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    うるめ

    小説とからくがきとか

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    うるめ

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    2022年ジュいばの日おめでとう!

    漣ジュンはあきらめないお世辞にもご機嫌とは言い難い表情の茨は、口調も声もとげとげしい。
    「ここまでやるとは思いませんでしたよ、ジュン!」
    「苦肉の策ってやつですよぉ~」
    コズプロの副所長の部屋、応接セットのソファに座った茨の両側は凪砂と日和にがっちり固められていた。
    さすがに茨と言えどこの布陣は抜け出せないはずだ。
    「閣下と殿下まで巻き込むなんて」
    「あんたが話しかけたオレを気絶させるから!さすがにやりすぎです」
    あまりに逃げられるから2winkの双子の力を借りてなんとか捕まえたのに「茨、」と呼びかけただけであれはない。
    いきなり首筋を手刀で一発、マンガじゃあるまいしあれで気絶させられるとは思わなかった。
    茨はジュンが自覚したと同時くらいに何かを察したのか、徹底的にジュンとふたりきりになるのを避けた。
    避けられないときは仕事の話と日和の話で煙に巻き、戦略的撤退と言って逃げることも、逆に攻撃に出ることも辞さない。
    正直、ここまで徹底されると特殊能力のないジュンには手も足も出ない。
    かといって、何もせずに諦めるのも論外だった。
    どうせこの人たちにはバレるし、既にバレてそうな気もする。腹を括って日和と凪砂を頼ればあっさり茨は捕獲された。
    「自分は忙しいんですが!」
    この状態でもまだ逃げる手段を模索してる茨の不屈さには拍手したいくらいだ。
    「え~、先輩たちの労力と厚意を無駄にするんですか?不敬じゃないっすか?」
    更に先輩たちを盾に取ると悔しそうに黙る。
    「本当に情けないけど手段を選ばないのは褒めてあげるね!」
    「……頼ってもらえて嬉しいな」
    ここまでお膳立てしてもらって、こっちを殺しそうな凶悪な顔で睨みつける相手に告げる言葉はひとつなのだ。
    「茨、もう聴こえないとか言い訳はさせませんよぉ~」
    それでもふい、と顔を逸らしたけれど向いた先の凪砂に「……ふふ、可愛い」と言われて嫌々こっちを見た。
    「オレは、茨のことが好きで「いいえ!」す」
    告白の途中にノーをぶっ込んできた茨にため息を吐く。
    「そこは否定できねぇでしょうが……オレの気持ちなんだから」
    「勘違い、気のせい、妄想のどれかです」
    「好きですよ、何故かって聞かれたら困りますけど。好きなのは間違いないんで、諦めて認めてくださいねぇ~」
    「わかりました、それは認めます。ただ、自分はお断りですので話はこれで終わりですよね?
    「なぜですか?」
    「は?ジュンが告白して自分が断った、これで完結しましたよね」
    「してないですよぉ~、だって茨、オレのこと好きですよね?」
    そこからの茨は見物だった。両側の二人を振り切って立ち上がり、仁王立ちでマシンガンのように口が動く。
    「何を根拠にそんなことを!うぬぼれるのもいい加減にしてくださいねジュン!そもそも勘違いとは言え趣味が悪いんです!うぬぼれるなとは言いましたがもうちょっと自分がEdenの漣ジュンだと自覚すべきなんですよあなたは、俺が作ったこのEdenの一員なんですよ、いつまで非特待生気分でいるんですか!閣下や殿下ほど人間離れしてはいないけれどルックスも良く歌もダンスも演技もできて、性格もバカみたいに善人で特に文句のつけようもない人間なんです。まあちょっと勉強はアレですが!」
    「……全部誉め言葉なのは私の気のせいかな?」
    「べた褒めだね!」
    ジュンは突然浴びた茨からの誉め言葉に反応しきれない。
    「えっと、茨?」
    「だから、腹立たしいことに趣味が悪いことと見る目がないこと以外欠点がないんです!誰からも好かれるし、誰でも選び放題じゃないですか、それなのに性悪に捕まって不幸になる未来しか見えません。絶対騙されて変なツボとか富士山の絵とか買わされて保証人のハンコついて破滅します!自分はそれが嫌なんです!」
    「嫌な予言しないでくださいよぉ~」
    「そんなに心配なら茨がジュンくんのそばにいればいいね」
    「……うん、お似合い」
    「は?聞いてましたか、お二方?」
    ほとんど息継ぎのない大演説を終えた茨は興奮して少し上気した顔で周りを睨みつけた。
    「やっぱり茨、オレのことめちゃくちゃよく見てますよねぇ~」
    「プロデューサーとして当然のことで」
    「誰からも好かれるんですよね、じゃあ茨もオレのこと嫌いじゃないですよね」
    さっきの演説は茨らしくないことに途中からしっちゃかめっちゃかになっていたけれど、全部ジュンのための言葉だった。
    ジュンの気持ちが迷惑とか気持ち悪いとか好きじゃないとか、いくらでも言いようがあるのに。
    「茨は、嘘つきだけど嘘が下手っすねぇ~」
    「調子に乗んなよ」
    多分両側に先輩たちがいなかったら蹴りの一発くらいは決めていたくらいの顔だ。
    「オレは好きだって言ったんですよ、答えは好きか嫌いかでしょう?」
    息をのんだ茨は、意を決したように「き……」と言いかけて凪砂に止められた。
    「……嘘は駄目」

    「……嫌いじゃない……くそっ」

    世にも素直じゃない答えに凪砂と日和は苦笑し、ジュンは心底嬉しそうに笑った。
    嘘くさい笑顔で「大好きですよ、心の友!」なんて言っていたころと雲泥の差だ。
    苦虫をかみつぶした顔で、心底嫌そうに言った「嫌いじゃない」が今の茨の最上級の好意だと、ここにいる全員分かっている。

    「茨、大好きですよ」

    もう逃げないだろうと先輩二人が出て行った部屋で、ジュンは何度も繰り返す。
    茨が真っ赤になって「もういい、分かりました、ジュンは俺が好き、分かりました!」とギブアップするまでそれは続いた。

    10月18日はジュン茨の日










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