食べたいもの正解 ほっぺがむにむにと柔らかいので思わずいつまでもこうしていたくなるのだが……。
「ふふ、くすぐったい……。な、キミも一緒に二度寝しようぜ」
なんて誘惑が、グランツのお口から聞こえてくるのでたいへん危険だ。眠たいグランツの目は片方は閉じたまま、ウィンク。
うつ伏せになって枕に半分沈んだ顔の、むにっとなっているほっぺをつついていると、おれは今にもベッドに吸い込まれてしまいそうだ。グランツはどうしてこうも誘惑がお上手なのか。
「そうはいかない。ムム……、おれはおまえを起こしておいしい朝ごはんを食べてもらうという使命があるのだ! 朝ごはんは元気のもと!」
「んー……。そういえばお腹が空いてるな」
「そうだろうそうだろう! いまにおまえのお腹はグーグー言い始めるはずだ」
「んあっはっはっは。それは恥ずかしい」
と言いつつグランツはもぞもぞとお布団の中で動いて、ブランケットの中に小さく丸まって隠れようとし始めた!
「あっ、こらこら! 今日の朝ごはんはアレだぞ、おまえがこの間食べたがっていた……」
「この間?」
ブランケットの下からちらっと顔を出す。青い目が二つ、キラッと光っておれを見上げた。よしよし、やはり朝ごはんが気になるようだな。
そう、この間グランツが食べたがっていた――というかこの間お店で食べたのだが、キラビアの海辺に出ていた屋台のアレ、非常においしかったアレだ! 家でも作って食べたいな、と話をしていたのを、今朝まさに作ってみたのだ! おれが作ったあの料理!
「今朝のごはんはおまえが食べたがっていた、このおれだ!」
あれ? おれ?
「んっ……ふ、あっはっはっはっはっは!」
「言い間違えた!」
「あっはっはっはっはっは! はははっ、朝から、なんだって? あはははは! く、苦しい……っはは!」
「朝ごはんはおれじゃないぞ! おれを食べちゃったらアレがまだ出来上がっていないからおれもおまえも朝ごはん抜きになる!」
「ふあっはっは、わかってる、ふふ、あはははははは!」
ブランケットの中で丸まってお腹を抱えているグランツ。なんということだ。笑い終わるまで、これはこれでちょっと時間がかかってしまう。