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    masasi9991

    @masasi9991

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    masasi9991

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    おやすみし忘れた日の道タケ漣

    ##道タケ漣

    今夜のわすれもの
     二人分の寝息が響く部屋の中、こちらもあっという間に意識を手放してしまいそうだ。今日はかなりのハードスケジュールだったからな。自分も早いとこ布団に入らなければ。
     そう思いながらも家のことや明日の仕事の準備を細々とやっていると、思いの外時間が過ぎてしまった。やっとのことで布団へ潜り込もうと、足音を殺して寝室へ向かう。……といっても慎ましいワンルーム暮らしだから、あるのは昼間は居間で、夜は寝室の一部屋しかないんだが。
     さて、自分の布団は真ん中だ。だがそこに潜り込むには、二人の間は少し狭い。邪魔をしないように隅に陣取るか、それとも二人には少し起きてもらって……。と考えつつ二人の寝顔を眺めていると、忘れ物を思い出した。
     電気も消して暗い部屋にも目が慣れてきた。タケルと漣、二人の顔を覗き込んでそれぞれの額を順にくすぐった。いつも、寝る前はそこにすることが多いから。
     寝息がほんの少し乱れて、二人が寝返りを打った。自分が身体をねじ込むには足りるぐらいの隙間ができる。やっぱり、いつもの場所で寝させてもらおうか。……なんだかムラムラしてきたし。いや、そんなやましい意味じゃなくて。
     自分がくすぐったせいで二人とも前髪が跳ねておでこが出てしまっている。きっと明日には派手な寝癖が付いてそうだ。その白いおでこを見ていると、やっぱり忘れ物を取り戻しておきたくなった。
     もう二人ともすっかり眠ってしまっているけど。まあ、だから、自分がしたいだけだ。
    「おやすみ」
     布団に潜り込む前に、タケルと漣の狭い隙間で身を起こして、順繰りにその額に唇を押し当てた。起こしてしまわないように、そっと。



     くすぐったくて、目が覚めちまった。つーか、それ以前に寝ちまってたのか。起きて円城寺さんを待ってるつもりだったのに。
     泊めてもらってんのに先に寝ちまうって厚かましいんじゃねーかと思って。泊めてもらうのも最近ずっと、だから油断した。……それに、早く寝ると一緒にいる時間がもったいない、気がする。なのに……。
     起きて、その分の時間を取り戻そうと思った。だが、身体に力が入らない。まだ半分寝てるらしい。俺、目は開けてる気がするんだけど。
    「タケル?」
     円城寺さんが俺の顔を覗き込んだ。……うん、見えてる。夢じゃねーのなら。
    「……寝ぼけてるのかな」
     円城寺さん、結構独り言が多い。飯作ってるときとか、俺とかアイツが別の部屋にいて、話してるわけでもねぇときでも、一人で料理相手に話しかけたりしてる。
     今の、ちょっとそういう調子の言い方だった。
    「起こしちゃってごめんな。おやすみ」
     ぼんやり見える円城寺さんの顔は、いつもの柔らかい笑い方をしてた。独り言の声もどこかぼんやりと輪郭が定まらない。俺、やっぱ寝てんのか。いや、半分起きてるのか。
     円城寺さんの顔が近付いてくる。キスしてくれんのか、と思って目を閉じる。……身体、動いた。そうしてじっと待ってると、額に熱くて柔らかい円城寺さんの唇が押し当てられた。
     もっと……。
     思ってるうちに、また意識飛んじまってて、どこも動かなくなる。円城寺さんの熱いのが頭からじんわり染み込んでくる……ような気がする……それは、最高だった。
     けどすぐまた目が覚めたときには、もうキスは終わっちまってる。それはいいけど、しょうがねーけど、口じゃなかったのかって意識失う前に肩透かし食らってたのを思い出した。
     円城寺さんの丸まった背中が見える。俺はまた目、開けてる。寝てたの、多分一瞬だ。あっちがわにアイツが寝てる。円城寺さん、多分、背中丸めてアイツの顔を覗き込んでる。で、俺にしたのと同じように額にキスをして……アイツ、起きねえかな。くすぐってーって、あのうるさい声で騒いでくれねぇか。そしたら俺の眠気も吹っ飛びそうだ。
     起きたい。眠気に負けてる。この時間がもったいねえ。もっとやりてぇこととか、話したいこととかあったんだけど。
     今日の仕事は大変だったなって円城寺さんが言って、俺とアイツを先に布団に押し込めて、……円城寺さんも布団入るまで待ってるつもりだったのに、アイツがどうでもいいことで喧嘩売ってきて、どうでもいい話して……なんだっけ、そんでいつの間にか寝ちまってたのか。
     起きてぇけど、アイツも起きる気配がない。静かだ。アイツもきっとあれで疲れてんだろう。それとも油断してんのかもな。円城寺さんに一方的にキスされて、呑気に寝てる。
     キス……やっぱアイツも、同じとこにされてるっぽいな。額の、アイツの銀色の柔らかい前髪かき分けて……。せっかく円城寺さんのアパートに泊めてもらってんのに、そんだけ。
     やっぱ、起きてぇ。ムラムラしてきた。でも、身体が起き上がらねぇ。頭ん中半分が眠気で、半分が煩悩。頭半分煩悩ってそこそこっつーか、かなりやべーかも。せめて口、さっき期待しちまった分、口でできねーか。
     ところが身体の方は全然だ。
     円城寺さんがゆっくり背中を起こしたかと思うと、そのまま静かに布団に潜り込んだ。アイツと俺の間。アイツの寝息が聞こえる。円城寺さんは、まだ起きてる。
     アイツの顔覗き込んでこっちに背中向けてたときよりも近くなった。こんぐらいの距離なら、手を伸ばすだけでいい。
     それでやっと身体が動いた。動いたはいいけど、円城寺さんの腕掴んで、頭近づけて、それだけ。で、どうすんだっけ。わからなくて頭を円城寺さんの二の腕に押し当てた。
    「ん?」
     円城寺さんの声。多分俺の方に首を傾けて顔を覗き込もうとしてる。見えない。目は開いてるんだけど、俺の視界は今は円城寺さんの腕でいっぱいだ。
    「タケル、……ははっ、そうか」
     耳をくすぐるような柔らかい小声で、円城寺さんが笑った。何がそうなのかよくわかんねーけど……やっぱ、そうかも。寝ぼけてる。それとも夢かもしれない。俺が今円城寺さんの腕にしがみついてるのって。その腕に額とかほっぺたとか顔擦り付けんのは、夢かも。俺にしてはガキっぽすぎる。円城寺さんの腕、すげー気持ちいい。




