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    fujidanaa

    主にワンドロ提出小話を置いておきます。デュエスメイン

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    fujidanaa

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    ワンドロ提出小話。どどめ色片想い

     休日最終日の夕方、エースはデュースが運転するマジカルホイールの後ろに乗せられ、病院への道を走っていた。振り落とされないよう、ハンドルを握るデュースの腹の前で交差されている腕は微かに震えている。大丈夫だから、とかけられた声と腕に置かれた温かい手に、エースは小さく頷いた。

            ※

    「……うん、分かった。許可もらってすぐにそっち行く。じゃあまた後で」

     シャワールームから自室に戻ったデュースが見つけたのは、彼のベッドの縁に腰掛けたまま電話をしているエースの姿だった。いつもの悪戯っ子な笑みをすっかり消し、青を通り越して真っ白な顔で相槌を打っている。通話が終わったのを確認し、恐る恐る声をかけた。

    「エース、どうした。何かあったのか」
    「……兄貴からの電話だったんだけど、ついさっき父さんが事故にあって、病院に担ぎ込まれたんだって。今から寮長に外出許可もらって病院行ってくる」
    「えっ!?……病院って、薔薇の王国のだよな。場所は分かるか?」
    「うん、今聞いたから……って何で聞くの」
    「僕も一緒に行く。今からだと交通機関は乗り換えで時間がかかる。マジホイを出すから乗っていけ」

     初めは断ろうとしたエースだったが、マブの一大事だ、力を貸すぞ! と真顔で言われ、申し出に甘えることにした。外出許可をもらうため、急いでリドル寮長がいるであろう彼の自室に向かう。
     不安なとき、誰かが側にいてくれると安心する。それが想い人なら尚更だ。デュースと並んで廊下を走るエースは、隣に気付かれないようこっそりため息をついた。

    (こういうことしてくれちゃうから、諦めきれないんだよな……)

            ※

    「何だよこのオチ! 心配して損したわ!」
    「大事なくて良かったな。安心したよ」
    「まーね。けど兄貴も分かったならすぐに連絡しろっての……」

     果たして、病院に到着した二人を迎えたのは、和やかな笑みをたたえたエースの父親の姿だった。話を聞くと散歩中にすれ違った車が小石を弾き飛ばし、それが運悪く彼のこめかみを掠り、出血してしまったらしい。偶然目撃した通行人が救急車を呼んだため、あれよあれよという間に病院に運ばれ、また家族にも連絡がいったとのことだった。父親の怪我の処置はすでに終わっており、あと一時間もしないで退院できると知り、エースはほっと胸を撫でおろした。
     父親に退出の挨拶を告げ、二人は寮に戻ることにする。マジホイを駐めた駐車スペースに向かう道すがら、エースは口を開いた。

    「あの、今日はその……、ありがと。すげー助かった」
    「エースから“ありがとう”が聞けるなんて、明日は雨でも降るのか?」
    「〜っ、やっぱ言うんじゃなかった!」
    「冗談だ。気にしなくて良い、ダチを助けるのは当たり前だからな」

    (そうだよね。オレはお前のダチ、それより先には進めない)

            ※
     
     行きは不安も手伝い、デュースの腹に腕を回して体をくっつけていたけど、今はそんな気になれなかった。エースはマジホイの荷台部分を掴んで体を固定する。危ないから腕をこっちに回せ! と前方から声が飛んだが断固拒否した。

     お前のこと、好きだよ。諦めたくない。でも一生伝えないって決めてる。
     この気持ちは、優等生になりたいお前の邪魔になっちゃう。

     マジホイを運転するデュースは、先程より体感温度が下がっていると感じていた。しばらく考え、エースが自分にしがみついていないからだと思い至る。不安で押しつぶされそうに震える腕をなでたとき。彼を安心させたい、その一心だけではなかったことに今更気づいた。もっと自分を頼ってほしい。
     家族に心からの安堵の笑みを見せていたエースの横顔が脳裏を横切る。あの顔を向けられる彼の父親を羨ましく思ってしまった。

    (エースが一番に優先するのが、僕だけなら良いのに)

     初めて知る感情がどういう意味を成すのか、少年はまだ知らない。交差しない二人を乗せたマジホイは、とっぷりと更けた夜の真ん中を走り抜けていった。
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    fujidanaa

    DONEワンドロ提出小話。マーキングの話 匂いは注意しないと周りに迷惑だ、とデュースは考える。誰かがうっかり整髪料でも使いすぎたのか、無人の廊下に匂いが残っている日は朝から憂鬱だ。そういえばミドル時代につるんでいた悪い先輩たちの中には、香水の匂いが強くてあまり近づきたくなかった人がいたのを思い出す。
     だから、デュースは香水の類が苦手だった。その意識が変わったのは、エースと付き合い始めてからだ。

            ※

     授業が終わって教室を出たとき、デュースは隣を歩くエースの、ほのかな甘い匂いに気付いた。彼は香水の使い方がとても上手い。側にいても不快にならない、むしろもっと近づきたくなる。そんなことを思うのはこいつだけだと、少し前に知った。

    「今日のエースはレモンの匂いがする」
    「わかる? 新しいの開けたんだ、どう?」
    「良いと思う。……お前はいつも違う香水を使ってるな」
    「ちっちゃいサイズを買うようにして、色々試したいんだよね。もしかしたら、もっとオレに合うやつが見つかるかもしれないし」

