【ハイネの過去妄想】発明家が旅人に会うまでの物語ある日ハイネはシャトラの酒場でひどく酔い潰れては、カウンターに突っ伏していた。
ハイネのよきライバルであり、同じ発明仲間のフィアソラが、自分の作った潜水艦に乗って海底に行ったきり、もう何日も戻ってこないからだ。
あの時海底に行くと言い出したフィアソラを引き止めるべきだったかもしれないと悲しげにつぶやくハイネに、酒場のマスターはハイネの気持ちに共感したうえで、新しい道を切り拓くためには時に勇気を出して飛び込むことも必要だと諭した。
何事も手につかず、自堕落な日々を過ごしていると、ハイネはフィアソラと共同で作った発明品を偶然目にした。発明品を見てはフィアソラと過ごした日々のことを思い出して目を細めるハイネ。このまま悲しみに暮れていたら、いつかフィアソラが帰ってきたときにやつれた自分の顔を見て笑われてしまうだろう。そう思ったハイネは一歩ずつ前に進みながらフィアソラの帰りを待つことにした。
発明家としての視野を広げるため、以前フィアソラに言われた言葉を思い出したハイネは、たくさんの恋愛指南本を読んでは女性に声をかけた。最初はなかなかうまくいかなかったものの、その時の失敗を冷静に分析することにより、少しずつ話上手になっていく。発明が好きなハイネは特定の女性に恋愛感情を抱くことはなかった(フィアソラとの間にあるのも信頼関係)ものの、人と関わることによって柔軟なアイデアを閃くようになった。
それと同時に、悲しみに暮れる時間を少しでも減らすために、発明に没頭しては多くの作品を作り上げた。
ハイネが毎日のようアトリエにこもっていると、大雨の日の晩、ハイネのアトリエを訪ねてきた、目つきの鋭い黒衣の傭兵――ブラッカに、銃を作ってほしいと依頼された。ブラッカからの細かい注文にハイネは何度も壁にぶつかりながら、やがて彼が満足する品を作り上げることができた。ブラッカからの依頼をこなし、ハイネは発明家として大きく成長していく。
だが、数ヶ月経ってもフィアソラは帰ってこない。遠くにいるならまだしも、海底じゃ気軽に迎えにいけないな。酒場のマスターの何気ない言葉に、ハイネはそれなら潜水艦を作って迎えにいけばいいと光を見いだす。
それは決して楽な道のりではなかったが、フィアソラが残した資料や今までの経験を総動員してハイネは潜水艦を作り上げた。思い描いていたものはなんとか形にはなったものの、フィアソラがいるであろう海底に行くにはまだまだ改良が必要だ。
久しぶりに外に出ると、まぶしい朝日がハイネを照らした。たまには息抜きに、うんと足を伸ばしてレーテの村に行ってみようか。
ふらりとレーテに立ち寄ったハイネは、そこで後に己の運命を大きく変えるアインと出会ったのだった…。