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    masasi9991

    @masasi9991

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    masasi9991

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    本編前のレクセル

    ##RMX
    ##レクセル

    何処へ


    「なんだ、戻ってたのか」
    「なんだって何?」
    「いや、別に意味なんかねぇよ」
     特に深い意味なんかないって感じで、レッドは軽く首を振った。
    「帰りが遅いとか心配してたんじゃないの」
    「そんなガキでもないだろう?」
    「フフン、まあね。ねー、今日もう疲れたからここで寝ていい?」
    「その泥だらけのままベッドに上がり込むんじゃなけりゃな。身体洗ってこい」
    「だってシャワー空いてなかったんだよ。レッドの部屋の借りるね。……にひ」
    「今の変な笑い方はなんだ?」
    「なんかさー、さっきのレッドのセリフ、変態みたいじゃなかった? シャワー浴びてこい、みたいなの」
    「馬鹿か」
    「にひひひ。帰り遅くなっちゃった分さ、サービスしてあげるから期待しときなよ」
     シャワールームに向かいながら大声でそう言うと、レッドはろくに返事もしないかわりにわざとらしくため息をついて、肩をすくめてみせた。

     レッドの部屋に併設してあるそれは、居住区にある共用のシャワールームよりは設備が多少マシだ。ちゃんと設定した温度通りのお湯が出る。急に妙な色や匂いのヘドロが交じることもない。もちろん突然水が止まることもない。
     逆に言えばこの街の一般レプリにとってそれは珍しいことだ。共用のシャワールームだとお湯の温度は不安定だから突然熱湯を浴びせられてフレームが軋んじゃうこともあるし、たまに貯水槽に身投げしたヤツなんかがいると、誰かが発見するまでそいつの腐敗と錆びのダシを浴び続けることになる。そもそも乾季になると水が足りなくなって長い間シャワーどころじゃなくなるなんてこともザラだ。
     それでも居住区にあるシャワールームは、未だ汚染の残る地上で活動を強いられているボクらレプリにとっては人気のスポットである。理由は、理屈ではわからない。多分汚いよりきれいな方がいい。暗黒街なんて呼ばれる掃き溜めに住んでても、けっこう沢山のレプリがそう思っているらしい。
     この街みたいなスラムじゃなければ、一般のレプリでももう少しいい生活が送れるみたいだけど。それにはあんまり興味がわかない。
    「今日さ、西九六〇地区に行ってみたんだ」
    「お前一人で行ったのか。いつかの話を盗み聞きしてやがったな」
     シャワールームの壁のスピーカーからレッドの声が聞こえる。緊急時のために部屋の中と外で会話できるように作ってあるのだ。でもそんなに厚くもない壁越しに、かすかに元の声も聞こえてる。スピーカーで再生される不完全な音と壁越しの本当の声がほんの少しのタイムラグで干渉し合って、さざなみのような波形を描いてボクの耳に聞こえてくる。これがちょっとおもしろい。
    「次のターゲットのメイヤー、あそこをねぐらにしてるんだって? 敵情視察だよ」
    「ねぐら……なんて言い方をするような街じゃなかっただろ?」
    「うん。まあ、成金趣味って感じかな」
    「フッ。確かにな」
     少なくともまともなシャワールームがありそうな街ではあった。でもそんだけだ。
    「それでもここよりはマシな街だ。あそこだけじゃない、世界にはここよりマシな場所はいくらでもある。なのにお前は、よくこんなところに居付こうと思ったな」
    「んー……」
     シャワーの温度は三十度くらい。このくらいだと素体の髪や皮膚に影響が少ない。でも今日の気温だと少し寒くなってきた。メモリを動かして少しずつ温度を上げる。シャワーからほんのり湯気が出始めて、狭いシャワールームが薄っすらと白くなる。
     こうなると自分の声もレッドの声も、水蒸気に紛れてちょっとくぐもったようになる。
    「やっぱりボクの帰りが遅くて心配した?」
    「そうかもな」
    「ボクがいなくなったら困っちゃうもんね。なにしろレッドアラートで一番強いのはボクなんだし」
    「随分デカく出るじゃないか」
    「それにみんな危なっかしいし、特にレッド! ボクがちゃんと面倒見てあげてないとダメだと思うんだよね」
    「フフッ」
     レッドが吹き出した声、部屋のマイクには拾われなくて、壁越しにだけ聞こえた。単純な機械には計測できなくても、ボクにとっては聞き慣れた声だからわかってしまうのだ。
    「だから心配しなくてもボクはレッドのそばから居なくなったりしないよ」
    「別に心配しちゃいないさ。ただ疑問に思っただけだ」
    「さっき心配したって認めたじゃん」
    「……それほど心配してはいない」
     レッド、相変わらず嘘とかすごく下手くそだ。そういうとこ。
    「心配しなくてもいいけど心配してもいいよ。ねーねー、着るものない?」
    「ない」
    「ふーん。じゃあ裸で寝るか」
    「……わかったよ、何か貸してやる」
     レッドの部屋にあるの、全部大きいからなぁ。あんまり着ても着なくても一緒な感じだけど。
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