その色に触れたくて ピピピッ
高く響く電子音。ゆっくりと脇の下から体温計を取り出せば、そこには37.8の文字が示されていた。
「微妙…」
いつもより若干気だるい身体をリビングのソファに沈めながら、猿川は大きなため息をつく。
時期は 5月の初め。
世間はGWで賑わう最中、喧嘩をしたり、スピーカーの修理を幼なじみに押し付けたり、住人たちと言い合いをしたりと、いつもと何ら変わらない日々を過ごしていた。
それは周りの住人達も同じようで、特に代わり映えのしない毎日にゆったりと身を委ねていた頃。
今日は、幼なじみ特性の豪華な朝食を腹におさめてから、たまには街に買い物にでも行こうかと朝から外出していたのだ。
午前中は軽くぶらついて、暗くなってきた頃に適当な輩に喧嘩でもふっかけてやろうかと思っていたのだが、ふと立ち寄った電気屋で知った午後からの天気は、雨。
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