弱点「……やっと撒いたわね。フェンリっちってばしつこすぎよ! ねえヴァルっち、なにかアイツの弱点とかないの!?」
「お前らこんなところで何をしている。仕事はどうした」
「仕事なんかやってられるわけないでしょ! 前から思ってたけど女子中学生を無理やり働かせるなんて労働法違反よ! 女子中学生は法律によって守られているはずなのよ!」
「そうデスそうデス! ついでにラスボスを不当に働かせるのもきっと法律違反デス!」
「あー……ごめんね、デスコ。多分ラスボスを守る法律はないわ」
「ガーン」
「地獄の法律に女子中学生という文字はない。なにより働かざる者食うべからず、だ」
「何よ常識ぶっちゃって。ヴァルっちってばアタシの夢の中に出てくる悪魔のくせにそんなに常識ばっか言うなんておかしいんじゃない?」
「ふむ。確かに常識的に考えてお前の夢に常識などあろうはずもないだろうな。つまりこれはお前の夢ではないということだ」
「ちょっとヴァルっち! 今遠回しにバカにしなかった?」
「そうデスよヴァルっちさん。おねえさまは夢の中も常識的じゃないなんて決めつけはよくないのデス」
「もって何よ」
「さて、そう言い争っているうちにヤツが近づいて来ているようだが」
「ゲッ。ていうかなんでわかんの!? やっぱアンタたちおかしいわよ」
「少し黙っていれば足音ぐらい聞こえるではないか」
「見つけたぞ小娘ども! よりによって閣下のお部屋に土足で入り込むとは!」
「お、怒ってる! フェンリっちさん怒ってるデス! いつもにも増して怒ってるデス!」
「ヴァルっち早くアイツの弱点教えてよ!」
「このままじゃブーツのかかとで両手両足からぐちゃぐちゃにすり潰されてしまうのデス……」
「デスコ泡吹いてないでしっかりして! フェンリっちも仲間に対してそこまではしないわよ!」
「この間すり潰されて汁という汁を垂れ流しているエリンギャーを見たデス。さっきまで同じ釜のイワシを食べていたエリンギャーがエリ汁になっていたのデス」
「ヴァルっち弱点! 早く弱点!」
「オレに弱点などない。いいからさっさと閣下の後ろから出てこい! むしろ二度と閣下に近付くな!」
「出ていったらすり潰される! こうなったら徹底抗戦よ!」
「フェンリッヒの弱点か。知っているぞ、もちろん」
「へっ? か、閣下?」
「こいつは昔から付け根が弱い。耳や尻尾、それから」
「フェンリっちさんの……」
「もふもふの尻尾?」
「……はっ! 寄るな小娘ども!」
「しまったわ、もふもふに釣られてフェンリっちの尻尾をわしづかみにするところだったじゃない!」
「オレはもふもふではない!」
「そうやって掴むのではなく付け根の部分をだな」
「閣下、そ、そのようなお戯れは……」
「ふざけないで! よくよく考えたら男の尻よ!? アタシに言い寄ってくる超絶イケメンの尻ならともかく、フェンリっちの尻なのよ!」
「で、でもデスコはもふもふがちょっと気になるのデス。ラスボスとして」
「んん、それは確かに」
「オレはもふもふがではないしラスボスは関係ないだろうが! 寄るな!」
「いいじゃない減るもんじゃないし。先っぽの方でもいいのよ」
「ふざけるな! クソ、貴様ら……!」
「逃げた! デスコ、追うわよ!」
「アイアイサー、デス!」
「いやだから先の方ではなく、根本をこのように指などで」