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    jasmine_525ml

    @jasmine_525ml

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    jasmine_525ml

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    バドエン直後のファルの話です。

    #ファルの冒険譚

    ~砂糖味の傷跡は甘ったるい~ 視界が暗い。
    体の至る所から暖かい液体が漏れ出てる感覚がする。
    吐息混じりに肩で死にかけた息をする。
    ──いたい。
    いたい。・・・いたい。いたいよ。
    どうして?なんで?

    今自分がどんな顔をしているかすら分からない。
    ただ痛みが、体を蝕む感覚だけが、自分が生きているということを確認するための手段だった。
    目の前に映るのは巨大なサイクロプス。
    その大きな瞳には底知れぬ黒があるだけで、まるで引きずり込まれてしまいそうという恐怖心を煽る。
    軽い脳震盪を起こしながらボク、ファルは一旦死角に隠れる事に集中し、身を翻した。

    一か月前、ボクは共に旅路を歩んだ相棒と関係を絶った。
    ボクに課せられたとある使命を果たす為に共に歩んだ友だった、家族だった、兄弟だった。
    でも、ボクに課せられたそれは、世界を破滅へ追いやる為の工程だった。
    使命の真相をボクに伝えた相棒もまた、ボクの幻想の友達だった。
    ボクのツギハギの記憶が生み出した理想の姿で、ボクの思い込みで、無理やり旅に連れ出したという現実から目を逸らした結果の産物だった。
    全てが嘘で出来ていたボクの世界。
    自分すらも信じられなくなりそうになったボクは衝動に突き動かされ、相棒の姿を映していた剣に永遠のサヨウナラを告げた。
    一人で生きることを決意した。
    誰にも頼らない。
    誰も信じない。
    唯一信じるのは、自分の心だけ。

    今まで見ていた世界が、まるで淡いフィルターを外したような別の光景として映る。
    ウーに降り立った時以来に感じる独りぼっちの感覚。
    ただそんな感覚よりも、自分にまとわりつく絶望と憎しみの感情の方が遥かに上だった。
    案外一人で生きるのも悪くない。
    そう思いながら過ごす内に、徐々に自分が如何に一人で生きていけないちっぽけな生き物なのかということを自覚していく。

    最初に困ったのは食料だ。
    と言っても、ボクは食べなくても餓死はしない。
    自分を作った存在たちが不死身の体を持つからか、空腹になるということは無いようだった。
    初めはボクも、特にこれといった影響は無さそうに思っていた。
    そもそも相棒が居た時には食に困らなったので、極限まで何も食べないと自分の体にどのような事をもたらすか、なんて知る由もなかった。
    ・・・ただあの時に思い知ったよ。
    一人で旅をし始めて三日程経った時にそれは起こったのだ。
    「魔法が・・・使えない・・・?」

    そう、魔法を発動できなくなった。
    更に追い打ちをかけるように、ボクの体は日を追う事にどんどん不調という名の変化を患う。
    翼を変形させて羽織っているケープ、お菓子で作成した衣類が色を変えていく。
    白い羽毛と服、そしてズボンは黒く染まっていき、ケープを彩る水色のラインは赤くなっていく。
    「なんなんだよ、これ・・・」
    この変色工程には既視感があった。
    暴走している時の自分と同じ色。
    体が本能的に「危険だ」と警告しているという事だ。

    体が重くなる感覚に襲われる。
    息が上がっていく。
    呼吸が浅くなる。
    肩を両の手で抱き寄せ震えた。
    自暴自棄に陥りそうになった。
    初めての感覚、不快で、苦しくて、体温が少しずつ奪われるような、まるで遅効性の毒を喰らったような気持ちの悪い感覚。

