと朝まで起きないのだが、珍しく気分が高揚しているようだ。星送りの儀をあんな間近で見たのだから仕方ないか、と一人納得する。
     毎年恒例の星送り。今回はスターゲイザーとしてデュースとトレイが選出されたので、身内の応援とからかいを兼ねて会場を訪れたエースだったが、予想以上に美しい舞、そして天から降りしきる星の雨に見入ってしまった。あんなにたくさん星が落ちた儀式、今まで無かっただろう。目が冴えてしまったエースは、そっとベッドを抜け出すと部屋を後にした。

     夜も更けた寮内は人の気配はもちろん、物音一つない。エースは、昼間とは真逆の様相となった談話室の窓際に佇んでいた。漆黒の空を、流星の青白い尾が飾る。その色合いに、何故か昨日の主役が頭に浮かんだ。
     愚直に懸命に、自分のできる精一杯をこなし、そして仲間たちと奇跡を呼び込んだ男。汗を散らして特別な舞を奉納する姿は、悔しいが同性から見ても本当に美しく、彼が踊っている間は、星なんて意識にも無かったほど視線をくぎ付けにさ 1529

    fujidanaa

    DONEワンドロ提出小話。マブ……いっぱい食べていっぱい笑ってください エースとデュースが監督生からお茶に呼ばれたのは、残暑厳しい昼下りの休日だった。正確には貰い物でおやつを作るから一緒に食べよう、という提案だったのだが、監督生が故郷で食べていた味と聞き、美味しいものと楽しく騒ぐことが大好きな二人は一もニもなく飛びついたのだった。

    「もう疲れたんだけど……」
    「口じゃなくて手を動かせ、いつまで経っても終わらないぞ」
     真っ赤な果肉にスプーンを突き刺しながらぼやくエースをデュースがたしなめる。監督生の貰い物とは、クロウリー学園長からのお裾分けだという一抱えもあろう大きなスイカだった。酷暑の中オンボロ寮に到着した二人は、出迎えた監督生にいきなりだけど、とスイカの下準備を任せられたのである。お菓子作りは本当に重労働だ、副寮長のがっしりした腕を思い出す。
     三十分ほど格闘した結果、スイカは外側を残してきれいにくり抜かれていた。果肉はひとくち大に丸く整えられ、まるで赤いビー玉を積み上げたようだ。

    「一つくらい食ってもバレねえって!」
    「い、良いのか、監督生に怒られないか?」

     エースは取り上げた真っ赤な球体にかじりついた。さりさりした塊がつぶれ、さっぱりした 1661

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    DONEひら赤提出小話。踊る指先「おいデュース、耳の後ろどうしたの?」

     エースが自分の前の席で必死にノートをまとめる男に声をかけたのは、連続する魔法史の授業の合間休憩だった。ならば昼寝をして時間をつぶそう、と机の上に腕を組み、枕代わりにしたところで、前席のデュースの後頭部、正確には赤く染まった耳が見えたのだ。手を伸ばして耳の縁に触れた瞬間、イッテェ! と大声が教室内に響き渡った。デュースが目を吊り上げて振り返る。

    「何するんだ! 触るな!」
    「でかい声出すなよ! こっちがびっくりしたっての……あ、もしかして日焼け?」
    「そうだ。まさかこんな場所も焼けるなんて」

     デュースは自分の耳を守るように手でそっと覆った。一昨日開催された陸上部の記録会に参加した際、うっかり日焼け止めを塗り忘れたのだとぼやく。確かにその日は朝から一日中晴天が続いていた。そんな日に日焼け止めをつけないなんて考えられない、と嘆息するエースである。
    そもそもそんな日に外で運動なんかするなよ、熱中症になったらどうすんの。なんて心配は、彼にとって杞憂だろうから口に出さなかった。

    「だから耳に限らず全身こんがりしてんのね」
    「シャワーも痛く感じるか 1501

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