聖戦これは聖戦である。
掲げられた剣は幾千本の束となり、雲を払い天を突いた。父に祈りの舞踏を捧げるのは、天使長ミカエル様だ。六枚の羽根を荘厳に広げ、振るう刃が冷たい風切り音を立てる。その場にいる誰もが、美しさに息を呑んだ。対になる片割れと瓜二つの顔。ガラス玉のような瞳で彼方を睨みつける。柳眉を逆立て、矛先は反乱軍の長へと向けられていた。
「まさか、アイツが叛逆を起こすなんてね。」
「…彼の者は、傲慢なのです。お父様を出し抜こうなど、驕りが過ぎる。」
「そうだね。君が一番、アレをよく知っている。」
二人とも、無意識に名前を呼ぶことを避けている。情は、戦いに不要だ。胸の内に湧いてこないよう固く蓋をする。
ミカエル様と話すのはこれが初めてだった。忙しなく自分の創作物を披露してくる奴とは違い、冷静沈着で他人に流されない。常に前向きで、虎視眈々と天使長の座を狙っていたようだ。自信から来ているであろう余裕に満ちていて、話し方も、なんというかおっとりしている。
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