アンタだけの匂い部屋の主人にバレぬよう静かに寝室へ侵入する。鉄の足をゆっくりと床につけできる限り音を立てずベットへと近づく。歩く度に関節が擦れて響く金属音がこれほどまでに憎たらしい。
やっとの事で枕元まで移動し、しゃがみこむ。髪が相手の顔にかからないよう片手で纏めて顔を近づける、唇から漏れ出る吐息がくすぐったい。顔を見つめ、まだ夢の中に居ることを確認した。
「よぉ、起きてるか?」
試しに小声で声をかける、何も反応が返ってこない。
「狸寝入りしてんじゃねぇぞ」
しっかりカマをかけるのも忘れない。万が一この後の事がバレたらとんでもない。だがよっぽど深く眠っているのか身動ぎすらもしない。
前傾していた体を戻し、小さくため息を漏らす。
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