第二話 意外にもと言うべきか、二人の同居生活は今のところそこそこうまくいっていた。互いにほとんど面識のなかった他人にもかかわらず、である。
とはいえ、広い家に部屋が複数あり、かつ大学が違うため生活サイクルがそれほどかち合わないというところが大きく功を奏しているのだろう。直冬はサークルだかゼミの実験だかで、そもそも帰宅自体が遅く、帰っても勉強ばかりしていた。義詮はというと、始まったばかりの大学生活に慣れるのに精一杯だ。履修登録したり、サークル見学に回ったり、友達を作ろうとなんとか人に話しかけたり。
そしていつしか義詮と直冬の間には、あなたの領域に入らないので、私のところにも入ってこないでください、という暗黙の了解が成立していた。
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