貴方のことを想って。2月14日
今日まではただの日にちだった。
知らないうちに過ぎ去ってバレンタインというのも自分には一生無関係だと思っていた。
だが人生なにが起こるか分からない。
風鈴に来て色んなことを知って葛藤して…人との付き合い方なんてとうの昔に諦めていたというのに。
いつの間にか桜の周りには溢れんばかりの人と温かな気持ちで囲まれていた。
そしてその中でもより一層大切でかけがえのない存在。
「仲間」よりも無縁だと思っていた恋人の楡井と肩を並べて歩いていた。
いつもはあれやそれやと色んな話をしている楡井だが今は緊張しているのかソワソワと周りを見渡している。
かく言う桜も口を尖らし赤い顔で楡井から目を逸らしていた。
事の発端は数十分前。
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