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    たこのまくら

    @gege_taco

    水父、水鬼太、水ゲタなど水左固定
    自分が読みたいものを書く字書き。だいぶ20↑↑
    書くのは前述推しカプ及び水木家とその周辺

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    たこのまくら

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    老紳士な水木さんのいる水父。
    九十過ぎのおじいちゃんになった水木さんへ、父がちょっと変わった卵をご馳走したら予想もつかない不思議なことが起きる話。
    喋るモブ妖怪がいる。
    あと直接的なスケベはないけどお下劣な単語はそのまま記載。

    倖せのたまご 行ってきますと言われれば、行ってらっしゃいと返し。
     ただいまと言われればおかえりと返す。
     愛しているよと言われれば、愛しておるよと返す日々。
     それがいつしかこちらが行ってきますとただいまを、あちらが行ってらっしゃいとおかえりを言うようになり。
     変わらないのは愛を囁く言葉だけで、あの夏の日は幾年も幾年も、遠い遠い彼方へと過ぎ去った。

    「ただいま、水木や」
    「……おう、おかえりゲゲ郎」

     かなり大きな声で言ったつもりだけれど、それでも反応が少しだけ遅れて返ってくるのはもう慣れた。
     門をくぐって縁側に佇む、あの頃より少し小さくなり、あの頃よりうんとしわくちゃになった男が、それでも変わらぬ矍鑠かくしゃくとした声で迎えてくれる。
     ゲゲ郎は縁側に座っている老人──往年の相棒であり積年の恋仲である水木へ歩み寄り、皺とシミに覆われた手を優しく取って微笑んだ。

    「問題は解決したのかい?」
    「うむ、当初はちとやっかいだったが、真相が判明したあとはストンと収まるところに収まったわい」
    「そりゃあ、よかった」

     目尻の皺を深くさせて笑う水木に、ゲゲ郎は隣りに座るやいなや矢継ぎ早に土産話を聞かせる。
     妖怪ポストの依頼が多すぎて、役所務めの傍ら依頼をこなすには手が回らぬと困り果てていた倅の手伝いで、観光資源にもなっている美しい川を荒らすというカッパを鎮めるためとある村へ代わりに赴いたこと。
     確かにそこにカッパはいたが実は川を荒らしていたのではなく、カッパには致命的な弱点でもある金気──鋭利な金属の板が川の上流域にあるカッパたちの住処でもある川底に流れ着き、何とか下流に流そうと岩や石、木の枝を持ってして川に投げ込んだ結果、川が濁り魚や水生生物が逃げ出していたこと。
     それを村の者に告げるも当初は胡散臭いと信用してもらえず疑いの目で見られたものの、話を聞いた村の若者がスマホで様々に調べた結果、悪質な動画投稿のグループが川のさらに上流に勝手に入り込み、秘密基地と称して建造物を無断で建てたり川にゴミを捨てていたことが発覚したこと。
     そのせいで利害が一致したカッパたちと村人が秘密基地の場に乗り込んで動画投稿者たちを散々に追い回し追い詰め、身元証明の書類と撮影データを人質に全ての建造物とゴミを撤去させたこと。
     そして二度とこの村に近寄ったり、事の顛末について言い触らしたり嘘をついたりしたら八つ裂きにして食ってやるとカッパたちに脅され、悪質動画投稿グループが情けない悲鳴を上げながら山を転がり降りていったこと。
     その後カッパたちと村人は改めて和解し、山奥の滝を境に互いの生活圏の境界を決め、カッパたちは生活圏の保証の代わりに上流の環境を保全し、村人も川の恵みを得る代わりにカッパたちの生活圏へは足を踏み入れずよそ者も踏み込ませぬと約定が決まったこと。

    「とはいえ、その境ではカッパが村の子どもや若者たちと、楽しげに相撲をとっているのを帰る前に見たがのう」
    「そうか…そりゃあ鬼太郎も喜んだだろうなあ」
    「うむ、話を聞かせたら珍しく素直に顔を綻ばせておったわ。…それでの、帰る前にカッパ共から礼だとて土産をもらったのじゃ」

     そう言ってゲゲ郎は、戻ってきた時に腕に抱えていた風呂敷包みを開いた。

    「なんだ、こりゃ…卵?随分と大きいなあ」
    「うむ、ただの卵ではない。これはホウの鳥の卵よ」
    「ホウの、鳥?」
    「霊鳥の一種でな。この鳥の卵を食えば美味なだけでなくたちまち気力精力が漲り生命力に溢れる、妖怪たちの間では垂涎の的の珍味なのじゃ」

