👊🎲記憶喪失のやつ~「本当に、こういうことをしていたんですか?」
「おう」
男二人にゃ狭ェ湯船で俺に背を預けた天開は、照れと不安を覗かせた目で振り返る。張り付いた横髪を梳いてやりながら白々しく嘘を吐くさまに我ながら呆れた。顔を背け俯く彼に、嫌ならやめよかと問えば、髪と同じように真っ赤な耳をして小さく首を振る。
飛んでくるはずの10の小言もなく、なんてウブな。あれほど嫌悪している無垢な子供を誑かす悪い大人、その悪路を俺は平然と突っ切っていた。慣れたものだ、あんなにも石や草木に脚を取られていたというのに、今では自然と次の足の踏み場が浮かんで見えてくる。虚しい。
「……こんなに愛されているのに……早く思い出さなきゃいけないね」
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