     飛び起きた。なんで寝てんだ。真っ暗だ。
     さっきまでらーめん屋が部屋の外でゴチャゴチャやってて、廊下の電気が眩しくてすげームカついてたのを思い出した。
     もう、消えている。てことはらーめん屋も寝てる。いつもの場所に、いるはずだ。
     暗闇の中を手探りで探す――必要もない。なんつったってらーめん屋は熱い。熱の塊みてェなモンだ。だからどこにいるかなんてすぐわかるし、もう知ってる。布団の中が熱い。だから、隣りにいる。
     もう目も慣れた。オレ様の真横でマヌケな寝顔晒してんのが、わかる。めくれた毛布を探して腕がゆっくり動いた。オレ様が起きたせいでめくれた毛布の裾を眠ったまま探しているらしい。
     毛布を探すらーめん屋の腕がオレ様の腹や腰に当たったが、返してやる義理なんかねーからめくれたのはそのまんまだ。らーめん屋はすぐ諦めたらしく動かなくなった。
     オレ様の毛布だっつーの。……もしかしたらコレ、らーめん屋の毛布かもしんねーが。らーめん屋がオレ様の方にくっついて寝てんのが悪い。勝手に寝んの遅くなったくせに。いつの間に寝てんだ。
     らーめん屋は、いつもオレ様とチビには早く寝ろってうるせーのに、自分だけ夜ふかししやがって。チビなんかずっと待ってたっつーのにな! チビは雑魚だからオレ様より先に寝ちまってたけど。多分。だから、チビはらーめん屋が寝たのに気付いてねーはず。オレ様はらーめん屋の寝顔を見た。一つ勝ち。
     それはまァ、悪くはねぇ。けどやっぱムカついた。気の抜けた、緩みきった顔で寝やがって。何のために待っててやってたと思ってんだ。
     らーめん屋がいつもそう、するから、オレ様は今日も……だと、思って……クソっ。ムカつく。少しだけだ。だってそれする意味わかんねーし。オレ様がしてぇわけじゃ、ない。
     いくら睨んでてもらーめん屋は起きない。油断してやがる。ヘナチョコだ。……何やっても、起きねーんだろうか。
     仕返し、してやろうか。いつもの逆だ。
     らーめん屋はいつも寝る前に、それをする。前髪をかき分けて、その手つきだけでもくすぐったくてうっとうしい。ニヤけた顔近づけてくる。
    『おやすみ、漣』
     っつうのを、わざわざ小声で言う。
     らーめん屋は体温たけーから、触られたとこもこれから触られるとこも熱くなる。全部らーめん屋のせいだ。
     オレ様は眠いのに、らーめん屋がそうするせいで眠れなくなるときもある。そうなってんのも、そうなってんのをらーめん屋に知られるのもムカつくから、寝たフリをするけど。そうして目ェつむってると、そのまま寝ることもある。そういうときが多い。でも寝れないときもある。今みたいに、目が覚める。
     今日はされてねーのに。されると思ったのにされねーのも、寝れない。どうやらそうらしい。らーめん屋のせいだ。
     いや、……されてねーのか? オレ様が寝てる間に今日もらーめん屋はやってた、ってことは……わっかんねー。いつもされるところを、自分で触ったところで……らーめん屋がするのとは全然ちげぇし、ただあのくすぐったいのを思い出しただけで、わかるわけねぇ。
     頭がこんがらがってきた。仕返ししてやろうと思ったんだった。でもらーめん屋からされねーからには、寝れない。オレ様かららーめん屋にするんじゃちげぇから……。
     あああンなわけあるか! されないと寝れないとかなんなんだよ! オレ様がらーめん屋にするとかしてもらうとかも、イミフメイだ!
     いつもの夜にらーめん屋がしてくる、おやすみの、キスとかいうの。
     らーめん屋が忘れてンのが悪い! だからお返し、じゃねぇ……仕返し、してやろうっつーのが……。らーめん屋、起きねぇから。ずっとこうして睨んでんのに、起きねぇ。
     オレ様がしても、どーせ起きない。だから、だ。
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