ヒュンケルは白や銀色の男だと思われているが、近づいてみるといろんな色が隠れている。
例えばここ。肩から背中にかけて薄らと影を落としたような幾つかの細かな模様。
「そばかすだ」
ラーハルトがそう言って背後から指でなぞると、風呂上がりのヒュンケルが驚いたように首を左右から後ろに捻る。が、残念ながらそばかすの部分までは見えない角度である。
「自分で気づいてなかったのか?」
「いや、知っていたが…まだ残っているとは思わなかった。昔、子供の頃に酷い日焼けをして…」
「地底魔城で日に焼けるようなことがあったのか?」
「いや、アバンに連れられていた頃だ」
曰く、アバンと旅をしていた頃のヒュンケルは、師を仇と思い心を開くまいとしていても教わる内容はやはり面白く、結果黙々と教わった事に没頭することで会話を避けつつも師事の建前は守るという絶妙な距離の弟子として過ごしていた、らしい。
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