     風呂敷包みの中にはダチョウの卵よりは小さく、鶏の卵よりは遥かに大きな色とりどりの卵が五つほど平籠に乗せられ入っていた。
     ゲゲ郎はそのひとつを取ってコツコツと床で叩いたのち、器用に卵を割り開いて大きく開けた口の中へ中身をポトリと落とす。

    「お、おい…そんな豪快に食って、大丈夫か?」
    「無論心配ない。……うむ、流石ホウの鳥の卵。早速身体中に力が漲り始めたぞ!」
    「それ、ドーピングじゃあないだろうなあ…」

     生のまま黄身と白身を難なく飲み込んだゲゲ郎の目が、程なく生き生きと輝き始める。
     成る程効果に間違いはないようだが、もう年だし丸呑みはゴメンだぞと宣う水木に笑いつつ、ゲゲ郎は解っておるよと卵を抱えて台所に行きホウの鳥の卵を戸棚にしまう。

    「今日の夕餉に卵かけご飯にして出してやるからのう。あまりの美味さに驚いて昇天してくれるなよ?」
    「年寄りにそのジョークはシャレにならんからやめろ」

     なぁに魂が抜けてもすぐに捕まえて戻してやるわい、と笑う伴侶に呆れるも、妖怪も憧れる珍味という言葉には流石に興味を惹かれる。
     その日の夕餉、早速丁寧に箸で溶きほぐし味付けされた卵を出された水木は……大層久しぶりに若い頃のように夢中でがっつくこととなる。

    「ゲゲ郎、おかわり!」
    「これこれ、もう早食いは喉に詰まりかねんからやめろと医者にも言われておろう!…食欲が旺盛なのは喜ばしいことじゃがのう」
    「まだそこまで耄碌してねぇよ、ほら」
    「わかったから落ち着いて食べておくれ…」

     天上の美味とはまさにこのことか。
     あまりの美味さに卵ひとつ分をあっという間に食べきってもなお足りぬと、結局水木はふたつ分のホウの鳥の卵を綺麗にたいらげた。
     最終的に『また明日用意してやるからそこまでにしておけ。食べ過ぎも毒じゃぞ!』と伴侶に窘められなければ、一晩で全てを食い尽くしかねない勢いだった。
     齢九十を超え健啖だった胃袋も年相応に大人しくなっていたが、これも生命力が溢れ出てくるというホウの鳥の卵のおかげであろうか。
     水木は頗るご機嫌であったが、話はそれだけに終わらない。

    「ゲゲ郎……」
    「み、水木待て、それはならぬ。もう身体にそういった負担をかけてはいけないと医者も…」
    「悪いがどうにも我慢ならんのだ。老い先短い老人の願い、聞いてくれよ。なあ…?」
    「〜〜〜〜ッ!!」

     最後に目合ってから実に何年ぶりか。水木が興奮に頬を赤らめ欲情に満ちた目で伴侶の身体を求めてきたのだ。
     ゲゲ郎は年甲斐もなく何を言い出すかと慌てるも、どれだけ老いさらばえようと男振りはいささかも衰えることのない愛する伴侶に迫られ、嬉しくないわけもなく。
     おまけに水木は老人とは思えぬ力で軽々とゲゲ郎を抱き、閨に連れ込むと鼻息も荒く伸し掛かってくる。
     そんな荒々しく雄々しい伴侶の手を、水木に惚れきっているゲゲ郎が振り払えるはずがない。
     その夜の水木は凄かった。そりゃあもうとんでもなく凄かった。
     力やスタミナは勿論のこと、もう今後勃起しているところなど見ること叶わぬと思っていた愛しのチンポコも往年の勢いと凶暴さを取り戻し、ゲゲ郎を散々に翻弄したのだ。
     こんな水木をまた味わうことになろうとは。ホウの鳥の卵はこうも人間に気力精力をもたらすのかと驚く暇もなく、その日ゲゲ郎は一晩中あられもない声を上げ、久方ぶりの濃厚な快楽に酔いしれ溺れることとなるのであった。

    「と…とんでもないもん貰ってしまったわい……」

     翌朝、これまた久々に床の中から起き上がれぬ事態となりぐったりと臥していたゲゲ郎だが、もはや懐かしいとすら思える交合の悦びは身体中に酷く甘い余韻を残している。
     当の水木は昨夜の大ハッスルもものともせず元気に起き出しているようで、鼻歌などが襖の向こうから聞こえていた。