    「・・・ボクこのまま死んじゃうのかな」
    ここで自分の小さな小さな命の灯火が消えるなんてありえない。
    ありえないけど、そう思わざるおえない。
    信じられないくらいに追い込まれ圧縮されていく心臓に動悸が止まらない。
    ───ミシッ。
    無機質な音が頭の中に響く。
    まるでガラスの陶器がひび割れるような冷たい音が。
    ふと、自分の右頬を温かい何かが伝って地面に零れた。
    それは金色の液体、スパンコールのような煌めきを含んだベッタリとした液体。
    あぁ。
    ボクの、血だ。
    ・・・さっきの無機質な音の正体に気づいた。
    そっと自分の右頬に触れる。
    案の定か、右頬には温かい液体が溢れ出している深い亀裂が刻まれていた。
    あまりにも食事を取らなかったからか、自分の中で魔法やその他のエネルギーとなる砂糖の液体、カラメルが枯渇してしまい体を維持する力が弱まったようだ。
    普通のカラメルと違い、べっこう飴のような金色。
    他種族の血とは違い、水飴のような粘り気がある。

    しばらくその余韻に浸っていると、今度は腹部に痛みが走る。
    足、腕、首。
    徐々に鋭い痛みは勢力を拡大する。
    痛みに顔をしかめながらもその場から立ち上がり、誰もいない場所を探し廻った。
    偶然かそこはキャンディ王国の近くだったらしく、人目を縫って侵入。
    キャンディ王国に生えていた木の葉を毟り砂糖を摂取することが出来た。

    心底哀れに思えたよ。
    不死身なはずなのに、死にかけに近い無様な姿を晒して、苦痛に喘ぎながら体を維持しようと愚かな行動をする自分が。

    ───無事砂糖を体内に入れたことで右頬の傷跡だけは残るも、その他の傷は治り流血は止まった。
    体のダルさも少し軽減された。
    ただ変色してしまった箇所は治ることは無かった。

    その後は王国を彩っていたお菓子を少し拝借してその場を離れた。
    不思議と罪悪感は湧かなかった。
    だって生きるためだから。
    こうしなきゃ、またあの苦痛に悶えなきゃいけない。
    ・・・これが二度目の独りぼっちになったボクに立ち塞がった困難だった。
    あの日の事は永遠にボクの中に刻まれてる。
    今も尚残る右頬の傷跡のように。

    次に困った事は、独りで生きるための術だった。
    どうせ拝借したお菓子の欠片も、時間が経てば無くなってしまう。
    対策案を講じなければいけない。
    ───しばらく考え込みとある事を思いついた。
    生きるためには食料が必要、しかしそこら辺に落ちているわけがない。
    でも、あそこなら食料ならあるじゃないか。
    そう、店である。
    あそこなら対価を払えば食料のみならず道具も手に入る。
    まず最初にやることは、その対価となる金を手に入れることだった。
    入手するための方法は既に検討がついていた。

    ───しばらく歩を進めたボクはとある酒場に来た。
    無数の人が歩き回り会話を楽しむそこには、近頃ウーを騒がせているならず者の指名手配書が貼られている掲示板がある。
    以前、ファーンと冒険の途中で偶然立寄ったこの酒場。
    ただあの時の自分との決別として、心機一転と言えばいいのだろうか。
    服装を一新してみた。
    体内の砂糖がまだ枯渇しているため、今のボクの肌はかなり弱くなっていた。
    今の状態の肌では、太陽の光を少し浴びただけで治りかけの傷跡がひび割れとなり悪化してしまう。
    その肌を外気や日に晒さないように服やズボンの丈を長くした。
    半身だけ隠すような形状のケープも己の内を見せたくない心理が働いたのか、体全体を覆うようなフード付きのマントとして変化した。
    顔の傷も極力見せたくは無いため、昔から愛用していた仮面を常時付けることにした。

    店内に異様な空気が満ちる。
    ・・・ボクはこの時あまり自覚してなかったが、かなり威圧的な見た目にしてしまったらしい。
    そんな目線なぞ気にせず、一枚の指名手配書を手に取る。
    賞金はそれなりの額、これなら満足のいく量のお菓子を買える。
    この時から自分の中の方針が固まった。
    賞金稼ぎとして金を稼いで、生きるための食料であるお菓子を買って生活する。
    それと同時に、”アレ”の残滓を探し出し処理する。
    かなりシンプルで安直かもしれないが、しばらくはこれでいいだろうと一旦安堵した。