     なるほど、自分のシンボルとして香りをつけることがあるのか。デュースが得た新たな知識は、爽やかな柑橘の匂いがした。

     温室に用が 1581

    fujidanaa

    DONEワンドロ提出小話。どどめ色片想い 休日最終日の夕方、エースはデュースが運転するマジカルホイールの後ろに乗せられ、病院への道を走っていた。振り落とされないよう、ハンドルを握るデュースの腹の前で交差されている腕は微かに震えている。大丈夫だから、とかけられた声と腕に置かれた温かい手に、エースは小さく頷いた。

            ※

    「……うん、分かった。許可もらってすぐにそっち行く。じゃあまた後で」

     シャワールームから自室に戻ったデュースが見つけたのは、彼のベッドの縁に腰掛けたまま電話をしているエースの姿だった。いつもの悪戯っ子な笑みをすっかり消し、青を通り越して真っ白な顔で相槌を打っている。通話が終わったのを確認し、恐る恐る声をかけた。

    「エース、どうした。何かあったのか」
    「……兄貴からの電話だったんだけど、ついさっき父さんが事故にあって、病院に担ぎ込まれたんだって。今から寮長に外出許可もらって病院行ってくる」
    「えっ!?……病院って、薔薇の王国のだよな。場所は分かるか?」
    「うん、今聞いたから……って何で聞くの」
    「僕も一緒に行く。今からだと交通機関は乗り換えで時間がかかる。マジホイを出すから乗っていけ」

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    fujidanaa

    DONEワンドロ提出小話。二人きりのダンスはロマン 意識が浮上してエースは目を覚ました。枕元の時計は、彼が就寝してから二時間も経過していないことを示している。普段なら一度寝入ってしまうと朝まで起きないのだが、珍しく気分が高揚しているようだ。星送りの儀をあんな間近で見たのだから仕方ないか、と一人納得する。
     毎年恒例の星送り。今回はスターゲイザーとしてデュースとトレイが選出されたので、身内の応援とからかいを兼ねて会場を訪れたエースだったが、予想以上に美しい舞、そして天から降りしきる星の雨に見入ってしまった。あんなにたくさん星が落ちた儀式、今まで無かっただろう。目が冴えてしまったエースは、そっとベッドを抜け出すと部屋を後にした。

     夜も更けた寮内は人の気配はもちろん、物音一つない。エースは、昼間とは真逆の様相となった談話室の窓際に佇んでいた。漆黒の空を、流星の青白い尾が飾る。その色合いに、何故か昨日の主役が頭に浮かんだ。
     愚直に懸命に、自分のできる精一杯をこなし、そして仲間たちと奇跡を呼び込んだ男。汗を散らして特別な舞を奉納する姿は、悔しいが同性から見ても本当に美しく、彼が踊っている間は、星なんて意識にも無かったほど視線をくぎ付けにさ 1529

    fujidanaa

    DONEワンドロ提出小話。マブ……いっぱい食べていっぱい笑ってください エースとデュースが監督生からお茶に呼ばれたのは、残暑厳しい昼下りの休日だった。正確には貰い物でおやつを作るから一緒に食べよう、という提案だったのだが、監督生が故郷で食べていた味と聞き、美味しいものと楽しく騒ぐことが大好きな二人は一もニもなく飛びついたのだった。

    「もう疲れたんだけど……」
    「口じゃなくて手を動かせ、いつまで経っても終わらないぞ」
     真っ赤な果肉にスプーンを突き刺しながらぼやくエースをデュースがたしなめる。監督生の貰い物とは、クロウリー学園長からのお裾分けだという一抱えもあろう大きなスイカだった。酷暑の中オンボロ寮に到着した二人は、出迎えた監督生にいきなりだけど、とスイカの下準備を任せられたのである。お菓子作りは本当に重労働だ、副寮長のがっしりした腕を思い出す。
     三十分ほど格闘した結果、スイカは外側を残してきれいにくり抜かれていた。果肉はひとくち大に丸く整えられ、まるで赤いビー玉を積み上げたようだ。

    「一つくらい食ってもバレねえって!」
    「い、良いのか、監督生に怒られないか?」

     エースは取り上げた真っ赤な球体にかじりついた。さりさりした塊がつぶれ、さっぱりした 1661

    fujidanaa

    DONEひら赤提出小話。踊る指先「おいデュース、耳の後ろどうしたの?」

     エースが自分の前の席で必死にノートをまとめる男に声をかけたのは、連続する魔法史の授業の合間休憩だった。ならば昼寝をして時間をつぶそう、と机の上に腕を組み、枕代わりにしたところで、前席のデュースの後頭部、正確には赤く染まった耳が見えたのだ。手を伸ばして耳の縁に触れた瞬間、イッテェ! と大声が教室内に響き渡った。デュースが目を吊り上げて振り返る。

    「何するんだ! 触るな!」
    「でかい声出すなよ! こっちがびっくりしたっての……あ、もしかして日焼け?」
    「そうだ。まさかこんな場所も焼けるなんて」

     デュースは自分の耳を守るように手でそっと覆った。一昨日開催された陸上部の記録会に参加した際、うっかり日焼け止めを塗り忘れたのだとぼやく。確かにその日は朝から一日中晴天が続いていた。そんな日に日焼け止めをつけないなんて考えられない、と嘆息するエースである。
    そもそもそんな日に外で運動なんかするなよ、熱中症になったらどうすんの。なんて心配は、彼にとって杞憂だろうから口に出さなかった。

    「だから耳に限らず全身こんがりしてんのね」
    「シャワーも痛く感じるか 1501

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