ジジイ・オブ・カーライフルシファーのやることなす事は全て唐突で脈絡がない。アダムは彼のそんなところが気に入っていて、退屈しない男だと思っている。今日もマンションに帰ってくるや否や、革のソファに転がるアダムにのしかかりながら、さも当然のようにこう言った。
「車を買い換えたんだ」
「待て、言うな。私が当てる」
ルシファーが持つ電子キーのエンブレムを見ないよう、アダムは自らの目を両掌で覆う。以前乗っていたアウディも、そう古くはない型だったと思うが。物持ちが良いように見えて、実は新しい物好きなのかもしれなかった。よくよく考えれば、スマートフォンだって、いつも最新機種を持っている。
「ベンツだ」
「違う」
「ワーゲン…だったらポロとか」
「違う」
1861