    「どうやら、後遺症なども無さそうじゃな」

     妖怪御用達の食べ物や薬には、人間には時に強すぎる効果のあまり毒と化すものもある。
     昨日の時点でそこに思い至らなかったのは己の不覚だが、ホウの鳥の卵は幸いにも頗る相性が良かったらしい。
     ……それならば、もう少しこの悦びを堪能しても許されるだろうか。
     どうせ水木はあと十年もしないうちにあの世からお呼びがかかる。それならば、彼の言う通り老い先短い分しっかり悔いのないように愛し合っておかねば。
     そう、これは大切な愛の確認なのだ。決して久々の猛々しいチンポコ具合の良さにメロメロにされたからではない。
     そう言い訳するようにゲゲ郎は己の下心を伏せ、残りのホウの鳥の卵を朝餉に卵焼き夕餉にオムライスと、この日も腕によりをかけて水木に馳走した。
     勿論水木も欠片も残さず胃袋に収め、結果当然の如く夜更けには、閨にて睦み合うことになるのである。

    「何年経ってもお前は綺麗だよ、ゲゲ郎」
    「おぬしも、何年経っても男振りが衰えるどころかますます増してゆく」
    「ふ、世辞でも嬉しいよ」
    「世辞などではないわい。ほれ、この顔の傷にも肩の傷にも負けぬ男前じゃ」
    「そうは言っても、もうすっかりシワシワの爺さんになっちまったからなあ」
    「何をいう、むしろ渋さを増して良いくらいよ。それにこの辺りなどまだまだ若いではないか」
    「ちょ、擽ってぇ」
    「ついぞ出ることのなかった腹、肩から腕の逞しい肉、惚れ惚れするほど男前のご面相。それに黒々とした濡鴉の髪はみな昔と変わらぬ若々しさで……ん?」

     黒?

    「……んなぁっ!?」
    「どっ、どうしたゲゲ郎!?」
    「どうかしておるのはおぬしじゃあー!!そっ、その姿は…!!」
    「姿ァ?さっきからお前は何を……えっ」

     ええええ───────!?

     ***

    『ええええ───────!?食べちゃったんですか?ホウの鳥の卵を日を置かず四つも?人間が!?』
    「や……やはり、まずかったものなのか…?」

     翌日、件の村へ再び足を運んだゲゲ郎から一部始終を聞き、カッパは素っ頓狂な悲鳴を上げて目を剥いていた。

    『まずその人間はどうなりました?死んじゃったんですか!?』
    「い、いやそれは大丈夫じゃ。むしろ元気になりすぎて……」
    『もしや…回春したと?』
    「う……うむ……」
    『ああ!それなら良うございました。卵の薬効が見事にその者に合って、正しく効果が出たようですな』
    「正しい効果…?」
    『そうです!』
    「水木の奴はこの二日で、卵を四つ食うてしまった。その場合どのような異常が起きると思われる?」
    『異常などとんでもない、むしろこれは大変に喜ばしいことですよ親父殿!ああ、人の身でその僥倖を預かれるとはその人間は何という果報者でありましょう…!』
    「よ、喜ばしいとは」
    『大抵の人間は、ホウの鳥の卵を一度に摂取しすぎるとその強すぎる薬効により死んでしまいかねない……しかし、稀にその薬効が害とならず身体に馴染む者もいるのです。そのような者がホウの鳥の卵を摂取すると…』


    「ただいま……」
    「おう、おかえり」

     帰ってきた伴侶を迎える、若々しく張りのある男の声。
     以前にホウの鳥の卵を携えて戻ってきたときと同じく、縁側で佇み微笑む愛しい男。
     そこにはもう、明日にも儚くなるかもしれないような老いた姿は微塵も見当たらない。
     真っ白だった髪は黒々と艷やかに、シミと皺だらけだった肌には瑞々しさと張りツヤが、萎みかけて小さくなっていた身体は逞しい肉体と真っ直ぐな背筋が戻り、まさにあの頃の、数十年前に出会った頃そのままの水木がそこにいた。

    「どうだった」
    「……僥倖らしいぞ、彼らとしてはな」
    「ん、まあ座ってゆっくり聞かせてくれや」
    「うむ……」

     ゲゲ郎はあの時と同じく水木の隣りに座り、しかしあの時とは違い勢いなく静かな口調でポツリポツリと話し始めた。
     カッパ曰く、我々妖怪には確かに素晴らしい生命力の源であるホウの鳥の卵だが、人間には薬効が強すぎて一度に一つ以上食べてしまうとその副作用で時に……死に至る場合もあること。
     しかし、稀にその強い作用に馴染む事のできる人間もおり、そういった者が一定以上の量を食せば、驚くべき効果が表れるということ。

     一つ食べれば即座に体内の不調を取り除き気力が湧き出し。
     二つ食べればその気力が溢れ返り精力が漲りどんなに枯れた老人でも煮え滾るような情欲が蘇る。
     三つ食べれば肉体が変容を開始し若返りが始まる。
     そして、四つ食べれば。