    ・・・ただ一つ、かなりの欠点が今の自分にある事を知らなかった。
    それはあまりにも代謝が悪い体質になっていたという事だ。
    例えばの話、以前はドーナツ三つで一日中魔法を使いまくる事が出来たのだが、今じゃ三つで三時間持つか持たないかという程。
    正直ここまで深刻な状態になっていたとは思わず焦った。
    これでは買ったお菓子をすぐに消費してしまい、また栄養失調になって倒れることになるだろう。

    ───この体質とどう付き合っていくか。
    いつか慣れるだろうという考えと、ふとした瞬間にまたあの苦痛に襲われるのではないかという恐怖心に駆り立てられた。

    ただ、そんな不安をかき消すように、時間が経つにつれてその状況に適応することが出来た。
    今の今までずっと「どうにかその場に慣れて」生きてきた。

    別れを決めたあの日から、時々アイツの影がチラつきながらも気にせずに生きてきた。
    今の自分は独りで生きていける。
    アイツみたいに、誰かと居なきゃ何も出来ないただの置物なんかじゃない。
    強さを手に入れた。
    生きる術も手に入れた。
    まだ少しだけ不自由な生活だけれども、今の自分にはそれで充分だった。


    ───充分だった?
    果たして本当に充分だったのか?
    満足しているのか?

    ・・・なんでそう思うのさ。
    ボクはもう何者にも囚われていない。
    嘘にも、自分の非力さにも。
    今のボクにはもう”アイツ”は───

    それにしては浮かない顔してるじゃないか。
    頭から離れないんだろ?”アイツ”の姿がさ。
    だって今のお前、まるで寂しそうな───

    ───。
    「・・・あれ」
    ボクはいつの間にか寝ていたようだ。
    周りに敵の気配は無い。
    先程いたサイクロプスからはどうにか逃げきれていたようだ。
    血も既に乾いたようで肌にこびりついている。
    「独りでも・・・生きていけるさ。もう誰にも頼らないって決めたんだ。」
    改めて自分の決意を口に出す。
    意識が覚醒する直前に語りかけてきたアレ。
    自分のようだけど自分じゃないような、でも姿は・・・以前のボクの姿を象っていた。
    まるで一種の幻覚のような感覚を覚える。
    周りを静寂が包み込んでいる。
    その雰囲気に思わず感傷的になってしまい涙が溢れそうだった。

    ───本当は寂しかった。
    ファーンとの衝動的な別れをずっと後悔していた。
    現実から目を背けて自分の理想に縋っていた。
    幻覚のボクがボクに言ったあの言葉を反芻する。
    「・・・”ボク”の言う通りだな。ボクは・・・今寂しさで胸がいっぱいで・・・たまらなく、苦しいよ。」
    罪悪感に押しつぶされそうになりながらヨロヨロと立ち上がる。
    一旦ここから離れて休息を得なければいけない。
    居なくなったものの、いつまたサイクロプスが戻ってくるか分からない。
    ボロボロになったケープを引き摺りながら暗い夜道を歩く。
    周りには鬱蒼とした木々や草があるだけ。
    動物も木々も既に眠りこけている。

    ここに来た理由は賞金稼ぎの仕事ではなく、あの悪しき仇、リッチの残滓を追い求めてきたからだった。
    自分が生まれたきっかけでもあり、自分が堕ちた原因であるソレの欠片がウー大陸の各地に散らばってしまった。
    自分の過ちのせいで。
    償いとも言えるその行為をやらない訳にはいかない。
    サイクロプスに襲われる前に残滓は無事見つけ処理することが出来た。
    だが帰ろうとしたその時にサイクロプスに遭遇してしまい痛い一撃を食らってしまった。

