身長差ができてショックなキツネなんだか腹の底がゾワゾワする。
心臓のあたりもフワフワ。
足元はウキウキと軽く、思いきり地面を踏み切れば体はいつもの何倍も飛ぶかのよう。
まるで地球の六分の一の重力の月のように。
軽く速くどこまでも。
自分が速くなった分まわりが遅く見える。ブロックしようとするチームメイト達を軽々と飛び越え、赤い赤いリングに愛を込めて右手を叩き込む!
オレンジのボールは稲妻の勢いでゴールネットを揺らし、床へと落ちた。
キャーーー!
悲鳴があがる。
流川ファンクラブの女生徒達の歓声だ。
「絶好調ね」
昔馴染みの先輩マネージャーが満足げだ。横にいる同級生マネージャーは目がハートになっている。
流川はそれらすべてを聞き流し、体躯を屈め長い腕をのばして床を転々と弾むボールを片手で掴んだ。
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