赤ちゃんサイズ いつもここに並んでいるはずなんだが、いくら探してもない。売り切れてしまっているのだろうか? ひとつでいいから、残っていてくれないか。一つずつ手にとって、パッケージに書いてある文字を読む。やわらかめ。しかし、〇〜三歳用。これは違う。
そうしていると、背中をつんつん、とつつかれた。
一番下の商品の棚を見るためにしゃがんで丸めたおれの背中を、つんつん、こちょこちょ。ちょっぴりくすぐったい。顔を見なくてもすぐにわかる、もちろんこれはグランツだ。
「何を探しているんだ?」
「おう、いつも使っている歯ブラシをだな」
「キミがいつも使ってる歯ブラシ? あのメーカーのやつか」
「白に青と緑の線が入っていて、大きめでやわらかい……。ないな。あれが一番いいんだ。やっぱり売り切れか」
「あったぜ」
「おっ!」
パッと顔を上げる。見上げると、おれの隣に立ったグランツの片手に買い物かご、もう一方の手には、おれが探し求めていた歯ブラシ! やわらかめ!
「よく見つかったなあ!」
「ふふっ、少なくともそこにはないみたいだったからな。キミが探してたとこ、赤ちゃん用のコーナーだぜ」
「ああっ本当だ! 気が付かなかった! また間違えて買い物をしてロックやロッタナに怒られるところだった」
「あの二人ももう赤ちゃんって年齢じゃないしな! あはははは!」
「グランツが気付いてくれないと、おれは今夜からこのちっちゃいので歯磨きをしなくてはならなかったかもしれない! ありがとうグランツ!」
「あっはっは、どういたしまして」
背中に置かれたグランツの手が、またおれの背中をこちょこちょする。そんなグランツは、なぜだか上機嫌でニコニコだ。近所のスーパーだとしても、二人でお買い物は楽しいからな。