    ───しばらく歩き続けると、「例の大木」がよく見える草原に出た。
    「・・・ここだったのか。」
    複雑な気持ちがお腹の中で蠢く。
    元相棒そのものでもあり、その元相棒と初めて出会った思い出の場所でもあり、永遠の別れを告げた嫌な場所でもある。
    あの鬱蒼とした森からまさかここに出るとは思わず足がすくむ。
    しかし他に安心して休めそうな場所もない為、仕方なく木の方へ向かうことにする。
    足取りは重い。
    疲労のせいもあるが、罪悪感とその他の感情が綯い交ぜになっている影響もあるだろう。
    一歩、また一歩と進む度に吐きそうになる。
    今日も大して食べていないので吐くものは無いけれど。

    辿々しい歩みだったが、どうにか木の前まで来た。
    見上げても先が見えない程伸びた「アイツ」の木。
    自分を見下ろすように立っているその木に、ボクは思わず顔をしかめた。
    「気は進まないけどここで休むしかなさそうだな・・・。」
    少し高いところにある枝で休もうと思ったがあまりの疲労に飛ぶことは出来ないため、木の根元にある少し大きな穴に体を滑り込ませる。
    木の中はそれなりの広さだった為、ひとまず横になり体を丸める。
    ───なんだか温かい。
    まるで包み込まれるような安心感に、眠気がボクにおやすみと囁く。
    昔ファーンに抱きつき眠っていた時のことを思い出し、ふいに寂しさが心に根を張る。

    ───ポタリ。
    何かが零れ落ちた。
    血・・・ではない、もう乾いたはずだから。
    気にせず寝ようと目を瞑る。
    ポタリ、ポタリ。
    それでも零れる液体。
    これでは上手く寝ることが出来ない為、目を開き地面に落ちた液体を見る。
    とめどなく溢れるそれは大粒の涙だった。
    ・・・ボクは泣いていた。
    我慢しようとしても止まることを知らないのか、忙しなく溢れ出る涙に抵抗出来ず、ひたすらに垂れ流すことしか出来ない。
    「は・・・はは、とまらない、はは・・・とまらないよ。・・・もう終わったことなのに、もうあの時は戻せないのに、もう手遅れなのに、ボクには君が必要だった・・・でも、もうどうしようもないのに。」
    泣き言をツラツラと吐き散らす。
    嗚咽混じりの泣き言。
    自分の胸あたりを強く掴み、声にならない声で泣いた。
    虚栄心を張って、自分は一人でも生きていけると高を括っていた。
    そんな事ないのに。
    彼のことなんて一時も忘れることはしなかった。
    むしろそれは鎖のように、触手のように、自分に執念深く巻きついている。
    同じウーに存在している訳だから、いつかまた顔を合わせることもあるだろう。
    その時にはきっと、嘘の強さを誇示して彼やその仲間に突っかかるだろう。
    そうしなきゃ顔が立たないから。
    大口叩いたあの時の自分に嘘をつくことになるから。
    「・・・ファーン。」
    思わず彼の名前を呼ぶ。
    まるで目の前に彼が居るかのように、彼だった木の壁に語り掛ける。
    ───ねぇファーン。ボクのこと恨んでる?
    あの時、別れを告げたあの時。
    君の姿は既に、ボクからは剣にしか映ってなかった。
    でも、でも見えてた、君が酷く狼狽えた様子だったのを、絶望したその顔を、ボクを引き留めようとして伸ばしたように見えた何かを。
    ボクはそんな君を見て見ぬふりしてあの場を去った。
    見てしまった。
    本当は見たくなかったのに。
    だってボクのちっぽけな心が揺らいでしまうから。

    止めようと思う心に対して言葉を湯水の如く流す口。
    自分はどうありたいか、この先どう生きるか、二度とあの関係を修復することが出来ないのなら。
    自分は・・・。

    「どうか、どうか許して欲しい。こんなどうしようもない哀れなボクを許して欲しい。寂しいし苦しいしひとりじゃ辛い。あの日から毎日、君の存在を幾度となく再確認した。君の存在でどれだけ自分が救われていたかを痛いほど知った。・・・でも、もう君とは一緒に居られない、居られないんだよ。だからもし、もしまた君と逢うその時には、ボクは・・・いや、”オレ”は。」
    少し間を置いて、心の底から振り絞った言葉を口に出す。

    ───君の人生を縛る敵でありたい。と。
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