    「その身は人の身を脱して不老不死と化し、幽霊族にも等しい強き肉体と生命力を持つ、言わば仙人と成る。そう言っておった……」
    「仙人、と来たかァ…」
    「……すまぬ」
    「ん?」
    「わしのせいじゃ。わしが、中途半端な知識のままで安易におぬしへホウの鳥の卵を食わせてしもうたからじゃ。そのせいでおぬしを……水木を人で、なくしてしまった……」
    「ゲゲ郎」

     ぼたぼたと、堪えきれぬ涙が大きな目からいくつも滴り落ちる。

    「わしが……また、あの頃のように水木に触れてもらえるならと、欲を出した、せいで……」
    「ゲゲ郎、解った。解ったから」

     だからもう泣くな、と腕を伸ばしてゲゲ郎の頭を捉え、そっと屈ませて懐に抱き込んだ。
     ああ、この太い腕の温かな感触も、あの頃のそれだ。
     自分のせいで酷い目に遭わせてしまっているのに、それが嬉しくて仕方がないだなんて何たる身勝手な話か。

    「ひっぐ……すまぬ……」
    「こら、もう謝るのはナシだ」
    「じゃって…」
    「あのな、ゲゲ郎。俺は……ああ、なんて言やいいのか。とにかく俺は、お前を恨んだり憎んだりはこれっぽっちもしちゃいない。それだけは信じてくれ、頼む」
    「し、しかし……おぬしの人生を台無しにしてしもうた…」
    「台無しかどうか決めるのは俺だ。少なくとも今はそれを判ずるには早すぎる。俺はまだ、今の俺の事を何も知っちゃいないんだ」
    「水木……」
    「俺としては若返った以上の変化は特に感じないんだがね。まあ、今後色々判明してくるんだろうが……そうなった時に、お前が側にいてくれるほど心強いものはないんだぜ?」
    「じゃが……」
    「それにな。俺がお前を置いてひとり黄泉路を逝くことも、お前がひとり遺されて孤独に長らえることもないって思うとな……正直嬉しくて堪らんのだ。この先ずっとお前と歩みを同じくすることが出来るなんて、なあ」
    「バカモノ…なんでおぬしはそう楽観的なんじゃあ…!」
    「運命が既に決まっちまったなら、グダグダ悩む方が無益ってもんだぞ。……だからな、ゲゲ郎」

     どうしても責任を感じるってなら、しっかり責任持ってこれからも俺の人生を丸ごと引き受けてくれよ、永遠に。

     そう言って再び笑う水木に、ゲゲ郎の涙は余計に込み上げ溢れ流れるばかりだ。

    「取り敢えず戸籍とか住民票とか年金とか、この先の生計をどうするか考えんとな。恩給もいつまでも貰えん」
    「倅に聞いてみよう。人間の役所務めをするあの子ならどうにかする手段も知っているやもしれぬ」
    「その前にガッツリ叱られそうだけどなぁ……迂闊なことするなって」
    「叱られるだけで済むなら安いものよ。……水木、もはやわしも覚悟を決めよう。逃れられぬ運命ならば、今度こそわしがおぬしの全てを守ってみせる。どのような災いからも」
    「は、守られるだけなんざゴメンだね。……不可抗力とはいえ、お前の隣に立てるだけの力と天命を得ることが出来たんだ。お前の背中を俺以外に預けさせてなるものかよ」
    「戯けたことを申すな。もうずっと、わしも倅もおぬしには守られておるのじゃ。あの村で出会い共に闘った時から、ずっと」
    「そんなもの、俺だって同じさ」
    「……生きてくれるか、この世の終わりが来てもなお続くかもしれぬ那由多の時を、共に」
    「ああ。悲しみもしあわせも、生きる全てをお前と共に」

     ようやくゲゲ郎の腕も水木の背に回り、ひしと抱き合う二人の周囲を祝福するように、柔らかな薫風が吹き抜けていった。

     翌日。
     案の定、事態を知った倅から大いに二人揃って叱られたものの、その鬼太郎に
    「もう面倒くさいんで水木さんの戸籍いじった後にお二人の婚姻届もこっちで勝手にあの世の役所に出しときますから。閻魔大王にハンコ押してもらえればそれで婚姻成立ですので」
     と宣われ、いい日取りを決めてプロポーズするつもりだったのにと嘆く水木とわし昨日のあれがプロポーズのつもりだったんじゃが!?とざわめくゲゲ郎が市役所の窓口で騒ぎ、重ねて息子に叱られていたそうな。

     めでたしめでたし?
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